How Green Was My Valley

今では遠く失われてしまった古き良き家族の暖かみが映画を通して伝わってくる。

ウェールズの炭鉱町の大家族に生まれた少年ヒュー。肝っ玉母ちゃんと不器用ながら愛情深い父親、歳の離れた働き者の兄達に囲まれてすくすくと育っていく。

家族の中で唯一学校に行く事になったヒューには、家族の他の男達とは違う選択もあった。でも彼は、父さんや兄さん達の様に、炭鉱夫として働くことを選ぶ。

幼いときから父や兄の大きな背中を見て育ったヒューには、炭鉱夫になるという事が “一人前の男になる” という事に繋がっていたのかもしれない。

お父さんはヒューに自分とは違う、安定していて安全で輝かしいキャリアを追い求めて欲しいと思っていたのだろう。
でも最後、自分の人生を捧げた炭鉱が自分自身の命を奪った時に、坑道を踏み締めて、顔を煤だらけにしながら、父を探しに来たヒューの腕に抱かれながら命を引き取った時。
彼はきっと父親としての幸せを噛みしめていたと思う。

炭鉱に赴く男達の力強く朗らかな歌い声、各々の家からもくもくと上る黒煙。
広大なウェールズの風景と共に強くノスタルジアを誘う、美しい映画だ。