マンションの管理人

 お盆休みも無い管理人も、年末年始の5日間(12/30~1/3)は休みになる。1/4(月)が初出勤で燃えるゴミの回収日となる。

 現在イーズカは33戸の分譲物件と、49戸の賃貸物件を受け持っている。自宅から徒歩8分圏内で、両物件間は3分ほどで行き来できる。
 1/4に全てをやろうとすると、早朝から「地獄を見る」ことになる。昨日1/2の昼過ぎに「軽く整理だけしよう」と現場に出掛けた。

 まず賃貸物件。ゴミ置き場のドアを開けたら、ゴミが崩れ落ちてきた。「これは整理では済まない。何処かに移動するしかない」と判断した。スカスカの袋にレジ袋で出されたゴミを放り込み、70リッターの袋に集約していく。
 ゴミ置き場の向かい側の壁前に積み上げた。電話分配器の入る操作盤の両サイドにスペースがある。

 すでにペットボトルのネットで2袋が出してある。その周囲と前に積み上げていく。
 最初はウラの駐輪場への出口に積み上げたが、「もう外には出られない」ほどの塹壕のようになってしまった。

 袋詰めしながら大袋を移動していく。幅5メートルほどの壁前がゴミで覆われた。その上に「カラス防止用ネット」で覆った。こうしないと、トリにやられるし、近隣の住民がゴミを捨てる場所になってしまう。

 金属音とガラス音がするゴミ袋は退避してあったので、それらの口を開けて、ビン・カンを取り出して専用のキャビネットに放り込む。何度言っても、ドロドロの生ゴミにビン・カンを混ぜるバカが居る。

 次は不燃ゴミを仕分ける。何故か「プラ」を不燃バケツに入れるヤツが一人いる。金属系バケツとガラス陶器系バケツに分けているので、両者を分離する。
 そしてペットボトルのネットの中の2リッターのモノを踏み潰して体積を減らす。溢れたネットを表に引き出した。

 最後はビンカンを仕分けてから、段ボールを解体してヒモで結わえていく。これが緩いと運搬中にバラけてしまう。厚い段ボールは4隅をカッターナイフで切断し、畳んだ時にかさばらないようにする。
 これを単純に畳んでいくと、運搬中に崩れる事態となる。

 ゴミ・バケツに新たなゴミ袋を被せて完了。建物周辺に落ち葉が散乱していたので、大雑把に掃き集めてゴミバケツに入れる。
 この間、約1時間半。30分で終わるつもりが甘かった。ワンルーム・マンションの広さなので、部屋にゴミをストックすることが出来ない。すべてがゴミ置き場に集中して、ドアを開けた瞬間に崩れたのだ。

 移動途中で一服してから、分譲物件に行った。

 コチラは金持ちしか住んでいない高級物件である。みなさん自分の所有物で資産なので、ゴミの出し方も丁寧である。
 しかし、それでもゴミ置き場は溢れ、周囲の壁は天井までキレイに積み上がっていた。
 コチラの物件は消火ポンプ室が広いので、そちらに避難させた。明日までに火事が起こらないことを祈る。

 ヒトひとり入れない位に溢れていた。先ほどと同じ手順で作業を進めて、集約と運搬を繰り返していた。
 そこに最も親しい奥様がやって来た。「え~、今日2日は休みでしょう? どうしたんですか」と驚いていた。
 「明後日の4日に地獄を見たくないので、ラクをするために来ました」と答えた。すると背後にいた小学生の息子を呼び寄せて「本年も、ヨロシクお願いします。」と挨拶させてくれた。
 こちらも手を休めてご挨拶した。このマンションの住人たちは、父親も母親も子供の躾けがしっかりしている。

 イーズカはオシャベリなので住民とも良く雑談している。
 父親が子供を保育園に送った後に会った時、子供の話になった。
 彼が「親バカですね」と言ったので、「いいえ、赤の他人のワタシが見てもカワイイんだから、親は堪らんでしょう」
と言ったら「ありがとうございます」と最敬礼された。

 このマンションは既に4年半も担当しており、着任時が出産ラッシュで、現在はその子供たちが3歳から4歳で、もっともカワイイ時期である。住人すべての顔と名前と性格を知っている。

 しかし、こちらの作業も1時間以上掛かってしまった。4日はラクができるが、今日は疲れてしまった。

 ヒマで酒を飲んでいるよりも、はるかに健康的で達成感のある時間を過ごした。

 イーズカは家では酒は一滴も飲まない。飲み屋でしか飲まないし、飲みたくも無い。


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