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−雄黄– 「ほぼUターン」就職してよかった

3月に大学院を修了して、「ほぼUターン」就職しました。

「ほぼUターン」というのは、完全にUではなくて若干JだけどまぁUみたいなもん、ということです。
本当は「完全Uターン」したかったけれど、惜しくもUにはなりきれませんでした。


ところで、ぼくがUターンしようと思った理由は2つあります。

ひとつは、故郷に対して「ヨソモノ」になりたくなかった、ということです。
故郷から地理的・時間的に離れれば離れるほど、故郷と共有できるものは少なくなることを、ぼくは大学時代に痛切に感じました。(詳しくは下記事)

大好きな陸前高田を何度も訪れて、その度に「ヨソモノ」であることに悔しさやもどかしさを覚えた。
そんな気持ちを、将来自分の故郷に対して感じてしまうことがあったら、絶対に嫌だなと思ったのです。

故郷にできるだけ近いところで、嬉しいことも悲しいこともずっと共有していたい。


Uターンした理由のふたつめ。
東大生の多くが東京もしくは大阪などの都市部で就職するので、まぁ1人くらいは地方で就職する人がいても面白いんじゃない?と思ったからです。

地方で育って、幸運にも東大で学ばせてもらった身として、学んだことをなにか地元で還元できれば、とエラそうなことを思ったり思わなかったりしています。


ずっと故郷のことは大好きで、大学時代には常に帰省したいという欲望があったのですが、「ほぼUターン」してからは帰省欲がめっきりなくなりました。

地元の景色によく似た景色を、今住んでいる場所の近くに見つけて、そこに行けば心が満たされるのです。

あんなに故郷のことが好きなはずだったけど、本当は、故郷で見られる景色が好きなだけだったのかもしれません。

そうだとすると、ぼくが今までこだわっていた「故郷」ってなんなんだろう、と思うわけです。

友人たちの多くが地元を離れているから、地元に戻っても以前のような人間関係はない。
ご近所さんも、おじいちゃんやおばあちゃんがひとりふたりと亡くなって、顔見知りが減っていく。
古い建物はなくなって、無機質なチェーン店がポツポツとできている。
そして家族は老いていく。

変わらないのは、山や川の景色。
でもそれは、今住んでいる場所にもほぼ同一のものがある。


故郷って、なんなんでしょう。
ずっと考えています。


でも、「ほぼUターン」していなかったら、ぼくはこの問いに向き合うことはなかったかもしれません。
東京に留まっていたら、知らないうちに故郷を失っていたかもしれない。
「完全Uターン」だったら、故郷の尊さに思いを馳せていなかったかもしれない。

だからぼくは、「ほぼUターン」してよかったなと、今の段階では思っています。

故郷ってなんなのか、答えはないと思うけれど、ずっと考え続けていたいです。
もしかすると、それが、故郷を大切に思う、ということなのかもしれません。



【雄黄】ゆうおう
硫化ヒ素を主成分とする鉱物から作られた顔料の色。
「U」の音にかけて。



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