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−紺碧− 名前も知らない誰かとの約束を果たすためになみえ焼きそばを食べに行った

2011年、あの震災があったとき、ぼくは中学生だった。


震災から数ヶ月後、ぼくらの中学校は、浪江中学校(当時)に宛てて1人ずつメッセージを書いて送った。

遠く離れた地に住む、浪江のことを何も知らないぼくらが書いたメッセージに、なにか価値があったのか、そもそも意味があったのかはわからない。

中学生ながらに、これは偽善なんじゃないか、かえって迷惑なんじゃないかと思ったことを覚えている。


それからさらに数ヶ月後、浪江中学校のみなさんが、ぼくら宛にメッセージを返してくれた。
1人ずつの手書きのメッセージが書いてあって、生徒のみなさんの笑顔の集合写真も貼ってあった。

それを見て、ありがたいような、安心したような気持ちと、まだまだ大変な生活が続いている中でぼくらのことを思ってくれたことに少し申し訳ないような気持ちとが入り混じった。


そのメッセージの中で、なぜか特に印象に残ったものがあった。
「復興したら、なみえ焼きそば食べに来てね〜(^o^)」
(顔文字もほぼ原文ママ)

復興したら、は何年後になるんだろうか。
自分はいつか本当に浪江に行ってなみえ焼きそばを食べるんだろうか。
この顔文字を書いたとき、この子は心から笑顔だったんだろうか。


この一言にぼくはたくさん考えさせられて、10年以上ずっと心の隅に引っかかっていた。

ただ、これを社交辞令のまま終わらせてしまうのはどうしても嫌だった。


そういうわけで、ぼくは名前も知らない浪江の誰かとの約束を果たすために、浪江に行った。

そして念願のなみえ焼きそばを食べた。
あの子は今どこで何をしているんだろう、と思いを馳せながら。

あのとき浪江中学校の生徒だった誰かへ。
なみえ焼きそば、とってもおいしかったよ!
また浪江に行くね。



【紺碧】こんぺき
深い青色。
「浪江」は紺碧の海を思わせるすてきな地名だと思う。



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