
映画『アンダーグラウンド』を見ないなんて
おひさしぶり。シニヨンです。
今日はみなさんにそれはそれは素敵な映画を紹介します。
エミール:クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』です。
この監督はサラエヴォ出身でお父様がセルビア、お母様がムスリムなのですが、本人は「自分はユーゴスラヴィア人だ」と語っているそう(かっこいい)。
彼はパルム・ドールを2度、世界三大映画祭を全制覇(!)しているそれはそれはすごいお方なのですが、日本では知名度が高くない(怒)。
で、話題の『アンダーグラウンド』。
ナチス侵攻下のユーゴスラヴィアで、パルチザン運動をしている男、マルコという男は、お調子者でけんかっ早く、女好きのクロを仲間に引き入れる。
マルコは、クロと違い、頭もよく、したたかで表向き、戦火から守るため街のひとびとを匿うが、実際は地下で武器を作らせて、相当な金を稼いでゆく。あるとき、クロがナチス将校の愛人になっている女優ナタリア(この時代、生きていくためにナチス侵攻下の国では、愛人稼業をせねばならない女性が多かった)に恋しマルコを連れて舞台に押しかけ、その場で彼女をさらう。しかしクロがナタリアと結婚式を執り行っている間、ナタリアとマルコは心を通い合わせていく。
この3人の数奇な運命と、ユーゴスラヴィア50年の悲劇的な歴史をからめて映画は展開していきます。ストーリー展開的に悲劇ではあるのですが、コメディ要素がちりばめられ、また映画を通してずっと響くジプシーバンドも非常に印象的です。
この映画で良いなと思うのは、被害者と加害者をくっきり分けないところです。割と日本やアメリカの戦争映画というと被害者はだいたい市民でどこまでも悲惨で、善人無垢にかかれます。ところが、この映画の市民はタフで、したたかで、かつよく笑います。
戦争映画を『戦争をしてはならない」というメッセージに集約すると、「戦火の犠牲になったかわいそうなひとたち」という括りでしか見えなくなってしまうと思うのです。つまり個々人がぼやけてしまうという・・・
けれどもこの映画はいろいろな視点から(歴史、音楽、人物造形…)楽しめ、それゆえに登場人物の個性が鮮やかに光るのですね。
あ、あと「アンダーグラウンド」という名の通り、人々は地下生活を何年もするので、自粛生活をおくる皆様の参考になるのでは?(え、ならない?)