テレビ局各社の違いを決算から解説!日テレだけ異常に稼いでいる話・財務力が各社違う話
どうも、こんにちは!
最近はフジテレビを中心にテレビ局が話題となっていますので、テレビ局を運営する各社の特徴や違いについて解説していこうと思います。
取り上げるのは以下の5社です。
①日本テレビホールディングス株式会社(以下日テレ)
②株式会社テレビ朝日ホールディングス(以下テレ朝)
③株式会社TBSホールディングス(以下TBS)
④フジ・メディア・ホールディングス(以下フジ)
⑤株式会社テレビ東京ホールディングス(以下テレ東)
視聴率
それではまずは視聴率から見ていきましょう。
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2024年3月期の全日の個人全体視聴率は以下の通りです。
(1位)日テレ:3.5%
(1位)テレ朝:3.5%
(3位)TBS:2.7%
(4位)フジ:2.3%
(5位)テレ東:1.2%
日テレとテレビ朝日がトップで、そこから少し離れてTBS、さらに離れてフジテレビとなっており、テレ東はそこからさらに離れた水準となっています。
ここ10数年は日テレがトップの時期が大半で、視聴率でははトップをひた走っています。
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とはいえ、直近の2025年3月期の2Q時点ではテレビ朝日が視聴率でトップとなりました。ゴールデン帯に関しては日テレがトップだったものの、それ以外の時間帯はテレ朝がトップとなっています。
ここ10数年間は日テレが強かったものの、直近ではテレ朝が追い上げてきて逆転したという状況なんですね。
市場からの評価
続いて、これらの企業の市場からの評価を見ていきましょう。
時価総額 / PBR(2025/1/21時点)
日テレ:7053億円 / 0.70倍
TBS:6243億円 / 0.59倍
フジ:4182億円 / 0.42倍
テレ朝:2353億円 / 0.52倍
テレ東:827億円 / 0.83倍
時価総額では、日本テレビやTBSが大きく、そこから離れてフジ、さらに離れてテレ朝、そしてテレ東は唯一1000億円以下のとなっています。
PBRに関しては、テレ東が最も高く、そこから日テレ、TBS、テレ朝と続き、フジは非常に低くなっています。
時価総額とPBR共に、比較的高い評価を受けているのは日本テレビやTBSだと分かります。
そして、テレビ視聴率が高いもののテレビ朝日は市場からの評価は低めな事が分かります。
また、全社ともPBRは1倍を割っており市場からは低評価を受けています。
これはやはり、テレビ局は法的に保護されており実質的には買収が不可能となっている事が影響しています、市場の原理が働いていない業態だという事です。
全社業績
続いて業績を見ていきましょう、2024年3月期の各社の業績は以下の通りです。
全社
売上高 / (経常利益)
日テレ:4235億円 / (495億円)
フジ:5664億円 / (391億円)
TBS:3943億円 / (277億円)
テレ朝:3079億円 / (199億円)
テレ東:1486億円 / (96億円)
最も売上が大きいのはフジテレビで、そこから日テレやTBS、テレ朝と続き、最も小さいのはテレビ東京です。
そして利益面は最も稼いでいるのが、日テレでそこからフジ、TBS、テレ朝、テレ東と続きます。
視聴率最下位ながらもフジテレビの規模は大きく、業績や市場からの評価は視聴率と連動しているわけではないという事ですね。
それがなぜかというと、その1つの大きな要因にテレビ以外の収益源が大きい事があります。
テレビ局単体の業績
なので、続いてテレビ局だけの業績を見ていってみましょう。
テレビ局単体
売上高 / (経常利益)
日テレ:2871億円 / (329億円)
テレ朝:2296億円 / (59億円)
TBS:2224億円 / (86億円)
フジ:2382億円 / (54億円)
テレ東:928億円 / (37億円)
各企業で抱えている事業内容が若干違う(テレビ局以外も含んでいる)ので単純比較はできませんが、テレビ局単体に絞ってみると圧倒的に稼いでいるのが日テレで、それに続いてTBS、テレ朝とフジは同程度で、そこから離れてテレ東となっています。
テレビ局比率
売上高 / (経常利益)
日テレ: 68% / (66%)
フジ: 42% / (14%)
TBS: 56% / (31%)
テレ朝: 75% / (30%)
テレ東: 62% / (39%)
そして全社業績に対して、テレビ局の事業の比率がどの程度あるのかというと、売上・利益ともにテレビ局が大半を占めるのが日テレです。
テレビ朝日は売上面ではテレビの比率が高いものの、利益面は規模が小さいです。
そして、TBSやフジテレビはテレビ局以外の収益源が大きい事が分かります。
特にフジテレビに関しては、利益面はほとんどテレビ以外で稼いでいる企業となっています。
だからこそ、フジテレビは視聴率は最下位いでも業績面はテレビ業界内では規模が大きかったという事ですね。
なぜ日テレだけ圧倒的に稼いでいるのか?
さて、日テレだけテレビで圧倒的に稼いでいたわけですが、これがなぜなのか、テレビの広告収入と番組制作費を見ていきましょう。
広告収入(スポット+タイム) / (番組制作費)
①日テレ:2190億円 / (893億円)
②テレ朝:1668億円 / (791億円)
③TBS:1593億円 / (774億円)
④フジ:1473億円 / (683億円)
⑤テレ東:695億円 / (328億円)
実は日テレだけ、広告収入が圧倒的で他社より500億円以上多いです。番組制作費も最も多くかけていますが、それでもテレ東以外の3社とは100~200億円程度の違いです。
なので、日テレだけ圧倒的に稼いでいるという事です。
ここ10数年は日テレが視聴率でトップをひた走っていましたので、そういった中で広告収入に大きな差が生まれていた事が分かります。
さて、改めて市場からの評価を見てみましょう。
時価総額 / PBR(2025/1/21時点)
日テレ:7053億円 / 0.70倍
TBS:6243億円 / 0.59倍
フジ:4182億円 / 0.42倍
テレ朝:2353億円 / 0.52倍
テレ東:827億円 / 0.83倍
先ほど触れましたが、業績と市場からの評価は連動していなかったわけです。
それがなぜなのか、ここからは各社の特徴について見ていきましょう。
TBSの特徴
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まず、TBSの特徴から見ていきましょう。
テレビ局比率
売上 / 経常利益
56% / 31%
先ほど見たようにTBSはテレビ局以外で比較的稼いでいる企業です。
事業セグメントを見てみると3つの事業があります。
①メディア:テレビ局のTBSやそれ以外のメディア関連
②ライフスタイル:小売り関連(プラザなど)、やる気スイッチグループ(教育事業)
③不動産事業
セグメント利益は以下の通りです。
①メディア:39億円
②ライフスタイル:42億円
③不動産事業:71億円
メディア以外の小売りや不動産で稼いでいる企業となています。
また、TBSは業績は日テレやフジテレビを下回るものの、時価総額は高水準でしたが、その要因は財務状況にあります。
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不動産事業を大規模に行っており、簿価ベースでも1726億円もの土地を保有しているという事もありますが、それ以上に抱えている大きな資産が投資有価証券です。
2024年9月末時点でも8608億円もの有価証券を保有しています。
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では何の株を持っているのかといえば、最も規模が大きいのは東京エレクトロンです。日本の半導体関連企業ではで最も時価総額の高い企業です。
それを2024年3月末で3670億円分保有しています。
というのも、東京エレクトロンはそもそもTBSの子会社として設立された企業です。
現在の持ち株比率は3.26%ほどとなりましたが、それでも大株主で非常に規模が大きいです。
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それ以外にも株式持ち合いを行うリクルート株を1272億円、東宝、東映、電通は200億円ほどと、多額の株式を保有しています。
つまりTBSの時価総額が業績と比べて高いのは、不動産事業などの安定収益があるだけでなく、この保有している多額の株式にあるという事ですね。
TBSを一言でいえば、東京エレクトロン作ってくれてありがとう企業だという事です。
日本テレビの特徴
続いて日本テレビの特徴を見ていきましょう。
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テレビ局比率
売上高 / 経常利益
日テレ: 68% / 66%
先ほど見たように、日本テレビはテレビ局で多くを稼いでいる企業です。
不動産事業も展開しており、2023年度では43億円ほどを稼いでいますがメディア事業が385億円稼いでいますから主力です。
このように、日本テレビはテレビ局として圧倒的に稼いでいるわけですが、時価総額も多額の有価証券を持つTBSを上回っていました。
それはなぜなのかというと、実は日テレも財務状況が非常に良好だという事が影響しています。
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財務状況を見てみると、不動産事業も行っていますから土地を1789億円保有している事に加えて、手元の現預金が1338億円と多額で、投資有価証券も5894億円も保有しています。
TBSには劣るものの、非常に多額の現預金や有価証券を持っていて、テレビ局としても稼いでいるからこそ高い市場からの評価を受けているという事ですね。
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ではどういったところへ投資しているのかというと、有価証券の役半分の2277億円が債権です。
株式も2564億円ほどありますが、債券投資の規模が大きい事が分かります。
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ちなみに株式はリクルートが1034億円と多くを占めています。
という事で、日テレはテレビ局で利益がしっかり出ており、多額の現預金とリクルートを中心とした株式を保有し、そして債権投資を積極的に行っている企業となっています。
利益も出ていて、資産も多額なので時価総額がテレビ業界では最も大きいという事ですね。
日テレを一言でいえば、テレビ局でめちゃくちゃ稼げるけどお金の使い道が無くて困っている系企業です。
テレビ朝日の特徴
続いてテレビ朝日の特徴を見ていきましょう。
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テレビ局比率
売上高 / 経常利益
75% / 30%
先ほど見たようにテレビ朝日はテレビ局比率が高い企業です。
テレビ朝日の主力の事業セグメントは3つあります。
①テレビ放送事業:テレビ局に加えて、BS、CSなどの放送関連の事業
②インターネット事業:ABEMAやTver,TELASAなどのネット配信関連の事業
③ショッピング事業:ECなど物販関連など
セグメント利益は以下の通りです。
①テレビ放送事業:60億円
②インターネット事業:23億円
③ショッピング事業:14億円
セグメント別の業績を見ても、最も稼いでいるのがテレビ放送事業でそれに次いで規模が大きいのはインターネット配信関連の事業です。
朝日系では、朝日新聞が多額の不動産を持っている一方で、テレビ朝日は不動産事業を行っておらず、メディア関連の事業で大半を稼いでいる企業となっています。
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財務状況を見ても、土地は648億円、有価証券450億円、投資有価証券は2147億円となっており、多額の有価証券は保有しているものの、他社と比べると低水準だと分かります。
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投資先もリクルートが202億円、KDDIが209億円などと分散した構成で、特定の投資先があるわけでもありません。
という事で、テレビ朝日は視聴率は高いものの市場からの評価が低かったわけですが、それはメディア事業が大半でそれも日テレと比べて稼げていない事や、財務力が他社と比べて弱い事が影響していたという事ですね。
フジテレビの特徴
続いてフジ・メディア・ホールディングスの特徴を見ていきましょう。
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テレビ局比率
売上高 / 経常利益
42% / 14%
先ほど見たように、フジは圧倒的にテレビ局比率が低い企業です。
フジテレビの主力事業は以下の2つです
①メディアコンテンツ事業:フジテレビやビーエスフジなどのメディアやポニーキャニオンや広告事業など
②都市開発・観光事業:サンケイビルを中心とする不動産賃貸業やグランビスタブランドのホテル事業など
セグメント別の事業利益は以下の通りです。
①メディアコンテンツ事業:157億円
②都市開発・観光事業:195億円
テレビ局の比率は低いものの、それ以外のメディア関連事業が稼いでおり、メディア事業の利益も規模が大きいです。
そして、メディア以上に不動産やホテルなどで稼いでいる企業となっています。
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財務面では土地が3462億円と他のテレビ企業と比べて、規模が大きいです。不動産事業の規模も大きいですし、テレビ業界では不動産を多額に保有している企業だと分かります。
さらに現預金が886億円あり、有価証券は1093億円、投資有価証券は4239億円と有価証券も多額に保有しています。
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有価証券の投資先は、東映アニメーションや、ヤクルト、東宝やリクルート、電通などを数百億円規模で保有しており、比較的分散して多数の有価証券を保有しています。
視聴率は最下位ながらも、時価総額ではテレビ朝日を上回っていましたが、それにはこのようにテレビ以外のメディア事業が稼いでいる事や、不動産・ホテル事業の規模が大きい事、そして多額の資産を保有している事が影響しているわけですね。
テレビ東京の特徴
最後にテレビ東京の特徴を見ていきましょう。
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テレビ東京は、テレビ放送以上に稼いでいるのがアニメ・配信事業です。
アニメ関連に強みを持つテレ東は、それで稼いでいます。
そしてテレ朝同様に、メディア関連の事業が大半を占めている企業だという事が分かります。
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財務面を見ても、手元の現預金は388億円、投資有価証券は205億円など他の企業と比べて規模が小さいです。
メディア事業中心でその規模も小さいですし、財務面も他社と比べると弱いという事で、時価総額は1社だけ小さかったという事ですね。
という事で、テレビ局各社で違いが大きい事が分かったのではないかと思います。
今回はテレビ局各社の違いについて解説してみました。