ION: 分散型のIDへ
2021年9月13日付、公式ブログから翻訳
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Browsers 3000は、Protocol Labsによる5週間のハッカソンで、将来のWeb3.0のために構築されている分散型ソリューションに焦点を当てています。こちらでは、IONの開発チームメンバーであるDaniel Buchner氏の講演内容です。講演の全文はこちらをご覧ください。
ほとんどの人は、自分のアイデンティティが盗まれるまでは、デジタルアイデンティティについて考えません。しかし、デジタルアイデンティティは、皆さんが考えているように機能しているわけではありません。インターネット上のアイデンティティは、2つの異なるタイプのデータに分かれています。
アイデンティティデータとは、特定サイトであなたが入力した情報のことです。これらのデータは、あなたの情報とユーザー名をリンクさせ、デジタル版のペルソナを構築します。もう一つの大事な部分は識別子です。識別子とは、電話番号や電子メールアドレスなどの、あなたに直接リンクしていて、情報確認が可能なものです。
問題は、あなたのデジタルプレゼンスに関連するこれらのデータをすべて企業が所有していることです。この問題により、個人は企業のルールに従わなければ、そのオンラインプラットフォームの利用が出来なくなる可能性があるということです。
多くの人は、インターフェースを使用し、自分の情報を他のサイトにリンクさせています。これにより、新しいアカウントを作成せずに特定の場所にログインしたい人にとっては、便利になりました。しかし、巨大企業が管理する識別子にアクセスできなくなると、それらのサイト上のデータも失うことになります。
では、どうすればこの問題を回避できるのでしょうか?IONは、ビットコインブロックチェーンや、IPFSなどの検証データを保存する分散型テクノロジーによって、識別子をユーザーの管理下に置くように設計されたシステムです。IONではDID(Decentralized Identifier)と呼ばれるものが大事になってきます。
W3Cの分散型識別子
分散型識別子(DID)とは、World Wide Web Consortium(W3C)によって開発された、分散型識別子とパブリックキーのインフラの為の標準です。DIDは、暗号化された安全な形で、ユーザーがオンラインデータやオンラインアイデンティティを完全にコントロールできるようにする方法です。
他の暗号化されたプロセスと同様に、ユーザーはパブリックキーとシークレットキーを取得します。ユーザーのパブリックキーは、IONネットワークを使ってユーザーの情報を検証する際の基礎となります。DIDsはユーザー自身が管理するものなので、アカウントにロックアウトされる心配はありません。また、DIDsは、改ざんされず、検閲を受けない安全なID認証を実現します。
現代のIDシステムでは、人の外見やデジタルの「足跡」が時間とともにどのように変化するかを追跡することが課題となっています。IONのシステムは当初、時系列の記録をいかにして保存し、変化に対応するかを考えて開発されました。ビットコインブロックチェーンに刻まれた不変の記録により、誰もが時間による変化を追うことができます。そして、DIDがその識別子を持つ人のものであることも確認することが出来ます。これら全てがIONでは可能です。
IONとは?更に詳しくみていきましょう
IONは、ビットコインブロックチェーン上に構築されたDIDソリューションで、その不変性と柔軟性を活用しています。IONは、DIDの作成と検証に特化した、パブリックでパーミッションレスのレイヤー2ネットワークです。他のDIDソリューションとは異なり、IONは、追加のコンセンサススキーム、独自のユーティリティトークン、中央集権、検証者に依存しません。その代わりに、ユーザーがコントロールできるサービスを提供することを目的としています。
IONとIPFS
IONの作業システムは、従来のビットコインブロックチェーンの作業サイクルとは少し異なります。最初に、IONノードはDIDオペレーションバッチを収集し、ビットコインネットワークにリンクます。すべてのノードは、IONに埋め込まれたトランザクションがないか、ネットワークを監視します。その場合、ノードは埋め込まれたCIDにリンクされたファイルを見つけて処理し、DIDオペレーションの解決のために保持します。
IONでは、コア・インデックスファイル、コア・プルーフファイル、プロビジョナル・インデックスファイル、プロビジョナル・プルーフファイル、チャンクファイルなどのデータを使用します。これらのファイルはIPFSに保存されているため、IONに届けられるのはIPFSからのコンテンツIDs(CIDs)のみです。そしてIONは、IPFSネットワークのパブリックゲートウェイを通じて、そのCIDsを使ってデータを取り出すことができます。
IPFSシステムでは、ネットワーク上に複数のノードが同じデータを永続的にホストしているため、ユーザーの情報が失われることはありません。CIDを使用してのデータの取得は、検証のためにデータをIONに直接渡すよりも何倍も速いです。
IONは、何千人ものユーザーがインフラを利用してデータを高速に検証できる、スケーラブルなシステムを構築しています。IONのIDシステムは、Bitcoinネットワーク上で構築され、IPFSネットワークのCIDsを活用することで、完全に分散化されています。
ユーザーは、従来のBTC取引にかかる100ドル前後の手数料に不安を感じるかもしれません。しかし、これらはバッチ処理なので、複数の処理を1つのバッチにまとめることができます。このバッチ処理型のソリューションでは、1トランザクションあたりのコストを数セントにまで下げることができ、手頃なソリューションとなります。ビットコインブロックチェーンの不変性により、追跡可能で、復元力があるため、IDデータを世界中のどこからでも簡単にアクセスできるようにしておくのに適しています。
IONはどのように使われるのか?
IONは多くの用途が見込めます。最もわかりやすいユースケースは、検証可能なクレデンシャルです。企業は従業員の認証情報を取得し、自社に到着した際にブロックチェーンで検証することができます。この機能は、国際的な旅券の供給と検証の手段としての利用も考えられます。
また、IONは安全なデータを送信するだけでなく、個人情報を保管することもできます。専門家でなくても、デジタル名刺みたいで、他の特典がついたもと認識していただければ良いと思います。ユーザーが自分のパブリックキーを誰かと共有すれば、第三者がアクセスできない安全なエンドツーエンドの暗号化された通信を行うことができます。
さらに、このデータロジックを利用することで、アプリの連携が容易になります。アプリのサーバーに保存されているデータを気にすることなく、ユーザーの識別子を使用することができます。この方法を使用すると、すべてのアプリケーションが同じベースデータから動作し、間違いの余地がないことが保証されます。
すべてのアプリが同じソースデータを使用するため、アプリを使用した旅行計画はより簡単になります。また、組織の認証にも利用できます。組織のパブリックキーを使うことにより、ユーザーはその組織の認定状況を確認したり、認定の履歴を時系列で追跡したりすることができます。
パーソナルデータの新しい管理方法
IONは、私たちの行動に本質的な変化をもたらす可能性のあるテクノロジーの一つです。ほとんどの人は、自分の識別子やデジタルアイデンティティについて深く考えることはありません。しかし、デジタルライフがスタンダードになるにつれ、デジタルアイデンティティは全く新しい意味を持つことになるでしょう。IONは、個人的なメッセージからブログまで、あらゆるものの基盤となる可能性があります。
本ブログは、www.filecoin.io/blog からの翻訳となります。
ソース: https://filecoin.io/blog/posts/a-path-to-decentralized-identity/
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