カバーは楽し ロックのたまらんカバー曲15選
ロック、ポップスのカバー曲というのは落語で同じ演目を色んな噺家が演るのと似て、それぞれに味わいがあったり意外性があったりで、とても楽しいものです。
思えば、中学生の頃にビートルズからロックに興味を持ち、そのビートルズのカバー曲を聴くことで別のアーティストを知ってファンになるというパターンで聴く音楽の幅を拡げていったものです。
今回は、色んな意味で”刺さった”カバー曲を振り返ってみたいと思います。
キンクスの「のっぽのサリー」
原曲は「顔がデカイからや」の持ちネタで有名なリトル・リチャードですが、ビートルズのポール・マッカートニーが歌うバージョンが有名です。でも、私は断然こっちのカバーが好き。原曲もビートルズ版も非常にエネルギッシュでハイテンションなのに対して、キンクス版のこのカッタルそうな感じがたまらんのです。
コズミック・インベンションの「コズミック・サーフィン」
原曲は言わずと知れたYMOですが、コズミック・インベンション版を聴いた人全員の共通する第一声は「歌っちゃった!」です。歌っちゃってるんですねえ。
コズミック・インベンションはシンセサイザー会社の社長が中学生の娘に組ませたというバンドで、ヴォーカルの森岡みまはドラムを叩きながら歌ってました。生ドラム+親父さんの会社製のシンセタムというセットでピョコンピョコン鳴らしつつ笑顔で歌う姿がかわいらしく、オリジナル曲はいい曲が多いんです。
ストーンズの「彼氏になりたい」
これはカバーというより楽曲提供で、レノン=マッカートニーが当時オリジナル曲を演っていなかったローリング・ストーンズにプレゼントした曲です。しかしビートルズもほとんど同時期にこの曲をリリースして、ややこしいことに。
ビートルズ版はリンゴ・スターの持ち歌になっていて武道館ライブのバージョンが聴いた中ではかなりイケてるんですが、スタジオ版はものすごいハチャメチャ演奏。対してストーンズ版の方は、ビートルズよりもずっと曲の良さを引き出していると思います。
ジャムの「スロウ・ダウン」
原曲はアメリカの黒人R&Bシンガーのラリー・ウィリアムズで、若かりし頃のジョン・レノンが憧れていた存在と思われます。この曲はビートルズ版が有名で、割と原曲に忠実なんですが、ジャム版の方が数段カッコいいカバーです。
(多分)リッケンバッカー330のワイルドなカッティングにしびれますし、パンク丸出しのヴォーカルもハマっていてこれぞ名カバーという出来栄えです。
ティファニーの「アイ・ソー・ヒム・スタンディング・ゼア」
ビートルズ関連が多くなりますね。私にとってのロックの出発点なので仕方ないんです。ビートルズの原曲をちょっと厳しい(笑)感じでカバーしたのが当時バカ売れしていたアイドル歌手のティファニーです。中学生か高校生の頃にシングルCDで買って聴いたんですが、こりゃひどいと思いました。
今あらためて聴いてみると、そこまでひどいもんじゃありませんね。80年代らしいサウンドがけっこう心地よいです。これをクソダサいと切り捨てるのはちょっと勿体なくて、良いところをカジって楽しむには丁度いいアンバイです。
少年ナイフの「レイン」
もうひとつビートルズつながりで、「レイン」の少年ナイフ版です。日本でメジャーデビューする前のアルバムにシレっと収録されています。原曲はリンゴ・スターのスーパードラミングや重厚なアレンジやコーラスワークを楽しめる非常に濃い曲なんですが、少年ナイフ版のこの軽薄さ(笑)。
このかわいらしい「レイン」もまたいいものです。ビートルズがテープの逆回転で作った怪しい呪文みたいな部分は、逆回転なんてやらずにそのまま雰囲気で歌うという荒業で再現しており、それがまたかわいらしいです。
ホリーズの「恋をするなら」
もうひとつビートルズの曲。ジョージ・ハリスンが作曲家としての素晴らしい能力をついに発揮という曲なんですが、彼自身はこのホリーズ版はあまり評価していないようです。イントロとか、モッドな感じでいいと思うんですけどね。歌はほとんど原曲通りです。もうちょっとモッドに寄せてアレンジすればより良かったのにとは思います。
アンスラックスの「パイプライン」
原曲はもはや日本人と言ってもいいくらいのベンチャーズの有名曲ですが、アンスラックスの変な曲大全みたいなアルバム「アタック・オブ・ザ・キラー・ビーズ」に収録されています。アホですねえ。こういうアホさはアンスラックスの懐の深さと解釈しています。
ジューダス・プリーストの「ジョニー・B・グッド」
原曲は言わずと知れたチャック・ベリー御大ですが、まさかのメタル・ゴッドによるカバー。イントロのハイトーン・シャウトは何百回聴いても腹がよしれるほど笑ってしまいます。御大もきっと苦笑いでしょう。
私はこれが収録された「ラム・イット・ダウン」はジューダスの中でも好きなアルバムなんですが、大のジューダス&ハルフォードのファンの友人にそのことを伝えたら微妙な顔をされました。嫌いなわけじゃないけど・・・みたいな。
Rollyの「あなたに夢中」
原曲はキャンディーズです。キャンディーズの曲はアレンジがちょっとロック寄りなので、ロックバンド形式でカバーするのにやりやすい曲が多いと感じています。それを完璧な形で、しかもグラム・ロックにアレンジした超名カバーです。
それにしてもRollyという人は、すかんちがガンガンいってた頃も素晴らしいギタリストでありヴォーカリストだったとは思いますが、それ以来ずっとバージョンアップが続いています。ギターも歌もどんどん良くなっています。リアルタイムでレジェンドを見ている気分です。
ラモーンズの「スパイダーマン」
原曲は言うまでもありませんが、テレビマンガのスパイダーマンのテーマソングです。誰が歌ってるのがオリジナルなのかは知りません。ラモーンズは先に出てきたアンスラックスに似た匂いを感じます。いい感じでアホをできて、そこに無理や破綻がないところが。
「スパイダーマン・ホームカミング」はついこないだアマゾンプライムビデオで見ましたが、監督なのか音楽担当なのか知りませんが、ラモーンズを推してる人がいるようで、うまいこと映画にハマっています。その部分も含めて、サム・ライミの映画よりも好きです。
スキッド・ロウの「サイコ・セラピー」
ラモーンズつながりで、そのラモーンズの曲をいい感じでカバーしたのが90年代くらいに超流行ったスキッド・ロウです。当時は本当に人気でしたし、音楽ジャンルこそちょっと違えど、ラモーンズやアンスラックスに感じていた楽しさと似たところが刺さったんです。
このカバーは、カバー集の「B-SIDE OURSELVES 」というアルバムに入っていました。他にはキッスとかジミヘンとかの曲が入ってました。余談ですが、私はこのアルバムをなぜかカセットで買いました。なぜCDではなくカセットで買ったのか、全く思い出せません。別にカセットの方が特別安かったということもなかったんですが。
奥田民生の「うめぼし」
原曲はスピッツで、アコースティックギターでしっとり歌う感じの曲なんですが、奥田民生版はヘヴィーなロックに仕上がっています。楽曲の力も大きいんですが、民生版のヘヴィーなオーバードライブ・ギターと重厚なコーラス、完璧なカッコよさは完全に原曲を凌駕しています。こういうのを名カバーって言うんです。
ちなみに奥田民生による名カバーとしては真心ブラザーズの「空にまい上がれ」もあります。
クーラ・シェイカーの「ハッシュ」
あくまで今日の気分ではという話ですが、私の中で世界ナンバーワンのカバーはこれです。ディープ・パープルの曲で、原曲からして大層カッチョよろしい曲なんですが、それを軽く超えてきてます。なんせ世界一なんで。
※追記:コメントで教えてもらえました。50’sから活動のジョー・サウスという人がオリジナルなのですね。
クーラ・シェイカーというバンドはセンスの塊集団だと思います。中心人物がイギリスのロックの人にありがちな東洋かぶれになってしまって、そういう曲も多いんですが、東洋かぶれ曲もセンスの良さで良質なポップスとして聴けちゃいます。並の人がかぶれちゃうとただダルいだけになりがちなところを、楽しく聴けるくらいに仕上げちゃうセンス、それを優れた原曲につぎ込むとこういう世界一のカバーが出来上がるんです。
番外編:ビリー・プレストンの「イズント・イット・ア・ピティー」
これはカバーっていうより、ジョージ・ハリスンの追悼コンサートでの演奏なんで番外編とします。それにしても素晴らしい演奏。音楽を聴いてリアルに涙を流すというのは人生の中でそこまで多くはないと思いますが、こればっかりはダメです。反則ですよ。
こうして上げていくと本当にキリがないので、とりあえず今回はここで締めます。
冒頭で書いた通り、カバー曲というのは知らなかったアーティストを知るきっかけにもなりますし、原曲をはるかに超えていってしまう場合も多く、色んな発見を連れてきてくれがちな存在です。
クーラ・シェイカーの「ハッシュ」みたいな凄まじい名カバー曲を聴くのはもちろん最高なんですが、思わずズッコけるような迷カバーに巡り会えた時もそれはそれで楽しいものです。
追記:性懲りもなく、もう1本カバー曲のテキストを投稿しました。