雨風の激しいバトル
記しておこうと思ったけど、どう書いたらいいかわからなくて、数日経った。
社会の会社という箱の中で働いている人たちは、のんきそうだね、と言われた台風前日。そんなことない、そんなことない。確かに、情報は少ないだろう。まだ雨も降っていないのだから。しかし、それが金曜日。停電したらどうするのか、その大量の常温がきかない食べ物たち、と他人の買い物籠をチラ見した。
養生テープさえ知らない若者が、なんて読むんですかー。ってのんき。
窓ガラスにビーッと貼り付ける。
避難するときに持っていかれる荷物は限られている。つまり、それ以外の部屋の中のものは、必要ないもの、と言われてドキッとしたのは内緒。部屋を見渡す。いらないものだらけの中で生活しているのか。
避難所の体育館は、すでに3分の2埋まっていた。埃っぽいが壁際の人が行き来しない場所をちょいと空けてもらった。どんなひとたちが避難してきているのかを眺め、ふたつ折の携帯ひとつで友人らから情報を得た。とりあえず身の危険はなさそうで、耳を澄ませば、雨風の激しいバトル。避難したのは初めてだったけど、経験してみて本当によかったと思う。空を知らないわたしたち。樹のざわめきもまたBGM。
外ではどんなおばけたちがパーティーしているのだろうかと想像してみたり。
手の中で青く光るはショートメールの知らせ。電池は3日もつくらい消費しない携帯。スマフォンから情報を得る周りの人たちの声に集中したり。地域に住んでいるであろうこの人たちと繋がっているようで温い。翼いっぱいひろげて飛ぶ鳥たちもちゃんと避難できただろうか。目を瞑り黙想する。
落ち着け、落ち着け、と無になる時間を幾度ともった。
驚異、猛威などという言葉に震え、鼓動の早さに心折れそうになりながらも、祈った。どうか、災害が起こりませんように。どうか、どうか、どうか、どうか。。。祈った。不安な夜を過ごすひとりひとりと寄り添って励ましてください。ああ、かみさまー。
祈りは届かなかったのだろうか。
避難した、と言えば、大変だったね、と返されることば。なぜ?被災した、とは言っていない。避難は大変なのだろうか。避難するという選択肢は、最後の手段という枠の中なのだろうか。
いつでも避難できるように、部屋の不要なものを片付けよう。
100年に1度と言われていたけど、温暖化はすすんでいる。来年はもっと大きいのがくるかもしれない。今年だってまたうまれるかもしれない。被災しなかったからよかった、ではないのに、なんでなんだ。なんでなんだ。
・・・
ダンボールで覆われた窓。その小さな窓からみた雲間の満月。静まりの中、今日本で起きていることを祈った。震えながら祈った。訴えつつも諦めずに、祈り続ける。