クラフトの楽しみ
販売目的のために大量に作る工業生産ではなく、自分の趣味としてクラフトする楽しみというのは、個人の感性と技量を駆使して、自身の自由な創造性をもとに、本人の納得のいくように行われれば良いのであろう。
そんな製作物でも、他人に良い評価をしてもらえれば、尚更嬉しいものである。逆に、他人の評価が良くなくても、もしくは、他人の評価を受ける機会がなくても、自分の確固たる評価軸を持ち、他人の評価に左右されることなく、気に入った製作物と一緒に生活をすることができるとなると、これはまた幸せな事だろう。
真空管アンプをクラフトし、その性質をうまく引き出すためのスピーカーボックスも試行錯誤していくうちに色々な事を肌で感じることができるのが嬉しい。
「肌で感じる」なんて、格好の良い事を書いてみたが、私の場合、要するに、相変わらず測定によるデータ化する事を億劫に思い、苦手意識を持っているから、きちっとしたデータとして表現できないだけである。なので決してデータを否定するつもりはない。
しかしながら、いつもオーディオのクラフトをしていて一番大事にしている事は、自身が「気持ちが良いか?」、「楽しいか?」そして、「更に高みを目指すべくインスパイアされるか?」という事のように思う。
これらの事が感じられれば、趣味としてのクラフトを続けることができる。(アッ、あと続けるために大事な事は、お小遣いと、カミさんの理解も絶対必要である、、、)
さて、そんなわけで、今回、密閉型スピーカーをクラフトしてみたのだが、他のスピーカーと聴き比べをしてみると、明らかに音の違いがわかる。これが面白いのである。
フォステクスのP1000Kという、10cm口径のユニットを使った。価格的に手頃でFEシリーズと比べても格安なので、あまり音質への期待をしていなかったのだが、実際に今回の密閉型スピーカーボックスに組み込んでみると、想像以上の良い品質のユニットであることがわかる。
もちろん、その製品とスピーカーボックスの特性上、バックロードホーンと聴き比べると、全く違った音の出方をする。中高域が特に透き通って、気持ちの良い音を奏でてくれるが、やはり、低域の量感や広がりはバックロードホーンの比に及ばない。
真空管アンプは、概ね非力であり、特にミニワッターなどでは、プリアンプの力も借りて、ボリュームをいつもよりも大きめに回す必要が出てくる。余裕を持って聴くためには、やはりユニットの能率というものも大事な要因なのだろう。
もう少し聴いてみないと本領の具合はわからないが、真空管アンプには能率の高いユニットを使ったバックロードホーンが似合っているという世間の評価は理解できるように思う。
ボーカルや、バイオリンなどの目標とする音にフォーカスして心ゆくまで聴くのにはこの密閉型スピーカーが最適かもしれないが、真空管アンプでバランスよく、低域の広がりを量感を持って聴くためには、やはりバックロードホーンの方が長けているように思う。
さて、もう少し調整をするとするならば、吸音材の量を増やして見てどのように聴こえるようになるか、また、裏側の板面は着脱可能なので、後面にバスレフのダクトを設けたら低域の再生能力が改善されるかなど、試してみる価値がありそうである。
早速、ネットで「密閉型スピーカー 吸音材」と入れると、検索上位に炭山アキラさんの最近の記事が、オーディオテクニカのサイトに出ている。
吸音材の増減量する時の参考とさせてもらおうと思う。
音楽の聴き方は、人それぞれの好みなのだから、これが最適という一つの解はない。自分の好みというのも、年齢とともに変わっていくような気がする。
そういう意味でも、自身にとっての更なる高みを求めて、日々クラフトにチャレンジする事ができるのは、なんと幸せな事なのだろうと思いながら、シベリウスのバイオリン協奏曲のバイオリンの音色を密閉型スピーカーで堪能している。