見出し画像

きっと、スピーカーは楽器だ!

楽器というのは、面白い形をしている。いつも当たり前のように見ているから気がつかないかもしれないが、皆面白い形をしている。

バイオリンに代表される弦楽器は、なぜあのようなひょうたんのような形をしているのだろう。
ビオラ、チェロ、コントラバスも同じ形で大きさを変えた様。あ、ギターも基本は同じなのだろう。

ドラムや太鼓は、音の波を発生させる革の周りに丸枠がついている。逆で丸枠に革を張っていると言った方が的を得ているかもしれない。

管楽器の音源は、人の息?その先に管が真っ直ぐだったり、クネクネ曲がっていたりしてホーンを形成している。

鍵盤楽器であるピアノも実は弦が張られていて、その弦を打って音を出すから打弦楽器とも言われるそう。グランドピアノを上から見るとあの波を打ったような形が特徴的だ。

でも、それぞれの形には、意味があって、いかに音を増幅させて聴きての元へ伝えるか、
そして、いかにいい音色を出して聴き手の心を揺さぶるか、という事を突き詰めた形なのだろうと考える。

素材は、色々だと思うが、特に、原音を増幅しいい音色を出すために使われるのは、自然の恵みである木材である事が多い。勿論、金管楽器などは金属の場合もある。

つまり、周りの箱が音の品質に大きく関わっているという事だろう。

特に弦楽器などは、音の響きに影響を与える周りの塗装にもシェラックなどを使い気を使っているのだろう。

そんな事を考えながら、自作のスピーカーについて考えてみた。

スピーカーも一つの楽器だと考えたら、納得できる。

スピーカーは、特にフルレンジの場合、一つの音源であるスピーカーユニットから出てくる音をいかに増幅させ、いい音色に変えてリスナーの耳元へ伝えるかという事の追求であると思う。

フルレンジスピーカーの場合は、一つの音源(左右で2つ)で全ての録音された楽器の音を再生する事ができる優れものであるが、原音に忠実であるかどうかという点ではどんなスピーカーでも生演奏には負けてしまう。でも、かなりのバーチャルレアリティを実現してくれているから、人はそれはそれでよしとして認めておりオーディオによる音楽鑑賞というジャンルが存在する。

問題は、その音源(スピーカーのコーン)から出る音をいかに箱という楽器の構造を使って、できるだけ広範囲の周波数をカバーして、音量を増幅し、そして、気持ちの良い音色を出すかという事がもとめられる。

つまり、単にスピーカーのユニット(コーン紙と磁石からなる機械的な部分)だけの特性だけではなくて、その周りの箱が、バイオリンのひょうたんのような形や、ピアノの波を打ったような形をした部分の役目をしていると考える事ができると思う。

スピーカーの箱の構造には色々あるが、大きく分けると密閉型、バスレフ型、共鳴管型、バックロードホーン型が私の中では思いつく。

その中でも最近私が気に入っているのは、真空管アンプに相性が良いと言われている、バックロードホーン型である事は、前の記事にも何回も書いた。

このバックロードホーンは、スピーカーユニット前面の10cmから20cm程のコーン紙部分から中高域を出し、その裏側から出る反転した音の波をコンプレスし小さな口(スロート)から外へ向けてホーン状の筒を通り押し出すことにより音を増幅する。そしてその過程で音色までも変えているように思う。この裏側のホーン状の筒を通る音は、低域を主に担当させているわけである。

つまり、このバックロードホーンという音を出す物体が一つの楽器だと考えても良いのではないだろうか?という事である。

ならば、その構造の設計はとても大事なのはわかるが、それだけでなく、それを構成する素材も大事だと考える。設計については、メーカーであるFostexがそれぞれのモデルに適正な設計図を提供してくれているのでありがたい。
私は、MDFや合板のような素材は、加工という点でメリットはあるが、できるならば、バイオリンやギターのように無垢材にこだわってみたい。勿論、無垢材は、加工が大変であるし、作成後の木の収縮、割れ、動きに対応していかなければならない点が扱いにくいが、音のクオリティという点ではメリットが大きい。そして、その周りの塗装についても同様で音の波を妨げないような素材と言われるシェラックを多用したい。

実際に、設計図は、Fostexから提供されたものに倣い、広葉樹であるブナ材を12mmから22mm厚の板材を作り側面を始めフロントバッフル、音道の壁、天板、底板を全て無垢材で、幾つかバックロードホーンを作成したがいずれも素晴らしい音を奏でる。
合板で作ったものよりも、無垢材の方がホーンから出るソリッドで奥深さのある低域を耳だけでなく体で感じる事ができ、より気持ちよさが増幅される。そして、スピーカーユニットから出る各楽器の音色をより分解して明確に伝えてくれるように感じる。そして更に、私の思い過ごしかもせれないが、真空管アンプから出力された低域の周波数帯域で-3dBよりも下がった帯域の音をこのバックロードホーンが拾い上げて増幅させて耳まで届くような音量に上げているような効果があるように思う。

私の求めているものは、パワーがあり、迫力を表現するというよりも、それぞれの楽器の役割がハッキリと分離して、気持ち良く耳から心へ届く音だと思う。その意味において、この無垢材で作ったバックロードホーンは、正にそれぞれの生の楽器の音色をバーチャルではあるものの、さらに偶数次高調波歪み(倍音)を含んだ良い音色に変えてクリアに私の耳元だけでなく体に伝えてくる楽器といっても過言では無い。

そう考えると、私のオーディオにおける音楽鑑賞は生演奏の原音に忠実な音を再現することとは少し意味が違い、レコードという媒体が作り出す音源を自作真空管プリ、メインアンプを経由し、バックロードホーンという楽器から奏でられる音楽を気持ち良く聴く事という事なのだろう。