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投手の球の伸びとかキレの正体が解明されつつあるらしいよ

今時のプロ野球投手は、みんな平気で150キロを投げます。それどころか、ロッテの佐々木朗希やオリックスの山下舜平大は、先発投手で長い回を投げるのにストレートの平均球速が155キロとか160キロ近かったりとか、ちょっとありえないことになってます。

この2人に関しては三振をガンガン取るっていうのは意外でもなんでもないですが、そこまで速くなくても奪三振率が高い投手は存在しますし、逆に速いのにバットに当てられちゃう投手も存在します。

こういうのって昔だったら「タマのキレ」とか「伸びがいい」みたいな、実際どんな感じなのかよくわからない言い方で説明されていたんですが、最近では軍事機器の技術転用でボールの回転数とか回転軸の傾きまで追尾・計測できるようになっちゃってるみたいで、佐々木や山下もすごいが、技術の進歩もすごい!

日本のプロ野球では、各投手の各球種の変化量のPitch f/xデータとかはなかなか調べることはできないんですが、メジャーリーグの場合は登板した全投手についてのデータがネットで調べられるようになっています。

一時期それを調べるのに凝っていて、色んな投手のデータを見てこんな表を作って遊んだりしてました。(ちなみにこの表は3年前くらい前に作った表ですから、最新のデータが含まれてません)

こういったデータを見て、表を作ってみて気づいたのは、フォーシームに着目した場合特に、上方向への変化量が投手によってまちまちであるということです。そして案外、超速いわけでもない投手がものすごい変化量を持っていたりするということも。

日米で活躍した岡島秀樹も、上方向への変化量が非常に大きい投手でした。とても伸びの良いストレートを投げていたようです。他には、オリックスで長いこと投げてたブランドン・ディクソンも上方向への変化成分が多いストレートの持ち主だったそうです。

で、私が面白いと思ったのはここからです。

伸びるストレートってことはスピンの回転数が多いんだろうなというところはデータもクソもなく推測できるところですが、もうひとつ大きいのはスピンの向きの傾き具合なんですって。

真っタテに近いスピンだとより伸びるようになり、スピンが傾いていると横変化の成分が混ざって、上への変化がその分小さくなるから、伸びは少なくなると。

タテスピン
斜めスピン

伸びれば伸びるほど良いかどうかは置いといて(とりあえず、伸びる方が打たれにくい傾向は出てるそうです)、真っタテスピンってどうやってかけるんでしょうか。

これは単純な話、リリースの瞬間、腕の振りや指先が真っタテに近い投げ方をすれば、おのずとスピンの真っタテに近くなる、こういう話のようですよ。

そして人間の体っていうのは、腕は胴体の横についており、投げ終わった後は右投手の場合だったら腕は左側に行きますから、ごく普通の人間がごく普通に投げると、スピンは斜めに傾くわけで、一般的な投手はだいたい斜めスピンになってるらしいです。

そこで岡島みたいに、真っタテスピンの球を投げると、伸びる成分が多いということに加えて、球の軌道が独特になり、見慣れてないから当てづらいということらしいです。

じゃあ岡島は他の投手と何が違ったのか、これは非常に印象的なあっち向いてホイ投法に秘密があるんじゃないかと推測しました。推測っていうか、多分正解だと思います。

岡島秀樹

下向いて投げる顔の向きに気を取られがちですけど、こうしてみると腕がほぼ真上から振り下ろされていることがわかります。これによって非常に純粋に近いタテスピンがかかって、よく伸びる球になっているようです。

そういえば、オリックスで投げていた岸田護も空振りを取れるストレートが武器でしたが、投げる時に体を反り返らせるようなダイナミックなフォームでした。あのフォームで腕のタテ振りを作っていたのかもしれません。

タテ振りフォームとの比較対象としてわかりやすいのが、こちらも日米で活躍した岩隈久志の投球フォームです。

岩隈久志

彼の場合は、スリークォーターの中でも横振りに近い腕の使い方で投げていたことがわかります。そして岩隈の投球データを見ると、やっぱり上方向への変化量は非常に小さく、横変化がものすごく大きいんです。ストレートが大きくシュートするという点において、他の投手にはない独特さがあったから活躍できた、と推測されます。

岡島の超タテスピンや、岩隈の横変化、こういう他の投手がなかなか投げられない独特の軌道、これももしかしたら「キレ」の一要素なのかもしれません。

メジャー652セーブのマリアノ・リベラのカットボールはスライダー方向に曲がるのに並みの投手のストレートよりも上への変化量が大きかったそうで、左投手のストレートみたいな軌道だったとのこと。これも独特です。

どうやら「独特の軌道」というのが打たれづらい球になりやすく、そういう球を持っている投手は強いということのようです。

ということは、従来の概念では速いとか、よく曲がるとか、伸びるとか、そういう球が良いとされており、実際それは良いことなんでしょうが、そういう特徴がない球でも他の投手が誰一人投げることができない独特の球であれば、遅くても、曲がりが小さくても、伸びなくても、打たれにくい球になる可能性があるということなのかも!

野球に詳しい人からすると、取るに足らない内容かもしれませんが、野球経験も子供の頃の少年野球以来ない、単なる素人の私でも、こういったことに考えを巡らせて面白がれる、これが現代の野球のデータを読むことの楽しさだと思います。

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