プロの条件

 今日、土曜日は本来なら大好きな「ラテンエアロ」の日である。このクラスは最前列右手が指定席になっており、イーズカ以外は誰もそこに立たない。
 今日はイントラの彼女が研修で休み、代行が入った。ラテンエアロでは無くて「エアロビクス」だったが、全然構わない。運動量が豊富なので、内容次第ではラテンよりも好きである。

 雨も降って寒いので、全身赤黒のボディスーツで参加した。まあスパイダーマンのような恰好である。
 他の店舗でやっているイントラなので、その「追っかけ」がついてくる。
 それなりに人気があるらしい。

 最初のウォームアップは寒くてカラダが縮んでいるので、大き目に動いた。
 それが終わり、ウォームジャケットを脱いで本番に臨んだ。しかし、どうもノリが合わない。細かいステップは良いのだが、ちっとも面白くない。
 教え方も乗せ方も下手である。そのうちに、完全にヤル気を無くした。もうそうなったら、殆ど指示通りに動かない。指先・足先を動かすだけで、左右の移動もしない。
 「こんなクダラナイ事を、やってられるか」という明確な意思表示である。

 イントラは焦りまくっている。最前列の恐ろしい形相の男性が、まったく言う事を聞いてくれない。
 「超上級者」であることは、見ただけで分かる。そんなヤツから「もう、止めてしまえ」と言われているのである。

 以前も、この店舗の女性イントラで、回転ばかりで難しくしているヤツが居た。あまりにクダラナイし、ツマラナイのでまったくマジメにやらなかった。するとメチャクチャ早口になり、回転の頻度とスピードが増していく。
 結果、彼女自身が回転で転倒してしまった。呆れて、スタジオを退出した。
 「バカか、オマエは」という感じである。

 今日もイントラはイーズカの正面に居るのがイヤだったらしく、全体を後ろ向きにさせて最後列に移動した。
 イーズカもちょうど良い機会なので、荷物を持って「これ見よがし」に退場した。

 こんな事をイーズカにやられて泣き出したイントラなど、数十人は居る。38年間もやっているので、一年に一人でも38人になる。

 単に「相性が合わない」だけなら、「ヒザを痛めているので、回転系は無理なので」とか、イントラに話しかけて顔を立てて出ていく。
 今日のように「クタバッテしまえ」と出るには、相当の怒りがある。

 最初の立ち上がりで、スタジオ全体を掴めない。自分がやるのが精一杯で、皆のリードが取れない。生徒が楽しんでいるかをチェックする余裕も無い。
 イントラ失格である。商売を変えるか、ゼロからやり直した方が良い。

 イーズカなどほとんどのイントラより身体能力は高く、キャリアなど倍以上もある。今日のラテンエアロのイントラなど、イーズカより遥かに下手である。
 しかし、それで構わない。イーズカは彼女のクラスが面白いし、運動強度など勝手にアレンジして上げてしまう。イーズカは好き勝手にやりたいので、生徒のままでいる。イントラは客商売なので、イーズカには向かない。

 「プロ」とは、カネを頂いて「何かを提供する」人間を言う。その内容に不満があれば、客など即座に居なくなってしまう。飲み屋も同じである。わざわざカネを払って来ているのだ。飲み屋もイントラも、他にいくらでもある。そこを選ぶには、訳がある。

 イーズカは、この姿勢を変える気は無い。イントラなど何人消滅しようが構わない。イントラ本人も、さっさと商売を変えた方が自分の為でもある。飲み屋など、潰れる店は潰れて当然である。今や「凄まじい淘汰」の時期を迎えている。世代交代も進んでいる。

 せっかく寒い日にカラダを動かそうと思ったのに、大誤算であった。コチラも貴重な時間を無駄にしている。

 今日のイントラは、ほとんど今後に期待できない。38年間もやっているので、可能性があるか、無いかはスグに分かる。

 「カラダを動かす喜びを提供できないイントラ」など、居るだけで邪魔である。


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