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【令和版】魔女の寄り道(6)

前回の話はこちら。


白風しろかぜ 明里あかりは神社でお守りを受け取り、家に帰る途中だった。

今日は体が透明化していない。

身につけているブレスレットや数珠、もしくは先ほど頂いたお守りのどれかが効いているのかもしれない。
こんなに多種多様な宗教の法具やアクセサリーを身に付けていいのかどうか分からなかったが、何が透明化に効果があるのか分からないので、色々試して様子を見るしかなかった。

もうすぐ11月も終わりだ。今日は特に寒く感じた。
季節の変わり目だからだろうか、風邪を引いた時のような目眩がした。
今日は早く帰って休もう。

早足で歩いていると、視界が急に悪くなった。
サングラスをかけているせいだろうと思って外してみたが、
月明かりのない真夜中のような、異様な暗さだった。

さっきまで夕方だったはずなのに。
街灯もついていない。
街全体が停電になってしまったのだろうか?

明里はスマホのライトを頼りに帰路を進んだが、かなり歩きにくい。
そしてどうやら道に迷ってしまったようだ。
ベンチや噴水などがあるので、ここは公園らしい。

しばらく歩いていると、スマホのライトよりはっきりとした大きな光が見えたので、そちらの方に進んでみることにした。
人がいるかもしれない。

一人の女性が光の球体に照らされていた。光源はここのようだ。

「あら、あなたも道に迷ってしまったのかしら?」

聞き覚えのある女性の声がした。

それが先日、銭湯で明里に話しかけた女性だと気づくのに
さほど時間はかからなかった。

美智子は老婆との会話を終え、図書館を出て帰る途中だった。

夕方だった景色が突然、真夜中のように真っ暗になった。
おそらく何か怪奇現象に巻き込まれたのだろう。
こういう場合、おそらく原因を解明しないと脱出できない。

美智子は頭上付近に、浮遊しながら発光する球体を出現させた。
発光魔法によって美智子の周囲が優しく照らされる。

あまり魔法を使っている所を人に見られたくなかったが、
懐中電灯の一種とごまかせばいい。

発光魔法で周囲を照らすと、美智子と同じように、怪奇現象に巻き込まれて暗闇をさまよっていたであろう人が近づいてきた。
帽子にマスクをしており、顔がよく分からない。

「あら、あなたも道に迷ってしまったのかしら?」

「はい。迷っているうちに公園に来てしまったんです。
 あのう……先日、銭湯にいらっしゃった方ですよね?
 あの時は助けていただきありがとうございました」

「?」

「私、銭湯で声をかけていただいた透明人間です」

「ああ、思い出したわ。助けたなんて大袈裟だけど、
 でもお役にたてたのなら良かったわ」

2人が話していると、さらにもう一人、女性が近づいてきた。

「あれ、もしかして沼森さんじゃないですか?」

よく見るとその女性は、先週くらいに美智子のことを魔女だと
見抜いた巫女だった。
彼女は悪霊や魔力のオーラが視えるらしいので、視界が悪くても美智子のことが分かったのだろう。

「こんばんは、神矢かみや 由衣ゆいです。またお会いましたね、沼森さん。
 おやっ、お隣の方は先ほどウチの神社に来てくれた参拝者さん?」

「あっはい、白風しろかぜ 明里あかりと申します。
 私に声をかけてくださった巫女さんですよね。
 もうお仕事は終わったんですか?」

「はい、今日は早番です」

もし箒などがあれば、この2人を見捨てて自分だけ空を飛んで脱出するということも美智子なら可能だろう。
しかし周囲に手ごろな箒などは見つからなかった。

それに、何か怪奇現象が起こっているならば、空を飛んでも脱出できないかもしれない。
美智子はひとまずこの現象の原因を探ってみようと思った。

「それじゃあ、さっさとここを脱出するわよ」

3人は漆黒の公園を歩き始めた。


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