真空管アンプの世界に感謝!
過去のメール履歴を見ると2019年3月にエレキットのTU-8100を購入している。そこから始まったジジイの真空管アンプ作成。サラリーマン引退後の自身の活力に大きく貢献してくれているので、この世界に感謝する次第である。
で、ジジイがお世話になったり、ジジイの情報源になっているこの世界の方々を書き留めさせていただいた。
真空管アンプに興味をもってこれから自身で作ってみようと思うかたにとって何かの参考になるかもしれない。
1.エレキットすごい!
E=IR(電圧=電流 X 抵抗)の事など全く忘れて、電気の事など人生に必要ないと思っていたサラリーマンの最終段階で、一枚のレコードからオーディオに目覚め、やがて、真空管アンプの存在を知り、自身で作ってみたいと思ったとき、やっぱりネットで調べれば、部品が全部そろったキットが存在することを知った。
当時エレキットという会社が出しているTU-8100(表紙の写真) というPCL86真空管を2本使った真空管アンプが1万円後半の費用で作れるというので、早速入手して作り始めた。
文系出身で、電気の知識ほぼゼロながら、抵抗やコンデンサー、トランスなどを作り方の解説書を見ながら一気に作り上げた。
この解説書が挿絵を伴ってステップ毎に、とっても丁寧に説明されていた印象がある。まるで、プラモデルを作るような感覚で作ることができる。なので、その説明書に従って間違えなく組み立てれば必ず動くというもの。
動かない場合の点検個所も説明があり、万が一どうにもならなくなった時は費用を払えばサポートも用意されている。
実際、出来上がってから電源を入れてみると、直ぐには音は出ない。そこから試行錯誤、点検箇所を丁寧に見返すと、やっぱり自身の工作が上手くいっていないところが見つかる。概ねハンダの不良が原因である。
うまくいかないと大体パーツの不良、不具合を疑いたくなるが、そんな事はほとんどなく、自身の施工ミスが原因であるという事を勉強させてもらった記憶がある。
完成したものは、形ばかりは小さいけれど、性能は侮れない。こんな小さなアンプでも、真空管アンプの世界を垣間見せてくれるのに十分な品質である。
キチッと作れば、市販品と言ってもわからないほどの出来栄えになり、そして、5年経った今でも問題なく稼働してくれる。
現在、フォステクスのFE83NVで作ったバックロードホーンで鳴っている。
こんな品質のアンプがこんな値段で作れるキットを出してくれているエレキットという会社はすごいなぁと思った。
真空管アンプ自作の世界に足を踏み入れる第一歩として、決してハードルが高い選択ではないと実感した。
それから、6L6GC他、類似の真空管が挿せるTU-8200、プリアンプでTU-8500と立て続けに作り、その段階でこの真空管アンプというものの意味を大まかに掴んだ気がする。TU-8200を作った時に、幾つかの同じピン配置の真空管と挿し替えることができるという事で、KT-88とか、EL34などを秋葉原で購入してきて玉転がしという事を覚えた。
2.MJ無線と実験編集部編の作成本の存在がうれしい!
基盤で組み立てるエレキットを入り口に、手配線でつくるサンオーディオのキット、SV-300BEというシングルの最高峰に手を出して完成させると、だんだん深みにハマってきて、もっと色々作って見たくなってきた。
そこで見つけたのが、MJ無線と実験編集部が出版している作成本であった。
「カラー実体配線図付きでよくわかる 作って楽しむ真空管オーディオアンプ」、「カラー実体配線図でつくる真空管アンプ」、そして続編の「2」を入手して、自身で秋葉原へ出向き、抵抗、コンデンサー、トランスに始まる色々な部品を集めてつくることになる。勿論、秋葉原に行くのに遠い場合は、今ならネット通販で揃えることができるのがありがたい。
これらの本で、それぞれの作例の実体配線図を載せてくれているので、それを手掛かりに作成が可能である。
まだ回路を自身で作成するどころか回路の意味もわからないのに、実体配線図さえあれば、なんとかつくることができるということである。そして、購入する部品のリストも上げてくれているので、そのリストと回路を持って秋葉原に行けば、電気街の店主達が丁寧に指示通りの部品か、または、その代替部品を揃えてくれる。
つまり、キットと違うのは、部品を自己調達し、ある程度のDIY加工が要求されて、それに、実体配線図と現物の間を埋める想像力が必要になることだろう。これらの作業が、自身の能力や知識を更に一歩高めてくれるのは間違いない。次第にわかりやすく書かれている回路と照らし合わせる事で、回路に対する知識も少しづつ深まる。
それらの本には、色々な作者の作例が載っていて、真空管アンプの事を学ぶのに大事な知識が散りばめてある。初めは、いくら読んでも全くちんぷんかんぷんな事ばかりなのだが、実体配線図を手がかりに作り、上手く動くと、少しずつ回路のことや、説明の内容が理解できるようになるのである。
そして、いくつも載っている作例の中で実際に作らなくても、それぞれの回路を照らし合わせてじっくりと観察をすると、朧げながらにもシングルアンプ、ブッシュブルアンプの特徴が見えてくる。
また、できたらおしまいではなく、定期的に過去作った作品の項目をなん度も読み直してみると、不思議と自分の知識度が上がっていることが確認できて、とても嬉しいものである。
つまり、これらの制作本には、真空管アンプの構造、回路、作り方を学ぶのに必要なエッセンスが散りばめられているのである。これから興味を持って学ぼうとする者にとって、とてもありがたいことである。
3.岩村保雄さんの実態配線図のお陰!
MJの作成本を幾つか読んで、実体配線図を眺めながら、作りやすそうな題材を選んでみると、大概、岩村保雄さんの作品であることが多い。
私個人的な見解ではあるが、とにかく理解しやすい実体配線図で、とても整然としているように思うのである。きっと、回路もできるだけ初心者向けにシンプルな構成を考え抜いているようだし、実際の部品の配置も綺麗で見やすいのである。
これならジジイでもできると思わせる実体配線図が書かれている。
そして何よりも役立つのが、作っている時ではなく、完成した後しばらくして、回路の説明などの記事を読み返すと、作成当時には意味不明で読み飛ばしていたところに、自分が知りたかった理屈、ポイントがキチッと書かれていることに気付かされることである。とても理にかなった説明がされていることを発見して納得し、腹に落ちるのである。
2A3シングルステレオパワーアンプ、6V6GTビーム管接続シングルパワーアンプ、6N6Pプッシュプルパワーアンプ、6BM8シングルパワーアンプ、EL34プッシュプルパワーアンプは、全て岩村保雄さんの作品をコピーさせてもらい作成した。いつか、6K6GT 3極管接続無帰還シングルパワーアンプを手持ちの41を使って作って見たいとも考えている。
4.林正樹さんのイージーさが大好き!
さて、作成本に従って作ったアンプの数も増えてくると、漸く回路の事が気になり出してくる。そして、真空管とはどういうものなのか?とか、電気信号を増幅するとはどういうことなのか?などと結構マニアックな世界への興味がわき始めてくる。
そんな時に出会ったのが、林正樹さんのWebサイトである。
著書もあり、「作れる!鳴らせる!超初心者からの真空管アンプ製作入門」、「真空管ギターアンプの工作・原理・設計」をさっそく手に入れて読んでみた。
林さんはご自身がギターリストでもあるようで、オーディオだけでなくギターアンプの作り方としても書かれているという事である。どちらの場合も電気信号を増幅するという事に変わりがないので共通するテーマであろう。
確かに初心者を意識して書いてくれているので、わかりやすい。というか、なんとなくわかったような気にさせてくれるところが好きである。
結構肝のところを簡単に、イージーに説明してくれるのでこんな頭が固くなり始めたジジイにもスーと理解できるようである。
5.木村哲(ペルケ)さんは偉大な人だ!
自作真空管アンプの数も増えて家の中が所狭しとなってきた頃、そして、サラリーマンを切り上げて収入がガクンと落ちた頃、今までのようにでかいトランスや名のある真空管をおいせれと購入する余裕がなくなってきた。
この趣味の沼は深く、まだまだ底を目指して進むしかないと覚悟を決めているのだが、懐に具合とも相談が必要である。そんな中で、ペルケさんの「真空管アンプの素」という書籍に出会った。いわゆるミニワッターという、現実的な予算で、しかし、一切手を抜かない作品ができるというものである。
ミニだからと言って侮れない。ペルケさんの凄いところは、自身で色々試験、実験を怠る事なく、データで証明して色々な説明をされている。そして、ご自身物事への追求心が強くあるので、妥協のない説明をされているように思う。私のように、〜〜のような感じ⁉︎と言った曖昧な表現はされない。
ペルケさんの技術的な知識を全て公にされて、庶民に分け隔てなく共有してくださる。なんと心が広い方なのだろうと感じる次第である。
問題は、我がジジイの知力、理解力の問題で、どんなに公開された情報でも、それを咀しゃくする能力がなければ宝の持ち腐れということになる。何度も何度も繰り返し読んで少しづつではあるのだが、身につくようになってきた。
ところで、このミニワッターという代物は、とても完成度が高く、高品質な作品に仕上がることが特徴と言っても過言ではないだろう。ペルケさんのこだわりが隅々まで行き渡っているように思う。
なので、真空管アンプの事でキチッと調べたい時には、ペルケさんの書籍を読み返すと回答を得られることが多い。
というか、今時、ネットで真空管アンプで技術的に調べたいワードを打ち込むと、ほとんど検索上位にペルケさんのホームページ内の記事が上がってきて、そこを読めば解決する。
残念ながら、ペルケさんは他界されてしまったが、残されたネット上の遺産はこの真空管アンプを愛するもの達の間では計り知れないほど偉大な遺産だと言っても過言ではないと思う。
願わくば、このホームページを最新のバージョンとして管理される方がいてくださるとありがたいと思う。(現在httpで管理されておりセキュリティー面で不安が残る様だ)
6.低電圧ハイブリッドも面白い
だいぶ真空管アンプという存在が、自身の生活に馴染んできた頃、時間のある時にネットで真空管アンプに関連する色々な可能性を探していると、低電圧でつくるハイブリッドアンプというものが目についた。同じnoteに記事を投稿しているMitsuharu A.さんという方が執筆された「真空管アンプ製作 12Vの低電圧で真空管アンプの情感ある音を生み出す」という本を購入した。
これが、ミニワッターよりも更に低予算で作ることができることがわかり、実行に移した。
これは、電圧増幅段にMT管を使い、OPTトランスを使わず、半導体を使ったバッファーを使い音を出すというハイブリッドなシステムである。12V電源でいいので、電源トランスもいらない。とてもコンパクトにできて、かつ、出力の波形もシュミレーションをキチッとされているので、決しておもちゃの様な音ではない。
木工をやるジジイとしては、こんな小さなシステムをうまく木の箱に入れてやろうと、幾つか作った。Bluetoothで音源を飛ばして横につけたスピーカーから音を出すという仕組みである。リビングに置いてBGMには丁度良いシステムになった。
7.Hiroちゃんさんのブログで懐が広くなった気がする!
いよいよ、回路を自身で作成してみようと思い始める頃、とても私を勇気づけて背中を押してくれたのは、アメーバ・ブログのHitoちゃんさんである。
子供の頃から真空管アンプを作成されてこられたベテランの方で、とにかくたくさんの製作例があり、それらの回路を載せてくださっている。そして、差し替えのできる真空管の紹介をされて、真空管アンプ作成の自由度を可能な限り広げてくださる方である。
そんなHiroちゃんさんのブログを拝見していると、だんだん、自分でも回路を設計できるのではと思わせてくれるのである。
そして、こうしなくてはいけないみたいなところがなくて、自身の想像力で自由にアンプを作っていいんだという思いにしてくれる。
いつも思うのは、投稿される回路図がとてもシンプルでわかりやすいということ。
そして、あまり細かい事を気にしないでも設計ができるという事を感じさせてくれるので、もしや、このジジイにもできるのではという希望を与えてくれるのである。
現在制作中の60年代風レコードプレーヤーセットのがアンプの中身は、HiroちゃんさんのCR型フォノイコの肝の部分をコピーさせてもらい、それ以外の回路は自作した。
パワーアンプ段は、正にHiroちゃんさんがメルカリに出展した6CS7という複三極管を落札させてもらい使っている。
8.やっぱり秋葉原は電気街と呼びたい。
ここまで足をこの世界に踏み込んだからには、秋葉原はなくてはならない場所である。
勿論、昨今の世の中事情からすれば、全てネットで購入することができる時代だ。
がしかし、やはり、直接電気街を歩いて、その日に出会った掘り出し物を買って見たい。お店の店主との何気ない会話の中から、新しい発見をしたい。という昭和の頃の行動力と実地主義を大事にしたいと思うのである。
人生をMAX楽しむ方法は、実は最先端の流行り物の中にあるとは限らない。実は、過去の人々が普通に営んできた現場感のある生活の端々にふと幸せを感じるものだったりするのである。
なので、秋葉原は、これからも電気街であって欲しいと願うジジイである。