Gifted
何故かは分からないけれど、昔から子供が主人公の映画が好きだ。ピーターパンの子どもたちの様に、あるいはホテルニューハンプシャーのジョンの様に、いつまでも私の心は大人になることを拒んでいるからなのかもしれない。
この映画の最大の魅力は、7歳の天才少女「メアリー」に詰まっている。
非凡なる数学の才能を生まれ持ったメアリーは、同年代の子らとつるむことを疎み、「年相応」に振る舞うことを拒む。
でもその一方で、大人には失われてしまった、ひたむきさ、素直さも少女の中には生きている。
年下の子を虐めるガキ大将にパンチをお見舞い。
クールなものはクールだといい、嫌なものは嫌だという。そこに他人の価値観は影響しない。
彼女の世界は、片目の猫のフレッドと叔父のフランクと、お隣さんのロバータくらい。とても狭くて、愛に溢れている。
でも数学を愛する彼女の頭の中の世界は、無限で、凡人の理解を逸する。
彼女の才能を巡り、彼女の育て方、生き方を巡り、対立する大人たち。その真ん中で、華奢なメアリーの身体と心は苦しみ、傷ついていく。
家族の愛は盲目で、答えがなくて、だからたまに残酷な形を描いてしまう。彼女の才能を伸ばしてやりたいと思うのも、普通の子として育てたいと思うのも、愛だ。
でも、愛は偶に、人を簡単に痛めて、切り刻んで、叩きのめしてしまう。メアリーのお母さんも、周囲の盲目的な愛に耐えられなかったのかもしれない。
最後にひとつ。
この映画を見た人はきっと、メアリーを演じるマッケンナ・グレイスに恋をしてしまう。
まだ少女とは思えない妖艶さ、ふてぶてしさ、強さ、聡明さを備えている。
ふわふわなブロンドヘアは天使のおやつみたいなきらきらを放ちながら、彼女の小さくてつるんとした綺麗な顔を覆っている。
信じられないくらいふさふさの睫毛は、あめ玉みたいなまん丸の瞳を綺麗に縁取る。
細くて折れてしまいそうな、真っ白な二本の足は一見頼りなく、でもしっかり地面を踏みしめている。
彼女が偶に口の端に浮かべるニヒルな微笑みは、どこかハードボイルドで、きゅんとしてしまう。
とても今後が楽しみな役者である。