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NPO法人の予実管理の課題: 使命達成と法的要件への対応

おはようございます、いつきです。

前回は中小企業向けの予実管理ツール導入に焦点を当てましたが、今回はNPO法人に特化して、その独自の経営モデルと予実管理について掘り下げていきます。NPO法人は、営利企業とは異なる独自の特徴があり、その経営の側面もまた異なります。

NPO法人と株式会社の違い

NPO法人と株式会社は、営利性の有無、資金調達と配分、法的・規制上の要件の面で大きな違いがあります。

  • 営利性の有無: NPOはビジネスの側面ではなく、社会的な効果や使命達成度に焦点を当てます。利益が出なくても社会性が高い事業を継続する場合もあります。

  • 資金調達と配分: NPOは通常の事業収入以外に、寄付、補助金、会費など非営利的な手段を利用します。経営モニタリングでは、これらの資金がNPOの使命達成に効果的に使われているかが重視されます。

  • 法的・規制上の要件: NPOは非営利法人法に基づいて設立され、法的な要件があります。法的なコンプライアンスや資金の透明性などが非常に重要です。

NPO法人の予実管理のポイント

NPO法人の経営モニタリングにおいては、特に以下のポイントが重要です。

社会的効果の追求と予実管理の重要性

NPO法人においては、収益性だけでなく、社会的な効果や使命の達成度にフォーカスすることが求められます。予実管理はこれらの目標に向けた効果的な資金使いを支援する重要な手段となります。

予実管理が単に損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)に留まるのではなく、事業性を総合的に評価することも重要です。一方でNPOも組織を運営する法人形態であり、組織が持続可能な状態を維持することも重要です。

経営モニタリングで難しいのは、そもそも直接的かつ短期的に効果の見えない社会的な課題の数的変化をどう経営モニタリングに反映させるのか。
たとえば、震災の復興支援では、多くのNPOや企業、個人が関わります。その中で、自分たちがおこなっていることがどう復興支援につながるのか、そもそも復興支援のゴールでさえ決めることが難しいです。

法的要件への準拠に関する検証と課題

認定NPO法人は特定の財務数値のモニタリングが求められます。
その中で、例えば「70%基準」と呼ばれる指標があり、NPO法人がその年に得た寄付収入のうち、公益的・社会的な活動に直接かかわる事業に充てる割合が70%以上である必要があります。この基準は、NPO法人が設立の趣旨に基づいて使命達成に資する活動に資金を適切に配分することを促進するための規定です。

しかし、NPO法人会計と行政報告の基準が異なることなど未整備なケースもあり、これが混迷を極めています。
クレジットカードで寄付を受けた場合の収益認識においても、NPO法人会計は寄付者が申込をした日を基準とします。一方で、認定NPO法人制度の要件を満たすためのチェックでは、クレジットカード会社から法人への入金があった日を判定基準とします。

認定NPO法人制度の要件を満たすチェックの例)
実績判定期間内の各事業年度中の寄附金の額の総額が3,000円以上である寄附者の数の合計数が年平均100人以上であること。

https://www.npo-homepage.go.jp/qa/ninteiseido/nintei-hantei-zettai#Q3-4-1

このような厳格な基準に対応するためには、1ヵ月程度のズレで要件を満たせないような状況を作らないよう、目標数値の設定が重要です。認定NPO法人としての課題に正面から取り組み、制度要件への的確な対応が求められます。

費用按分における課題

NPO法人において、資金調達の手段として助成金が重要な位置を占めていますが、その報告には費用按分の課題が存在します。近年、助成金の不正利用が増加しているため、正確な報告が求められるようになっています。

例えば、ある担当者が3つの助成金事業に携わっている場合、それぞれの従事時間を正確に報告する必要があります。担当者は仕事においてパソコンや会社の共用リソースを使用することが一般的ですが、これらも助成金事業で利用しているため、報告可能な費用に該当します。ただし、費用按分を細かく行いすぎると、現場や経理の工数が増加し、複雑な按分がオペレーションミスを引き起こす可能性が高まります。

費用配賦は基本的に多段になり、助成金という単位まで発生します。管理部門が特定の事業の助成金報告を支援する場合、管理部門の人件費が事業の人件費に、さらには助成金ごとの人件費に分配されるといった複雑な流れが発生します。

管理費用があがることで実際事業活動に使えるはずだった費用が使えずに管理費用に泣く泣く充てないといけないケースも出てくるのが苦しいところです。

社会的な使命の達成に向けた予実管理の重要性

今回の解説では、NPO法人の経営モデルと予実管理に焦点を当て、その中で社会的な効果や使命の達成度を確認する重要性を紹介しました。営利企業との異なる特徴を持つNPO法人においても、予実管理が組織の透明性や効果的な運営に欠かせません。

特に、社会的効果の追求と予実管理が密接に関連しており、計画的な資金の使途やプロジェクトの進捗を正確に把握することが求められます。認定NPO法人制度や費用按分における課題もある中で、正確な報告と経営モニタリングが持続可能な発展への道を切り拓く鍵になります。

これからもNPO法人の予実管理の難しさや解決策に焦点を当て、信頼性のある組織として社会的な使命を果たすためのアプローチを発信していきます。


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