東京メトロがIPO!知っておきたい、鉄道企業の利益率の違い

どうも、こんにちは!

 東京メトロが10月23日にIPOするという事で、鉄道会社について個人的にも気になりましたので今回は鉄道会社各社の利益率の違いや、それがなぜなのかという事について書いていこうと思います。

今回取り上げる企業は以下の通りです。
①JR東日本
②JR西日本
③JR東海
④JR九州
⑤京王電鉄
⑥東京メトロ
⑦山陽電鉄:姫路〜神戸/大阪を結ぶ私鉄
⑧広島電鉄:広島を中心に路面電車などを展開

日本各地の鉄道企業から、違いや現状を見ていきましょう。

それではまずは、2024年3月期の各社の業績を見ていきます。

売上高 / (営業利益)
①JR東日本:2兆7301億円 / (3451億円)
②JR西日本:1兆7180億円 / (1797億円)
③JR東海:1兆7104億円 / (6073億円)
④JR九州:4204億円 / (470億円)
⑤京王電鉄:4086億円 / (438億円)
⑥東京メトロ:3893億円 / (764億円)
⑦山陽電鉄:389億円 / (43億円)
⑧広島電鉄:304億円 / (▲11億円)

圧倒的に規模が大きいのがやはりJR東日本ですが、利益面では圧倒的なのがJR東海です。
そしてJR九州はJR他社と比べると規模が小さく、京王電鉄や東京メトロと同程度です。

営業利益率
①JR東日本:12.6%
②JR西日本:10.5%
③JR東海:35.5%
④JR九州:11.2%
⑤京王電鉄:10.7%
⑥東京メトロ:19.6%
⑦山陽電鉄:11.1%
⑧広島電鉄:▲3.6%

利益率を見てみると圧倒的に利益率が高いのがJR東海の35%で、続いて東京メトロが約20%、それ以外の他社は大半が10%ほどとなっており、広島電鉄は赤字となっています。
明らかにJR東海や東京メトロは利益率が高いです。

そして大半の鉄道会社の利益率が10%ほどですが、こういった利益率となっているのは運輸事業の利益率が10%ほどだという事ではなく、各社の事業内容が影響しています。
鉄道企業の各社は、運輸事業を行うだけでなく駅を中心に周辺施設の開発も行っています。

人口減少が見込まれる中で、鉄道以外の事業に力を入れる企業は増えています。

例えば、かなり大規模な不動産開発を行うJR東日本では、営業利益3451億円の内、1001億円を不動産・ホテル事業が稼いでおり、この事業の利益率は24.7%と高くJR東日本の利益率を押し上げています。

一方で新宿で京王百貨店なども展開し、利益率の低い小売り事業の規模が大きな京王電鉄は、流通事業が売上の27%を占める一方で、利益率は5.0%と低く企業としての利益率を押し下げています。

各社とも事業構成には違いがあるという事ですね。
なので鉄道事業の利益率が10%ほどになるというよりは、鉄道事業各社が他社の状況を見て10%ほどの利益率を目標としているという事でしょう。

続いて、売上に占める運輸事業の比率を見ていくと以下の通りです。
①JR東日本:68%
②JR西日本:57%
③JR東海:82%
④JR九州:38%
⑤京王電鉄:30%
⑥東京メトロ:92%
⑦山陽電鉄:49%
⑧広島電鉄:66%

利益率が高かったJR東海や東京メトロは運輸事業の比率が明らかに高い事が分かります、そしてJR九州や京王電鉄は運輸事業の比率が低く、山陽電鉄も比率は低めです。
事業構成が各社で大きく違う事が分かると思います。

もう少し詳しく運輸事業について見ていきましょう。
2024年3月期の各社の運輸事業のみの業績は以下の通りです。

売上高 / (営業利益)
①JR東日本:1兆8536億円 / (1707億円)
②JR西日本:9864億円 / (1144億円)
③JR東海:1兆4083億円 / (5596億円)
④JR九州:1604億円 / (105億円)
⑤京王電鉄:1241億円 / (131億円)
⑥東京メトロ:3565億円 / (638億円)
⑦山陽電鉄:191億円 / (11億円)
⑧広島電鉄:200億円 / (▲24億円)

運輸事業営業利益率
①JR東日本:9.2%
②JR西日本:11.6%
③JR東海:39.7%
④JR九州:6.5%
⑤京王電鉄:10.6%
⑥東京メトロ:17.9%
⑦山陽電鉄:5.8%
⑧広島電鉄:▲12.0%

運輸事業でも利益率はJR東海が圧倒的で東京メトロも高いです。
そして運輸事業以外の事業規模が大きかったJR九州や山陽鉄道は利益率が低く広島電鉄は赤字です。
また、東京を中心に事業を展開する京王電鉄と東京メトロですが、利益率では京王電鉄の方が低い事も分かります。

広島電鉄は別ですが、鉄道事業の利益率が低い企業ほど、それ以外の事業規模が大きい事が分かりますね。
当たり前かもしれませんが、利益率が低い企業ほどその向上のために積極的な他の事業に投資していくという事が分かります。
そしてその結果、JR東海や東京メトロには及ばないものの各社とも企業全体では利益率が10%ほどになっているというのは鉄道業界の面白い点です。

また、運輸事業の利益率にも大きく差がついています。
これには、いくつか理由があります。

まず、基本的に鉄道事業の業績を大きく左右するのが乗車率です。
定期的なダイヤ改正はありますが、運航本数は基本的には一定です。
そして電車に100人乗っていても、1000人乗っていても1本あたりの運航コストはほとんど変わりませんから、コスト面はある程度一定になります。
乗車率が高まれば高まるほど、売上だけが増えていきますから、収益性が高まる事業です。

運賃が違うという事もありますが、基本的には乗車率が重要なので広島を中心に事業を展開する広島電鉄は赤字ですし、山陽電鉄やJR九州も都心部を中心に事業を展開する企業と比べて利益率が低くなっています。

また、圧倒的に利益率が高いのがJR東海で、この要因はやはり新幹線です。
東海道新幹線の東京~大阪間がJR東海の区間となっており、非常に利用率も高く利用量も多い、そして単価も高いというドル箱事業を抱えています。

2022年度のJR東海単体の売上構成を見ていくと以下の通りです。
(1)東海道新幹線:92%
(2)在来線:8%

JR東海は他社と違い完全に東海道新幹線の企業となっているため利益率が明らかに高いという事です。
同じ鉄道事業を展開していますが、事業内容が全く違うという事ですね。

また、同じように東京を走るJR東日本、東京メトロ、京王電鉄でも利益率に違いが出ていました。

鉄道事業利益率
(1)JR東日本:9.2%
(2)京王電鉄:10.6%
(3)東京メトロ:17.9%

それがなぜかというと、これはやはり不採算路線や収益性の低い路線をどれだけ抱えているかも影響しています。

それこそJR東日本は線区が広いです、都心部の利益率は非常に高いと考えられますが、その一方で地方部は利益率が低いです。

そして不採算路線も多くあります。
2022年度時点では平均通過人数が2000人未満の線区が広範囲にあり、その収支は▲648億円となっています。
広範囲に鉄道を展開し不採算路線も多い分利益率は低いという事ですね。

そして、都心部を中心に地下鉄を展開する東京メトロと八王子や多摩方面へも事業を展開する京王電鉄とでもやはり利益率に違いが出ています。

通勤ラッシュ時は別ですが、日中の乗車率に差がある事は想像がつくと思います。都心部で事業を展開しており、常に乗車率が高い東京メトロは鉄道事業としては非常に強い企業だという事ですね。

また、東京メトロと京王電鉄では定期関連にも違いがあります。
輸送人員に対する定期比率(運んでいる人の中で定期を使っている比率)は以下の通りです。
(1)東京メトロ:52.3%
(2)京王電鉄:55.3%
通勤通学の用途が多い京王電鉄の方がより定期を活用している人を多く運んでいる事が分かります。

また、輸送収入に対する定期比率(売上の中で定期の比率)は以下の通りです。
(1)東京メトロ:38.4%
(2)京王電鉄:38.0%
その一方で東京メトロの方が定期からの収入の比率が高いという事です。

つまり、お金にならない、定期を使う事で実際の運賃よりも得をしている乗客の比率が高いのが京王電鉄だという事です。
もちろん、鉄道の運行本数は定期の活用も含めた輸送人員に対応する必要がありますから、定期比率が高いという事はそれだけ低採算のダイヤを増やす必要があるという事です。
そういった面からも利益率に違いが出ているという事ですね。

ちなみに、コロナ禍でテレワーク化が進み鉄道各社とも定期収入がコロナ以前と比べて特に落ち込んでいます。
そういった点からも定期収入に頼る事のない都心部の鉄道はやはり強いです。

という事で今回は鉄道事業について書いてみました。

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