ケーサツが狙うヤツ
イーズカはファッションも小物もレディスが多く、昨日もピンクのポシェットを持って歩いていた。
若い友人から「イーズカさん、そんなオンナ・モノを持ってたら、盗ったんだろう、と確実に職務質問に遭いますよ。」と言われた。
彼は何度か職質を受けているらしい。
実はイーズカは社会に出てから40年以上経つが、職務質問というものを一度も受けたことがない。
レディスのファッションなど当然のようにしているので、何の疑問も抱かせない。「隠そう」としているヤツは疑われるが、「これ見よがし」のヤツは披露して歩いているので疑いようがない。
大学時代、神奈川県警・港北署の公安刑事に付き纏われていたが、互いにヒマなので雑談は良くしていた。
「職務質問は、どんな奴を狙うのだ?」と訊くと、「挙動不審な奴だ」と即答した。顔がコワイとか、服装がヤクザっぽいとかは関係ない。ワザワザ自らの罪を公開するヤツなど居ない。
それに「挙動不審なヤツは、自分に自信が無いのでそうなっている。だから逮捕して脅せば簡単にクチを割る。落としやすいのだ。」と言っていた。
それから逮捕のコツも訊いてみた。イーズカなど乱闘になるような暴力デモに多数参加していたがまったく逮捕歴が無い。片や平和な市民デモなのに、逮捕されるヤツが居る。
すると「その捕まったヤツはトロイのだ」との答えだった。ケーサツもそんなトロイ奴を狙っている訳では無いが、結果的にそんな奴が捕まるのだ、とのことだった。
そして「とてつもなく運の悪いヤツ、というのが居る」と言っていた。「ただその分、殺し合いの内ゲバ実行犯をやらされる事など無いから、運が良いとも言える。」とも補足した。
「オマエさんのように、ケイオーの学生運動の顔、みたいなヤツは捕まらんのだ。下手に逮捕してしまうと後処理が厄介になる。」とも言っていた。
「ただ殺し合いの実行犯にだけは成るな。いくらサヨク同士でも『殺し』だけはゼッタイに挙げる。」
ヒマつぶしに公安刑事とこんな雑談を遣り取りしていた。内ゲバがあまりに凄惨で、もうすでに新左翼党派には見切りを付けていた。そして広告業界に進んだ。
そんな業界に進んだので、オシャレ命で「日々是プレゼン」である。目立ってナンボの世界で、無視されたらオシマイである。
常に自信たっぷりに振る舞い、多少は場違いでも「相手が悪い」と思わせることで乗り切って来た。
プレゼンの席でも、そいつの人間力と迫力が全てを決する。
お陰で大学を卒業してから40年以上、職務質問など受けたことも無い。
「強面な顔ヂカラ」を発散するために、マスクなど電車内でも一度もしたことが無い。マスクなんぞしたら、ヒトが避けてくれないのだ。