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−深縹− かつて道だったところ

畳縁。
たたみべり。

かつて、ぼくと兄にとって、そこは道だった。


ぼくらは畳の部屋で、ミニカーを走り回らせるのが大好きだった。
ミニカーが通っていいのは、畳縁の上。

畳縁とミニカー1台の幅が、ちょうど同じくらいなのだ。

畳の道には、対面通行の区間と片側交互通行の区間が存在する。
6畳の部屋だと、畳はこんなふうに敷かれているから。

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さらに、ぼくらの道には踏切も存在する。部屋と部屋を仕切る敷居。
敷居を横切るときは、しっかり一時停止。

思い起こせば、次々に蘇ってくる。畳の手触りと微かな香り。ミニカーの車輪がキュルキュル回る音。敷居の踏切を渡るときの振動。


ぼくらにとって、そこは確かに「道」だった。


大人になって、畳縁は畳縁でしかなくなった。いや、畳縁として意識することもなくなってしまったかもしれない。
たくさんのことを学んで、ぼくらが見える世界は広がり、解像度も上がった。
でも、あの頃にしか見えなかった世界も、確実にある。


もうぼくらは、畳に這いつくばってミニカーを走らせることはないだろう。

それでも、ときに目線を低くして、幼い頃の世界を思い出していたい。


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【深縹】こきはなだ
藍染の色。
うちの畳縁はこんな色だった。
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