「初沢亜利」氏の写真展
昨日はカメラマンの初沢亜利氏の写真展に行った。彼とは元々飲み屋で知り合っている。まだ彼が大学生だったのではないだろうか。
最初の印象は、「小生意気なガキ」であった。写真など一枚も見たことも無く、ただ「根拠のない自信にあふれた若者」と認識していた。
その後も幾度となく遭っているが、認識は変わらなかった。
イーズカ自身が「根拠のない自信にあふれた」若者として、大学教授など小馬鹿にすることからスタートしていたので、当然の事だと思っていた。
若者から「自信」と「生意気さ」を取ったら何も残らない。モノを知らないのだから、判断力も無く、無鉄砲に突っ込んで行くしかない。
そんな彼の写真を見る機会が多くなった。まずは北朝鮮シリーズ。それを武器にテレビに出演し、コメントする姿を何度も見た。
そして「香港シリーズ」と「コロナ禍シリーズ」と続く。「コロナ禍」の写真展の時に、「もう。香港には入れない」と無念そうに語る姿が印象的だった。
今回の「香港シリーズ」は、香港の全人口の3割がデモに参加していた時のものである。
機動隊員の持つ催涙弾銃は、「ライフルか?」と思うほどの重厚感がある。
1979年の三里塚闘争・空港管制塔占拠のとき、日本の機動隊が構える催涙弾銃は、信号弾発射用のモノに見えた。
それでも直撃を食らうと、顔がザクロのように血まみれになった。水平撃ちによって死者も出ている。
香港のそれは、最初から水平撃ちで人間を狙うモノである。だいたい催涙ガスとはインチキ表現で、あれは薄めた「毒ガス」で、吸いこむと嘔吐が止まらず、翌日以降も倦怠感が残ってしまう。
香港の機動隊員は、当然のごとく毒マスクを装着していた。総人口750万人のうち200万人がデモに参加している。警察も恐怖している表情が見て取れる。
どちらも「負けたら、殺される」のである。
圧巻は、白い催涙ガスの中にひとり立つデモ隊の人間で、ヘルメットをかぶり、跳躍前のような姿勢で構えている。
構図も見事だが、臨場感が凄まじい。「良くも、こんな写真が撮れたものだ」と言ったら、「ホントに、そうですね」と答えてくれた。
彼の写真には圧倒される。あの「小生意気さ」を楽々と飛び越える作品を見せてもらった。
初沢亜利氏の今後の活躍にも期待している。