空前の居酒屋不足!実は居酒屋が好調な話
さて、今回は居酒屋について取り上げていこうと思います。
前回はファーストフードを中心に飲食企業を取り上げましたが国内では、人件費や原材料費、水道光熱費などの高騰を受けて、コロナ以前と比べると苦戦していました。
ですが、飲食業界でもコロナ前と比べても非常に好調な業態があります。
実はそれが居酒屋です。
では、どうして好調なのか今回は居酒屋の状況を見ていきましょう。
①エターナルホスピタリティーグループ:鳥貴族や焼き鳥大吉など
②大庄:「庄や」など
③串カツ田中ホールディングス
これらの企業から居酒屋業界の現状を見ていきます。
まずは前期比の業績を見ていきましょう。
前期比:売上高
①エターナルホスピタリティーグループ:+25.3%
②大庄:+11.2%
③串カツ田中ホールディングス:+19.4%
前期比:営業利益
①エターナルホスピタリティーグループ:+129.2%
②大庄:▲4.6億円→10.0億円
③串カツ田中ホールディングス:+23.8%
各社とも好調で、鳥貴族と串カツ田中は増収増益、大庄は増収で黒字転換となっています。
前回取り上げた飲食店でもそうでしたが、行動が完全に正常化する中で、外出需要の回復が進み前期比で見ると各社とも好調です。
続いて、コロナ以前の業績と比較してみると以下の通りです。
コロナ前比:売上高
①エターナルホスピタリティーグループ:+25.3%
②大庄:▲17.1%
③串カツ田中ホールディングス:+16.9%
コロナ前比:営業利益
①エターナルホスピタリティーグループ:+172.9%
②大庄:+36.2%
③串カツ田中ホールディングス:+35.0%
コロナ以前と比較しても、大庄は売上が縮小していますが利益面は全社とも二桁以上の増益と好調です。
ちなみに、大庄が売上が縮小したのは店舗数の減少が影響しています。
各社のコロナ以前と比較した店舗数は以下の通りです。
①エターナルホスピタタリティグループ:659→1139
②大庄:488→336
③串カツ田中:273→342
鳥貴族を運営するエターナルホスピタリティグループは、鳥貴族の店舗数は若干減らしたものの、やきとり大吉を買収した影響によって大きく伸び、串カツ田中はコロナ禍でも積極出店を続けていました。
そして大庄は撤退を進めていたという状況です。
各社とも戦略は違いましたが、利益面に関しては全社ともコロナ以前を大きく上回り好調ですから、居酒屋という業態自体が好調だという事が分かります。
鳥貴族の既存店の状況をみても、値上げを進めた客単価はもちろん客数に関してもコロナ以前を上回って推移しています。
やはり、居酒屋業態が好調だと分かりますね。
ではどうして好調だったのか、鳥貴族がその大きな要因としてあげているのが競合店舗の減少です。
コロナ禍で最も苦戦した業態の1つである居酒屋は、やはり撤退も最も増えた業態の1つです。
それこそ先ほど見た大庄も大規模な撤退を進めていましたね。
実際に日本フードサービス協会によると、2023年時点では居酒屋の店舗数は2019年比で▲33.6%と1/3ほど減少しています。
ファーストフードが▲4.2%、ファミリーレストランが▲8.5%だったのと比較してみると圧倒的に退店が多かったことが分かります。
こういった競合が大きく減った状況ですから、急速に人流が回復し行動が正常化する中で、居酒屋各企業は店舗当たりの収益性が高まっていた事が分かります。
職場での飲み会の減少や、コロナを経て飲みに行く回数が減った方もいるかもしれませんが、そういった需要の減少を超えるほどの撤退が増えたたいう事ですね。
現在は、居酒屋不足が起きているという事です。
鳥貴族では値上げを進める中でも、既存店の客数もコロナ以前と比べて増えていましたが、それもこういった状況であれば納得感があると思います。
さらに、今の日本はインバウンドが非常に活況ですが居酒屋は海外には無い業態でインバウンドからの人気もあるようですし、その好影響も考えられます。
今後も好調が続く事が期待出来そうです。
もちろん需給にギャップがある状況ですから、居酒屋の出店は今も増えているでしょうし、今後も増加していく事が考えられます。
鳥貴族も、国内で年間35~80ほどの積極出店を今後数年続ける姿勢を見せています。
とはいえ、居酒屋は立地が重要なビジネスです。
なので、好立地に空き店舗が出ない事には出店は進みません、さらに今は圧倒的な人手不足ですから、人員の確保も容易ではありません、そういった中でまだしばらくは居酒屋不足が続く事で好調が期待されます。
そして、店舗を増やすチャンスでしょうから、大手の居酒屋チェーンは居酒屋不足の今のうちにどれだけ出店を進めていけるかに注目です。
ちなみに、最近は人件費は上昇しており、多くの店舗を運営する業態の利益面にマイナスの影響を与えていますが、今回取上げた居酒屋各社とも売上高に対する人件費率は減少しています。
これにはFC(フランチャイズ)比率の変化や、鳥貴族でいえばやきとり大吉の買収など、さまざな要因があるので明確な事は言えませんが、とはいえコロナ禍で大きく需要が低迷した居酒屋各社は、店舗運営の効率化など大きな構造改革を進めていました。
そういった成果が出ており人件費を中心にコロナ以前からは減少した状況が続いている側面があると考えられます。
飲食業界では人手不足となっていますから、そういった側面を考えてもオペレーションの改善が進んだポジティブな影響もありそうです。
コロナ禍での取り組みの成果が残っており好調な側面もあるという事ですね。
という事で、このようにコロナ禍で需要が急激に低迷した居酒屋では、大規模な撤退が進み競合が減少した事や、コロナ禍で大きな構造改革が進んだ結果、コロナ以前を上回るような好調となっていました。
その一方で、苦戦はしたものの一定の需要があり競合が減りにくかった飲食店各社は人件費高騰を受けて国内事業は低迷しているのが面白いと思い今回は取り上げてみました。
という事で、実は今好調になっている居酒屋というテーマで書いてみました。