9月25日IPO予定ROXX【241A】ブルーワーカー向けの採用サービスは市場の成長が期待できる話と財務面の不安点の話

さて、今回はAIのめちゃくちゃな進歩の中でブルーワーカー向けのサービスが面白いかと思ったので、9月25日にIPO予定の企業である株式会社ROXXを取り上げてみようと思います。

それでは早速事業内容から見ていきましょう。

ROXXの主力サービスはZキャリアという求人サイトです。
その特徴はノンデスクワーカー(現場労働者)向けのサービスである点にあり、その中でも未経験者や低年収層の正社員化や所得向上を目指すサービスとなっています。

そういった事もありターゲットユーザーは「正社員になりたい」「30歳以下の非大卒・非正規雇用」となっており、現在のユーザー層も年収300万円未満が73%、年齢は25歳未満が78%となっています。

Zキャリアに求人の出ている職種としても、機械・気候設計・金型設計、インフラエンジニア、施工管理・設備・環境保全、警備・施設管理関連職、販売・サービススタッフといった職種が主力です。

ノンデスクワーカーが正社員化を目指す事に利用されているサービスだと分かりますね。

求人サービスは多数あり強い競合企業も多いですが、それはやはりスキルやキャリアを持った個人の転職サービスがメインです。

なのでノンデスクワーカーの転職サービスは少なく、特にその層に特化したサービスとなるとさらに数は少ないです。

ですが現状の日本や今後においてもその需要が無いのかというとそうではありません。

そもそも日本の給与所得者においては52%以上が年収400万円以下ですし、37%が非正規雇用となっており、その層は厚いです。

以前であれば、買い手市場でそういった層の正規雇用として職探しは難しく、採用サービスのニーズは大きくありませんでした。

ですが、急激に人手不足が進む中で市場環境は大きく変わっています。

未経験者求人は2018年度~2022年度の5年で3倍以上となり、 今後も人手不足が続き2040年では1100万人の労働人口が不足する事も予想されています。
そういった中で急速にノンデスクワーカー向けの採用サービスも需要が拡大しているという事ですね。

そして、そもそもの母数が大きいのがノンデスクワーカーですからROXXとしても市場の成長性としてはホワイトカラーの4倍があるとしています。

市場の大きな成長が期待できるという事です。

さらに、今後は単価上昇のよる好影響も期待されます。
やはり現在はAIの発展が目覚ましいですから、そういった中でホワイトカラーの業務の多くが代替されていく事が予想されています。
日本では解雇は難しいですから、職を失う方がどれだけ増えるかは分かりませんが、多くのホワイトカラー労働の給与は上がりづらい状況になっていく可能性が高いでしょう。

その一方でブルーワーカーの仕事では、ロボットなど自動化の拡大は想定されるものの、技術面に加えてコスト面を考えても普及には時間がかかります。
そういった中で、しばらくはブルーワーカーの業務は人手不足の中で給与が上がっていく事が期待されます。

つまり、市場の拡大が期待できる事に加えて、単価の上昇も期待できる分野となっています。

個人的にも求人サイトで拡大が期待されるのはホワイトカラー業務よりも、ブルーカラーではないかと考えています。

一部の優秀なホワイトカラー的な業務を行う方は、こういったサイトを通じない採用がさらに増えるんじゃないかという事です。

続いて、より具体的なサービス内容を見ていきましょう。

主力のZキャリアはスカウト型の求人サイトです。
ビジネスモデルとしては、求人企業の採用時に採用事務手数料と成果報酬を得るモデルで、求人の仲介を行うパートナーの紹介会社からも利用料を受け取るモデルです。
また、成約時にはパートナー紹介会社には成果報酬の支払いも行います。

求人企業からの成果報酬と、パートナー紹介会社からのリカーリング収入があるモデルだという事です。

現在の具体的な、求人企業からの成果報酬としては平均で50万円ほどとなっており、採用事務手数料は採用成果報酬の20%となっています。
低年収層向けのサービスとなっていますから、単価は低めだという事が分かります。

そして2023年9月期のZキャリアの収入の構成は以下の通りです。
成果報酬:54%
リカーリング収入:46%

リカーリング収入の比率も高いモデルとなっています。

パートナー紹介会社を通じた採用は成果報酬に含まれていないとしていますから、現在はパートナー紹介会社を通じた採用が多いという事ですね。

とはいえROXXとしても拡大余地が大きいのは成果報酬だとしていますので、今後はさらに成果報酬の拡大が進むかが重要になっています。
成果報酬がどれだけ拡大が進むかに注目です。

また、その他にもback checkという採用時のコンプライアンス、リファレンスチェックを行えるサービスも提供しています。

さらにAI面接サービスにも力を入れています。
AI面接の活用企業では、リードタイムは-5.8日で内定率も12.0%→14.7%に上昇しているようです。

こういったサービスの拡大が進むかにも注目です。

ちなみに現状一定の事業規模を持っているのはback checkで、こちらは利用企業から月額課金を受け取るリカーリング型のモデルとなっています。

続いて2024年9月期の3Q時点での、それぞれのサービスごとの売上構成は以下の通りです。
①Zキャリアサービス:82.5%
②back checkサービス:17.5%

現状はZキャリアが8割以上を占める主力サービスとなっていますが、back checkも一定の規模があります。
Zキャリアもリカーリング型の収益が大きいですし、back checkもリカーリング型のモデルですから、意外と安定収益の大きな企業だという事ですね。
一定の安定した売上が期待出来ます。

とはいえ先ほども取り上げた通りで、やはり成果報酬が大きな拡大が期待される分野ですからその拡大が進むかが重要です。
採用数が伸びるかどうかがやはり重要だという事ですね。

事業内容が分かったところで、続いて業績の推移を見ていきましょう。

2019年9月期以降の業績を見ていくと、売上は急拡大を見せており2024年9月期も3Q時点で前期の売上を上回り拡大が続いています。
人手不足の中で大きな拡大が続いている事が分かります。

その一方で利益面は赤字が続いています。
先行投資期間でまだまだ赤字が継続しているという事ですね。

ちなみに、こういったサービスの拡大期では事業自体は稼げていても事業拡大のための多額の広告費で赤字となる事も多いです。
なので広告費を除いた利益がどの程度かというのも1つポイントとなりますが、2022~2023年9月期では7.5億円ほどの営業損失に対して、広告費は3.2億円、4.4億円となっています。

広告費を除くと一定の赤字の減少は見られるものの、広告費を除いても赤字が続いているという事が分かりますから、まだ事業で利益を出せる段階ではないという事です。

黒字化のためにはさらなる事業の拡大の必要があるという事ですね。

そして7億円以上の赤字が続く中で、財務状況を見てみると2023年9月期時点では流動資産が13.6億円に対して、流動負債は10.8億円となっており、財務面は苦しい状況でした。

直近の2024年9月期の3Q時点でも営業キャッシュフローは▲4.4億円とキャッシュアウトが続いています。

そういった中で積極的な資金調達に動いており、2024年3月期の3Q時点での財務状況を見てみると、流動資産が29.9億円に対して流動負債は17.1億円となり短期的には一定の余裕が生まれています。

増資に加えて借り入れを積極的に行った結果です。
とはいえ、例えばみずほ銀行から5億円の借り入れは2024年の12月から返済が始まりそこから1年で返済していく予定となっているように、今後は赤字が続くとさらにキャッシュアウトが増えていく状況です。

今回上場で得られる資金は6.1億円ほどでそこまで大きく無いですし、この資金は広告宣伝費やシステム開発に使用していくとしています。

財務面を考えると赤字幅の縮小や数年以内の黒字化も重要な状況だと考えられます。
2023年9月期時点では広告費を除いても赤字という状況でしたから、さらなる事業拡大によってどこまで収益化出来ているかは今後の業績を見る際に重要になりそうです。

もちろん、上場すると資金調達はしやすくなりますから、今後も積極投資を続け借り入れなどを増やしていく事も考えられます。
どういった財務戦略をとっていくのかは注目です。

という事でノンデスクワーカー向けの採用サービスは、市場が大きく拡大していますし、今後も市場の拡大が期待されます。
とはえROXXは赤字が続く中で、財務面には若干の不安がある状況です。
上場によって資金調達をしやすくなりますので、さらに借り入れなどを増やしていく可能性もありますし、早期の黒字化に向けて動いていく可能性もあります。

どういった戦略で事業を展開していくのかには注目です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?