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ビートルズ新曲について思うところ
ビートルズの新曲がリリースされるってよ!というニュースが出てから10日ほど経ちました。ポール・マッカートニーがそう言ってるんだから多分本当に出るでしょうし、こりゃビッグニュースです。ありがたがりましょう。
それについて、いちビートルズファンの私の思うところっていうテキストです。やたら長いので、暇で仕方ない人だけ読んでね。
思い出されるアンソロジーの衝撃
このニュースを聞いて真っ先に思い出すのが、私が大学生だった頃に突如降ってわいたように現れたビートルズ・アンソロジー・プロジェクトの時に発表された2曲です。「Free as a Bird」と「Real Love」。
ジョン・レノンの遺したカセットテープの音源から彼の声を取り出して、3人の存命メンバーが伴奏とコーラスをつけたということでしたが、正直なところそんなに期待してなかったんです。
「Real Love」の方は私が中学生の頃ですから80年代後半に公開されたジョン・レノンの映画「Imagine」のサウンド・トラックにギターの弾き語りの音源が収録されてましたから、これに伴奏がつくのか、そう思った程度。
でもって、いよいよアンソロジーのCDが発売されて再生してみたら、ぶったまげました。1曲目に収録されていた「Free as a Bird」、開始1秒で大変なことになってると気付かされました。
冒頭のバンバンピョ~ンの時点で完璧にビートルズでした。こりゃチョイの間で適当に作ったものじゃないぞ、マジじゃないかと思いました。
私は音楽でも映画でも、作品を鑑賞してちょっとだけ感動した場合、ウルっと来て涙が出たりしますが「俺は今猛烈に感動している」という状態に入ると涙は出ないです。その代わり後頭部のあたりがジンジンします。
滅多にジンジンしませんが、「Free as a Bird」を聴いた時はとてもジンジンしました。それどころか、そのジンジンを思い出して今もジンジンしてます。
それだけに今回の「Now and Then」(だろうと予想されてる新曲)にも、とても期待しています。
定期的に燃料投下してくれるビートルズ界隈
ビートルズが解散してからなんとビックリ50年以上経っています。なのに今でも人気があって、なんなら若い人の中で新たにファンになったという人も少なくないと思います。
それはビートルズが良い曲をいっぱい出してるからってことが一番でしょうが、ビートルズ界隈ってサービスが良いっていうか、定期的に面白いものが出てきて、そのたびにちょっとしたビートルズ・ブームが起こってるんですよね。
自分のリアルタイムの体験を思い出してみると、まずはオリジナル・アルバムのCD化。私がビートルズを聴き始めたタイミングとほぼ同時なんですけど、これが実に親切なCD化のやりかただったんです。
ファーストのプリーズ・プリーズ・ミーから最後のレット・イット・ビーまでのオリジナル・アルバムはもちろんなんですが、シングルでしかゲットできない曲をパスト・マスターズの1と2の2枚のCDにまとめてくれたんです。
全曲集めるのが大変だったビートルズの公式曲が、アルバム全部+パスト1+パスト2を買うだけでコンプリートできちゃうという親切さ。
おまけに、ドイツ語版の「抱きしめたい(Komm, Gib Mir Deine Hand)」「シー・ラヴズ・ユー(Sie Liebt Dich)」までゲットできるという至れり尽くせりっぷりと言ったら。
CD化のからしばらくしたら、先に書いたアンソロジー・プロジェクトです。
初期のライブ音源だとか、リリースされなかったアウトテイクだとか、海賊盤で聴かれがちだった音源をまとめてCDでドン!未発表映像もドーン!ついでにごっつい情報量の本も出たよ!っていうものでした。その目玉が「Free as a Bird」「Real Love」の新曲だったわけです。
そう言えばあの時買った巨大な本はどこへ行ったんだろうと思ってたんですが、思い出しました。大学の軽音楽部の倉庫に置いたまま卒業しちゃったんだ。あれから27年、後輩たちが読んでくれてたら本望だけど、普通に考えたら捨てられちゃったかな。
置いたままで思い出したけど、DX7っていうシンセサイザーも置きっぱなしで卒業しちゃったぞ。あれって懐かしのシンセサイザーとして、中古がアマゾンで6万で売られてるじゃないですか!持っとけば良かった!今からでも倉庫に取りに行くか!いや、取りに行ったら確実に不審者として捕まる!
話は逸れましたが、それ以降もデジタル・リマスターで「ビートルズ1」とか「イエロー・サブマリン・ソング・トラックス」が出て、その音のクリアさにビックリさせられたり、「バック・ビート」みたいな自伝的なものとか、「ゲット・バック」みたいなドキュメンタリーものの映画が公開されたりとか、忘れた頃に何か出てくるんですよ。ビートルズ界隈は。
しかも、忘れた頃に出てくるプレゼントのクオリティがどれも高い。ちょっと金儲けしてやろうというところがあんまり見えなくて(あるんでしょうけど)ビートルズの元メンバー自身や、その周りの人が、ものすごい遺産があるからキッチリ仕上げて世に出そうとマジで作ったんだなと思えるんです。
AIという言葉が独り歩き
ニュースの第一報で、「AI技術でジョン・レノンの声を抽出」みたいなフレーズがあったことで、勘違いした人が初音ミクのジョン・レノン(何のこっちゃ)みたいなのを連想しちゃったらしいです。
最近よくYouTubeとかで見かける、クイーンの曲をポール・マッカートニーが歌ったらみたいなのをAIで再現してるやつとか、アレ系のやり方でジョン・レノンのボーカルを作ったと思っちゃった人がいたみたい。
それについてはいつの間にかけっこういい感じのミュージシャンになってたショーン・レノンが、「AI技術でデモテープからクリアに声を抽出したってことだから、誤解なきように」という趣旨で補足してました。
最近AIって流行ってるから、ニュースになる時にもAIという言葉を使っちゃったのがややこしくなった原因です。
要するに今回は、アンソロジーの時と同じようなことをやったんだけど、カセットテープの雑音だらけの音源からキレイに声を抽出する技術が当時よりも進歩してるので、もっと良い感じでイケましたよってことですね。
ジョージ・ハリスン要素はどうしたんだろう
今回の「”新曲”に関する色んなニュースを読んでみて思ったのは、全く「ジョージ・ハリスン」という言葉が出てきてないということです。ジョージ・ハリスン要素はどんな感じで、いったいどうやって入れてるんだろう。それとも全く入ってないのかな。
「Free as a Bird」「Real Love」は世界でもトップクラスのビートルマニアのジェフ・リンのプロデュースのお陰もあって、ジョージ・ハリスンが実に彼らしいギターを弾いてて、それがとても良かった。「Real Love」に至っては、ジョン・レノンの声よりもむしろジョージ・ハリスンのギターの方が存在感あったもの。
さすがに今回はレノン=マッカートニー+リンゴ・スターっていう感じなのかな、きっと。
技術の進歩がレアものをレアじゃなくする
今回の新曲リリースって、音声をクリアにして取り出す技術がすごく進歩したからこそ実現するものだと思います。だって、半端なクオリティなものは出しませんよというのが元メンバーも含むビートルズ界隈だってことはさっき書いた通りですから。ホントに技術の進歩さまさま。
レコーディング技術だけじゃなくて、ビートルズ界隈に限ったことじゃないですけど、インターネットとその高速通信の進歩によって、YouTubeとか動画がものすごい数世の中に出てくるようになりましたし、個人レベルでも情報を簡単に発信できるようになりました。
それによって、貴重でレアな映像を家にいながらにして簡単に見ることができるようになりましたし、超マニアの人が持ってるレアな情報にも触れることができるようになりました。
動画については違法アップロードっぽいやつもはびこってますから微妙なところはありますが、何にせよ50年以上前に解散したバンドについての映像なり情報なりに、簡単にアクセスできるようになりました。これはけっこうすごいことですね。
ビートルズに初めて触れた中学生の頃なんかは、当時ですら解散から15年以上経ったバンドについての情報を得ることは結構大変でした。レコードやCDについてる解説を読み漁ったり、本を探して買ったり。
映像についても、ビデオやレーザーディスクが出てる映画とか、稀に放送されるビートルズのテレビを観る程度で、動くビートルズに触れる機会は少なかったです。
特にレット・イット・ビーには苦労しました。なんか権利関係とか色々あったみたいで(?)、なかなか観れなかったんですよ、当時は。しっかり見たのはオッサンになってからです。
そう言えば、当時ビートルズのファンクラブに入ってました。「ビートルズ・シネ・クラブ」っていう会。けっこう有名なファンクラブだったんじゃないかな。会報みたいな冊子が月イチくらいで送られてきて、たまに写真集みたいな本とか、レアテイクが収録されたカセットテープとかの会員プレゼントもありました。
その時もらった本、一冊だけ手元にあります。こんなのが当時貴重だったんですってば。
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本だと映像だの、必死で探し回っていた当時を懐かしくは思いますが、簡単に色々見聞きできる今を味気ないとは別に思わないです。単純に楽になってありがたいと思うだけです。
というわけで、新曲について思うところとか、それから派生した話はこんなところです。
何にせよ楽しみですが、アンソロジーの時の衝撃の頭ジンジンの経験から、ちょっとハードル上げすぎてる自分がいるので、ちょっと気を静めてその時を待ちたいと思います。