見出し画像

Revolver - The Beatles にまつわる話

ビートルズのアルバムそれぞれについて、それにまつわる話を書いていこうというテキストのシリーズです。


Revolverにまつわる話

Revolverはおそらく、ビートルズのオリジナル・アルバムで人気投票をしたら1位になる有力候補だと思うくらい人気のあるアルバムです。

実に先進的で、想像するに当時リアルタイムで聴いてた人はそうとうテンションが上がったか、逆にとまどってもうついていけないと思ったか、どっちかだったりして。

新しい録音方法がふんだんに取り入れられていることは、しろうとの私でもわかります。声をレスリー・スピーカーに通すとか、ADT(=Artificial Double Tracking・人工ダブルトラック生成システム)開発とか、テープの逆回転操作とか、ちょっとやりすぎなくらい色々やっています。

特にジョン・レノンはこれらの新しい録音方法を使いたくて仕方なかったみたい。ADTは彼が2回歌うのめんどいから何とかならんかとリクエストして開発されたらしいですよ。

スタジオで色んな機材や技術を使って録音したアルバムでありながら、案外しろうとバンドでカバーとかコピー演奏をするのに向いてる曲も多くて、割とライブでもやってるバンドをよく見ます。

個別の曲にまつわる話

Taxman

ジョージ・ハリスンの曲が1曲目になってます。史上初。

ものすごいカッコいいロックなんですが、ポール・マッカートニーの演奏面での貢献がすごいです。彼はジョージの曲で鬼演奏を見せるんです。これ、ビートルズのあるある。

本業のベースも、いったいどうやったらこんなフレーズを弾こうと思い立つのかっていうくらい奇抜ですさまじいプレイですし、間奏のギターの暴れっぷりと怪しいフレーズはマッカートニーならでは。

重税を課す政治への不満みたいな歌詞なんですが、案外ここにネタが豊富。座ったら椅子に課税、寒かったら暖房に課税、歩いたら足に課税なんてのはケッサクです。

目の上の硬貨にも課税ってくだりは、イギリスの習慣で亡くなった人のまぶたに硬貨を置く(うっかり目が開いちゃわないように)ってのがあって、人の死に際にまで課税しかねないよっていうブラック・ジョークですって。

Eleanor Rigby

羽佐間健二で有名な曲ですが、ビートルズのメンバーが全く楽器を演奏してないという史上初の曲です。初めて聴いた時は、まあいい曲だねくらいにしか思いませんでしたけど、映画のYellow Submarineの映像を見てしびれました。

I'm Only Sleeping

楽曲としてすごい好きなんですけど、こういうテキストでまつわる話として語るべきはテープの逆回転操作。当時としてはビートルズにとっても初めての試みだったはずで、それにしちゃあ完成度が高すぎると思うんですけど。

シングルのRainでもエンディングでボーカルを逆回転操作した呪文みたいなのを入れてますが、この間奏のギターはすごい。フレーズとして完成してるし、逆回転の効果が実によく出ています。最高です。

昔、カセットテープを記録媒体にしたMTR(多重録音機)を使ってた時、ビートルズごっこと称して逆回転遊びをやったことがあります。多分、カセットMTR使ったことがある人なら誰でもやったことがある遊び。

カセットMTRに馴染みがない人のために一応説明しときます。カセットMTRっていうのは、表面・裏面(AB面)があるカセットテープを使って4トラックの多重録音を可能にした、考えた人は天才通り越して変態みたいな往年の機材です。

A面の右チャンネル 第1トラック
A面の左チャンネル 第2トラック
B面の右チャンネル 第3トラック
B面の左チャンネル 第4トラック

本来B面はデッキにカセットを裏返してセットして、テープの走行方向を逆にして使うものですが、カセットMTRではテープのB面の左右チャンネルの記録エリアもA面側のテープ走行方向で使って、AB面 ✕ 右左で4トラックの録音再生ということができちゃう機材です。ね、変態的でしょ。

ということは、このトラック振り分けでいうと第3トラックと第4トラックに何か録音して、そのテープのB面を普通のカセットデッキにセットして再生すると、逆回転再生になるっていう理屈。

わかった?わかんない人は、アナログ機構なので「逆再生をカセットを裏返すだけでできる」とだけ覚えといてくださいな。

ただ、これを曲の中で使うとなると大変。まず、鳴らしたいフレーズを録音してそれを逆再生、それをよく聴いて逆再生状態のものを弾けるように練習しないといけません。

弾けるようになったらそれを録音して、さらにその音源を他のパートの入ってるトラックのやつにミックスしないといけなくって、アナログだからうまいタイミングで再生ボタンを押すみたいな手作業でシンクロさせる・・・書いてて身の毛がよだつような工程が必要です。

しろうとのご家庭で遊ぶビートルズごっこと一緒にしたら失礼ですが、Revolverを録ったエンジニアは当時の機材ですごいことを成し遂げたもんです。えらい。

Love You To

インド音楽ってよく考えたらビートルズのやつ以外にはちゃんと聴いたことないです。そういう人も多いと思いますが、何にせよジョージはインド音楽の伝道師として、インド音楽業界(そんな業界あるのか知りませんが)に多大な貢献をしたことは間違いなし。

民族音楽的なフレーズって独特じゃないですか。ギターでこういうフレーズのスケールを何となく覚えてちょろっと演奏してみたりすると面白いと思います。ビートルズで覚えるインドスケールみたいな。

ついでに、日本人だったら演歌っぽいスケールや沖縄スケールも覚えとくと良き。

Here, There And Everywhere

名曲すぎて何となく大作感を感じちゃう曲ですけど、演奏的にはとてもシンプルで、普通のロックバンド編成で演奏、凝ったエフェクトとかも使ってなくて楽曲で勝負みたいな感じ。

それから、ビートルズのコーラスの素晴らしさよ。クィーンとかの完璧で重厚なコーラスとはまた違った凄みがあります。

She Said She Said

これもバンドでコピーとかカバーで演奏しやすい曲です。実際私も演奏したことがありますが、しろうとバンドにとってハードルが高いのがドラムかなあ。けっこう上手な人が叩いても、なかなか気持ちよくならないです。

And Your Bird Can Sing

実にノリの良いロックなんですが、このノリを出してるのはベースです。もしベースを消した状態で聞けるっていう加工ができる人は試しにベースなしバージョンを聞いてみてください。ペッタン・ペッタンみたいなノリもへったくれもない感じになっちゃうから。

よく歪んだツイン・リード・ギターもこの曲の特徴のひとつです。ちょっと音数多いんで大変かもですけどプレイ自体は難しいことはないので、誰かお友達のギターの人と2人で遊んでみちゃあどうでしょうか。

学生の頃のバンドで演奏したことがあります。When your prize possession~からのところ、けっこう細かいフレーズを弾きながら歌ったんですが、そんなに難しかった覚えがないです。見た目より簡単だと思います。

オブリガード弾きながら歌うっていうのは毎度苦労するところなんですが、この曲に関してはノリと勢いでイケちゃいました。

I Want To Tell You

ジョージによる、モロのジョージらしい曲です。もうこの時期になると、タイプこそ違えとレノンやマッカートニーと何ら遜色のないコンポーザーになってると思います。

この曲の雰囲気とかリズムが大好きで、パクったという言い方だとアレなんでインスパイアされたと言っておきますが、ずいぶん前に作って今でも歌ってる曲があります。直近のライブでも演奏したんですが、ここまで長いこと歌ってる曲はないくらい気に入ってる曲です。

恥ずかしいけどちょっとだけ公開します。あんまり面影ないけど、これのネタ元はI Want To Tell Youです。音痴なのは勘弁な!

Got To Get You Into My Life

トリオバンドでカバーしてライブで演奏したことがあります。ブラスがふんだんに入ったロックなんで、トリオじゃ感じが出ないことは確かですが、声でかい人が歌えば何とかなります。何よりギターがカッコよすぎてどうしても弾きたかったので、無理を承知で強行しました。

Tomorrow Never Knows

Revolver録る時、最初にこの曲から始めたんだそうです。もう、こういう感じで行こうっていうのが特にレノンの中であったんじゃないかと思われます。

オルガン用のレスリー・スピーカーからボーカルを出す、ものすごいたくさんのテープ再生機を用意して同時に鳴らす、テープの逆回転操作とか、よくぞ曲として仕上げたと思えるほど凝った曲になってます。

今のデジタル機器と違って全てが手作業みたいな話ですから、エンジニアはすさまじい仕事をやったものです。

かもめの鳴き声はギターの音を元に加工して作ったらしいんですが、いったいどうやって?加工する作業とかもめをつかまえてくる作業、どっちが簡単かっていったらどちらとも言えないかもしれません。

エンジニアの録音技術もすごいんですが、演奏面ではドラムのこの重さは何なんだっていう。なんて気持ちのいいドラムなんでしょう。

他のアルバムにまつわる話は目次ページから・・・

いいなと思ったら応援しよう!