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営業マインド&スキルエンパワーメントストラテジー#06 企画の初手を間違えていないか?

「企画」は英語で”plan"、"project"、などいくつか当てはまるものはある。
ビジネス的には「プランニング」と言われることが多いかもしれない。

では、”plan”を日本語に訳すと、どうなるか。
ズバリ「計画」である。
(google翻訳だと「プラン」と出た。やるな、google先生)

つまり、「企画」は「プラン」、とはちょっと違うのだよなぁ、とモヤっとするわけである。
言葉遊びをしているわけではなく、実際に「企画」というのは何だろう、と考えるとき、やはり「名前」からアプローチするのがわかりやすいからである。

さて、この「企画」を訓読みで分解すると、「企て、画る(くわだて、はかる)」と読める。
「企て」は読んで字のごとく。「画る」は考えを巡らせること。
つまり、なにかを頭をフル回転して「企てる」ことだ。
なので、ちょっとプラン、とは違う、もうちょっとイマジネーションが必要なアクション、ということになる。

さて、ここは企画マンのための「企画の方法論」を説くところではない
あくまで営業人が「企画」に対してどのようなマインドでとりかかり、どのように思考すると「あやうからず」な闘いに持ち込めるか、という切り口で考えてもらいたい。

そもそもだが、仕事で「企画せよ」と仰せつかったとき、アナタはどう考えるか、これがマインドである。
おそらく、普通は「なにかいいアイデアはないかな」というのが心の第一声だろう。
たしかに企画には、アイデアは必須である。
ただし、アイデアより先にしないといけないことがあるのだ。

その企画の「初手」たること、それは、「企てること」である。
企てる、というとなにかよからぬことを企てる、というイメージがあるかもしれないが、別にネガティブにばかり使うことばではない。
では、企てる、とはどういう思考か、というと、「何かを動かすことで、何かが動く」ように考えることである。

ビジネスと関係ないが、非常にわかりやすい「企て」の例は、
「友人の結婚披露宴に、サプライズをして、新郎新婦はもちろん、列席者をびっくりさせて&感動させて、思い出に残る披露宴にしてやろう」
といったところだ。
「サプライズ」が最初の何か、で、「新郎新婦、列席者のびっくり&感動」が次の何か(最初の何かのアクションで動くもの)である。

この企てには必ず「目的」が存在する。びっくり&感動が目的ではなく、「思い出に残る結婚披露宴にすること」が目的である。
そこで初めて、最初の何か=サプライズをどうやってするのか、ではじめて「アイデア」をひねり出しにかかるのだ。
まさに、結婚披露宴の「企画」である。

営業人としては、「クライアントからのお題=目的」が最重要で、思考の基礎となるのはプレゼンをテーマにした前節#05でも触れた。
つまり、目的を明確にして、企て、その企てを実行するためにアイデアから導き出した方法で「仕事を取りにかかる」のである。

実際、優秀な営業人は「お題」を与えられなくても常に企てている
私の個人的経験からくる認識ではあるが、私が知る優秀な営業人は常に「このクライアントの業績を上げる方法は何かないか」と考えている
「自分の数字=クライアントから得る売上」を上げる方法を思考するのではなく、
「クライアントの業績そのもの」を自分の「企て」で上げる方法、を志向しているのだ。
自分の企てでクライアントの業績が上がれば、当然、自分の企てを今後も活用するから、いや、もっと自分の企てを期待するであろうから、結果的に売上は加速度的に増える、と考えるのだ。
たしかに、お題にきちんと応えるのは当然だが、いわゆる「ハマっている営業人」はお題が与えられるのもすでにわかっていて、すでに企てがあるから、それこそ必勝街道を歩むことになるのだ。

これは戦略やソリューションの思考にも当然共通してしかるべきなのだが、自分のスケールで考えるのではなく、もう一段階、いや2段階スケールを広げて常に考える、ということがキモ、ということだ。
誰が言ったか「常在戦場」、という言葉があるが、この認識をしていれば、常に「企てる」というマインドでクライアントを観察できるのだ。

私が尊敬する先輩営業マンが
「企画は絶対に最初に俺たち営業が本気で向き合わないといけない。なぜなら、俺たちは常にクライアントのことを観察し、常に『何か手はないか』『何か事を起こしてやろう』と考えを巡らせているからだ」
と語っているのが正鵠を得ている、と言えるであろう。
「企て」がしっかり「何のために、何を動かして、さらに何を動かすのか」を明確にしてあれば、アイデアは自ずと具体化する。具体化したアイデアは、万人が認識しやすくなり、納得しやすくなる。
結果的にプレゼンにしやすく、わかりやすくなり、採用されやすくなるのだ。
しっかりと明確にされた「企て」が勝率を上げる、と言っていい。

企画会議でよく出る言葉は、「アイデアはイイんだけど、なんか、決め手に欠けるんだよなぁ」である。
これは、「企て」が明確にできていないから、アイデア起点でお題に応えようとしているからである。

営業人は「常に企てる」マインドを持ち続けること、これが企画においてもっとも基礎となるのである。

普段運動していない人がマラソンを走りなさい、となったとき、無理だとあきらめたり、諦めずとも不安になったり、急にジョギングをはじめて膝を痛めて走れなくなったりするだろう。
常にジョギングなど運動している人はマラソンを走りなさい、となった時、不安になったりしない。むしろワクワクするかもしれない。今の力を試したい、と思うだろう。
そう、企画も一緒なのだ。

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とあるカジュアルイタリアンでカップルが会話をしている。
「もうすぐ付き合って1年だね。『付き合って1年』記念日はどうしようか」
「そうねぇ、そうだ、企画してほしいな!私に『人生で1回しかないようなとびっきりのサプライズ』を!」
「お、それはいい考えだ!よし、僕がサプライズを企画するよ!」
そう答えた彼、彼女にどんなサプライズをしようかとアタマをひねりにひねった

そして「付き合って1年記念日」当日。
「君がずっと欲しがっていた、カル〇ィエの腕時計をプレゼントするよ!」
彼女は静かにプレゼントを受け取った。
彼は彼女が嬉しさのあまり声が出ないのだ、と思い、彼女の顔をじっと見ていた。
さぁ、今に喜びが爆発するぞ。
しかし、反応は期待を裏切った
私が『欲しかったもの』がわかってないのね。せっかく『人生で1回しかないようなとびっきりのサプライズ』というチャンスをあげたのに。
彼女は彼の手にすっとプレゼントを押し返す。

当然、この1年記念日に二人は別れることになる。
彼女は彼を「企画のできない男」として。彼は彼女を「渾身のアイデアが通じない女」として。

彼女は「企てた」のである。ただ、その企てが通じなかった
彼は「企てていなかった」のである。「何のためのサプライズ」かを考えていなかった。

彼女はこの日、彼と別れたあと、指がすらりと伸びる左手を月にかざしながら家路を急いだ
そして、こうつぶやいた。
「残念。常に私のことを考えていなかったのね」
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こんな計算高い奥さん、結婚したら大変だぜ。
ずっと旦那も「企て」続けなくちゃならないじゃないか。
しかし、クライアントとできる営業人、ってそんなもの、である。
この「企て」あい、が営業の醍醐味、である。

さて、最後はトンチのような終わり方になったが、次回はちょっと肩の力を抜いてスキル寄りの「アイスブレイクのテクニック」を論じてみよう。

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