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負債を相続したら?:相続税の債務控除と、医療費控除での取扱い
はじめに
相続では現預金、不動産、株式などのプラスの財産だけではなく、借金や未払金などマイナスの財産(負債、債務)を引き継ぐこともあります。
今回は、相続税の債務控除と、確定申告・準確定申告での医療費控除での取扱いについて解説します。トータルで考えると分かりにくくなりますが、文中のフローチャートも参考に取りこぼしのないように整理してみましょう。
本文
1.相続税の債務控除とは
相続税の債務控除は、被相続人(故人)が残した債務や未払金を、相続する財産の総額から控除することができる仕組みです。相続税を計算する際の課税対象額が減少し、納税額も軽減されることになります。
2.債務控除の対象となるもの
債務控除の対象となる主な項目は以下の通りです。
・借入金(ローンの残高や未払利息)
・公租公課(所得税、住民税、固定資産税など)
・未払医療費
・公共料金の未払金
・賃貸不動産の預かり敷金
・事業関連の未払金(個人事業主の場合)
ただし、保証債務は原則として控除対象外であり、墓地や仏壇など非課税財産に関する未払金も控除対象となりません。また、預かり敷金や住宅ローン、事業上の借入金など、プラスの財産とは切り離せないものもあります。
3.葬式費用の控除
葬式費用も相続税の計算上、遺産総額から控除することが可能です。ただし、控除できる項目と控除できない項目があります。
控除可能な項目:
・通夜・告別式の費用
・火葬料、埋葬料、納骨料
・お布施や戒名料
控除不可能な項目:
・香典返しの費用
・墓石や墓地の購入費用
・法要(初七日、四十九日など)の費用
4.医療費控除の適用関係
被相続人の医療費に関する控除は、支払いのタイミングや支払者によって適用が異なります。以下のフローチャートをご覧ください。
![](https://assets.st-note.com/img/1724683255167-qYG9hKbHpu.png?width=1200)
詳細は以下のとおりです。
a) 準確定申告での医療費控除
被相続人が生前に支払った医療費は、準確定申告(亡くなった方の最後の確定申告)で医療費控除の対象となります。ただし、死亡した日までに被相続人が負担したものに限ります。
b) 相続税申告での債務控除
死亡時点で未払いの医療費は、相続税申告において債務控除として扱われます。
c) 同一生計の親族が支払った場合
被相続人と同一生計だった親族が医療費を負担していた場合、その親族の確定申告で医療費控除が可能です。
d) 別生計の親族が支払った場合
控除を受けることはできません。
5.医療費控除と債務控除の相違点
医療費控除と債務控除では以下のような違いがあります:
債務控除:相続税を軽減するための制度。下限や上限は設定されていません。亡くなった時点での未払のもの全般が対象となり、医療費も含まれます。
医療費控除:所得税を軽減するための制度。10万円を超える部分のみが対象となります。
債務控除の対象であっても医療費控除の対象外となるものもあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1724685963949-nQahNo5Dbu.png?width=1200)
6.相続税の債務控除と医療費控除の関係
相続税の債務控除として認められた医療費は、所得税の医療費控除として再度適用することはできません。これは、同一の支出に対する二重控除を防ぐためです。
・相続税申告でどの医療費が債務控除を受けたのか確認しましょう。控除されていない医療費があれば、所得税の医療費控除として申告できる可能性があります。
・医療費を支払ったのが相続人で、かつ被相続人と生計を一にしていた場合、その医療費は相続人の確定申告で医療費控除を適用できる可能性があります。
まとめ
相続税の債務控除は、被相続人の債務や未払金を遺産総額から控除できる
葬式費用の一部も控除の対象
医療費控除は支払いのタイミングや支払者によって取扱いが異なる(フローチャート参照)
被相続人の生前の支払いは準確定申告や親族の確定申告で、死後の支払いは相続税の債務控除で処理
相続税の債務控除で認められた医療費は、所得税の医療費控除では再度控除できない
相続税申告で債務控除の適用を受けなかった医療費は、相続人の確定申告で医療費控除の対象となる可能性も
おわりに
債務控除の規定は「被相続人の債務で、相続開始の際、現に存するもの」となっていて細かい内容については触れられていません。一方の医療費控除の対象となる医療費については、所得税法上の規定はそれほど限定的ではありませんが、医療費控除について書かれた分厚い実務書が何冊も出版されています。
非常に分かりにくく領収書類も膨大な量になりがちな医療費関係ですが、何が誰の控除の対象となるのかについても丁寧に整理して、取りこぼしのないように注意しましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます!