【NHK】過去最大の1割値下げを行い大きな赤字が続く現状と今後
どうもこんにちは!
今回は上場企業ではありませんがNHKを取り上げていこうかと思います。
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というのもNHKは2023年10月から過去最大となる1割ほどの値下げを行い、2024年3月期は34年ぶりの赤字で136億円の赤字となりました。
2026年度までの赤字が予想されていますので、現在のNHKの状況やどうして値下げを行ったのか、今後がどうなっていくのかなど、NHKについて見ていきましょう。
まずはどうして過去最大の値下げを行ったのか、NHKの近年の状況から見ていきましょう。
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まず、受信料の推移を見ていくとピークは2018年度の7122億円でそこから減少が続き2022年度には6725億円まで減少しています。
2020年にも若干の値下げを行っていた事もありますし、コロナ禍で個人宅への収納営業が減少した事や、そもそもNHK党の拡大も含め個人宅への営業が問題視されるなど、社会的な批判も高まった影響を受けています。
支払い率もピークだった2019年度の83%から2023年度には78%台まで減少しています。
値下げに加えて契約が減少した影響を受け、近年の受信料は減少傾向となっていたわけです。
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とはいえ受信料は減少していたものの、その一方で公共放送でありながら以下のように2022年度までは毎年数百億円単位の黒字は続いていました。
2020年度:+251億円
2021年度:+400億円
2022年度:+263億円
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結果として2022年度時点では、純資産(これまでの利益の積み重ね)は8865億円となり剰余金も4180億円と大きく積み上がっていました。
そもそもNHKは税金を支払う必要も無いので、純資産や内部留保は積み上がりやすく、非常に大きく積み上がってきた事が分かります。
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そして、多額の内部留保を抱えているため資産面を見ても2024年9月末時点では現預金が844億円、有価証券に関しては4238億円、長期保有有価証券は956億円、出資は119億円など非常に多額となっています。
つまり近年のNHKは公共放送で非営利団体でありながらも、内部留保が多額となり、大量の余剰資金や有価証券を保有している状況で、それが問題視されていたわけです。
テレビ離れも進む中で国民の目線も厳しくなり、そんな中で2021年1月に当時の菅首相が1割以上の料金引き下げを宣言しました。
結果として政治主導で大幅値下げの方向性に動く事になり、2023年10月から過去最大となる1割値下げを決めています。
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そして値下げによって2023年度には34年ぶりの赤字となり、2026年度まで赤字が続く見通しとなっています。
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今後は2027年度からの収支均衡を目指しており、そのための取り組みとして4年間で1300億円もの経費の削減を進めています。
コンテンツの選択と集中による削減が600億円、設備投資などの固定的な経費の削減が500億円、備品や消耗品の購入見直しやリモートワーク推進による出張旅費の削減などの経費削減による影響が100億円、営業経費の削減や管理間接業務のスリム化、高度化が100億円となっています。
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それこそ個人宅への収納委託は2023年の10月に法人委託を終了しており、営業経費削減はすでに進んでいます。
想定通りの収支改善が進み2027年度までに収支均衡が取れるかに注目です。
ちなみに、コレックHD(旧エヌリンクス)というNHKの収納業務で上場した企業がありますので、次回はその企業を取り上げてみようかと思います。
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また、しばらく赤字が続く見通しですがそれでも問題が無いのは、やはりこれまでの剰余金が多額だからです。
値下げに伴い剰余金の内、1954億円を還元目的積立金に振り替えています。
これまでの内部留保の内1954億円を値下げによる視聴者への還元、つまり赤字の補填に使う予定だという事です。
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ちなみに、還元に1954億円活用してもまだまだ内部留保は十分にありますので、赤字の中でも放送センターの建て替えなど設備投資は増やしています。
しばらく赤字が続く見通しですが、それでも余力は大きいという事です。
今後も過剰な内部留保は再値下げへの圧力となる可能性がありますので、建設投資などを増やしていく可能性もありそうです。
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また、多額の有価証券を保有していますが債権と譲渡性預金(譲渡可能な定期預金)で約半分づつの運用となっています。
個人的には、どうせこれだけの多額の資金を運用するのであれば、別でファンドなどを作り株式などへの投資を進めた方が日本経済のためにもメリットがあるのではないかと思っています。
資産活用に関しても議論がされてもいいのではないでしょうか。
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続いて、事業支出についても少しだけ見ていくとその内分けとしては76.7%が番組制作費となっています。
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ジャンル別の番組制作費では、規模が大きい所ではニュースが913億円で29%、ライフ・教養が832億円で27%、スポーツが503億円で16%となっています。
スポーツは野球・サッカー・相撲などスポーツに多額の投資をしていますが、こういった人気スポーツは公共放送でやる必要があるのかは疑問です。
人気スポーツは民間で投資できる分野かと思いますので、民間では難しい分野やクオリティのコンテンツの制作に投資した方がいいのではないでしょうか?
多額の資産の活用やコンテンツの投資先については議論がなされてもいいのではないかと思います。
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最後に直近の2024年度中間期の業績を見ていくと減収ながらも48億円の黒字転換となっています。
とはいえ値下げを受けて、事業収入も11.4%減となっており通期では570億円の赤字を見込んでいます。
まだまだ大きな赤字が続く見通しですから、構造改革が進み2027年度までの収支均衡が進むかに注目です。