今後、親子上場の解消のTOBが一気に増える理由。「自己株買うより子会社の株買った方が良いいじゃん理論」
どうもこんにちは!
最近では、NECや豊田通商が親子上場解消に向けたTOBを発表してニュースとなっています。
DMG森精機も太陽工機のTOBを発表していますし、その他にも、大東建託も子会社のハウスコムを株式交換ではありますが、完全子会社化するといった発表もしています。
近年は親子上場の解消が増えていますが、それが今後は一気に増えていくんじゃないかと思いましたので、それについて書いていこうと思います。
親子上場とは
さて、そもそも親子上場が何かというと、その名の通りでめちゃくちゃ単純で親会社と子会社が両方上場している状態を言います。
孫やひ孫、やしゃご上場などもあります。
例えば、ソフトバンクグループ→ソフトバンク→LINEヤフー→ZOZOといった関係です。
日本市場はグローバルでも親子上場が多い市場として知られていて、特に歴史の長い大企業は親子上場をしているケースが多いです。
少し古いデータですが、経済産業省の資料によると2018年12月時点では上場企業の内、親子上場の企業の比率は以下のようです。
日本:6.1%
フランス:2.2%
ドイツ:2.1%
アメリカ:0.5%
イギリス:0.0%
現在は、ここからは多少比率は下がっているでしょうが日本は親子上場の比率が高い事が分かると思います。
なぜ日本は親子上場の比率が高いのか
ちなみに、どうして日本では親子上場が多いのかというと、当然色々な理由があるのですが、日本は大企業の入れ替えが少なく、戦後急速に経済が成長してきた事が大きく影響しています。
親子上場のメリットもいくつかありますが、その最も大きなものはやはり資金調達です。
子会社の株式を一部売却する事で、親会社は資金を得る事が出来ます。
なので、経済の急速な成長を遂げいていた時代の日本企業は、子会社の上場で資金調達をして、その資金を積極的に再投資して拡大してきたわけです。
東証自体もそういった需要を受けて、1980年代辺りでは親子上場を積極的に推進していたようで、そういった中で親子上場が増えていました。
なので、ソフトバンクやGMOなど成長企業で現在も親子上場を積極的に進めている企業もありますが、歴史の長い大企業が親子上場をしているケースは非常に多いです。
そして日本市場は大企業の入れ替えも少なく、以前から残っている企業も多いですから、そういった中で他国と比べても数多い親子上場があります。
親子上場のデメリットとは
この親子上場ですが、デメリットもあります。
複数のデメリットがありますが、最大のデメリットといわれるのが利益相反です。
親会社は子会社の経営権を持っていますから、子会社の経営を親会社のメリットが大きくなるように好きに出来てしまうという事です。
例えば、子会社から資金や優秀な人材などを引き抜いてしまうといった事も出来てしまいます。
そうなると、子会社の株を買っている少数株主が損をしてしまうという事です。
なので少数株主との間で利益相反が起きてしまう事が、特に大きなデメリットとされます。
そして、近年はこのデメリットの側面が強く取り上げられるようになってきました。
というのも、以前は経済成長の中で親会社は親子上場を通じて資金調達し積極的に投資を進め、コングロマリット化が進んだ日本の大企業ですが、近年は経済が停滞し大企業も多角化路線ではなくなりました。
ビジネス自体もIT化が進むと共に、より水平分業の時代になり選択と集中が好まれるようになりました。
さらに、IT化で投資家がポートフォリオを組みやすくなって以降はコングロマリット企業は投資が集まりにくくなっており、いわゆるコングロマリットディスカウントも受けやすくなっています。
ざっくりいうと、色々な事業をやって拡大が好まれていた時代から、ある分野に特化する企業が強さを持つ時代になり、投資家も「自分でポートフォリオ組みたいから、色々やってる企業には投資したくない!」ってなってきたわけです。
そういった中で、海外投資家を中心に親子上場の解消が要求されてきましたし、東証も上場子会社を持つ意義や、子会社の独立性確保のための取り組みなどの説明について開示を求めるようになっています。
そして、少数株主の保護のために上場子会社の独立性確保を高めれば高めるほど、時代の変化も非常に早くなる中でグループ全体のリソースが分散してしまう事や、意思決定が遅くなりやすい事などの経営上の問題も表面化しやすくなっています。
こういった時代の変化の中で、親子上場のデメリットが大きくなり親子上場の解消に動く企業が増えてきたという事です。
経済成長と企業の積極拡大の中で増えてきた親子上場ですが、拡大フェーズでなくなりデメリットが大きくなる中で、その解消が増えていくのはある種当然の流れだという事ですね。
今後親子上場の解消が増える理由
そんな中で現在も親子上場の解消は増えていますが、今後は急激に増えていくんじゃないかと個人的には考えています。
それがなぜかというと、めちゃくちゃ単純で最近の日本の歴史ある大企業の業績がめちゃくちゃいいという事です。
国内上場企業の2024年3月期決算での純利益は3年連続で過去最高益を達成しています。
それこそ、TOBでの親子上場解消を発表したNECや豊田通商も2024年3月期には過去最高益を達成していました。
つまり、日本企業は最近好調ですから資金的な余力が生まれてきているわけです。
そして、現在は資本効率の高い経営が重視されていますから、その資金をどう使うかも重要です。
成長分野で大きな投資を進めたい企業はそこに積極的に使っていくのでしょうが、使い道が十分にない企業は株主還元が求められる事が多いでしょう。
そういった中で配当はもちろんですが、それ以上の還元を行う際には自己株買いを行うケースは多いと思います。
ですが、ここで「よくよく考えたら自己株式買うより上場子会社の株買った方がよくね?」って話です。
親子上場のデメリットが目立つようになってきたわけですし、そもそも子会社で会社の実情も良く分かっていますから、投資先としては堅実です。
上場コストの削減やグループ全体のリソース最適化など、TOBによる成果も見通しが立ちやすいでしょう。
そして何より、22もあった上場子会社の組織再編を進めた日立製作所は業績も好調で株価も近年大きな上昇を見せたという実例もあります。
なので、過去最高益となる企業が多く、資金的な余力が生まれていて、日立製作所という実例もあって、その説得もしやすい現状は「自己株買うぐらいなら上場子会社TOBしちゃおうよ」となり易い時期ではないかという事です。
もちろん、上場子会社のTOBもすぐ出来るわけではありませんが、上場企業の利益が3期連続で過去最高となり、こういった交渉が本格化しやすい時期になってきたのではないかと考えています。
なので、これから数年ぐらいで一気に上場子会社のTOBが増えるのでは?と個人的には考えており、今回はそんなことを書いてみました。