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電気の気持ち

電気の世界は奥が深いなぁとつくづく感じるこの頃である。

エレキットなど真空管アンプのキットメーカーは、電気の事がわからなくても真空管アンプをプラモデルのように組み立てればできるぐらいに丁寧に説明書を用意してくれるから、少しばかりハンダの技術を磨いて、社会人で養った問題解決能力の様な物を駆使すると、こんな素人ジジイでも音が鳴るように仕上げる事ができる。

今でも、真夜中に完成した時の感動は忘れる事ができないほどで、定年退職後の人生がこれから真空管アンプの世界で明るく広がる様な気持ちにさせてくれた。

それに気をよくして、MJ無線と実験編集部を代表とする、真空管アンプの実体配線図なるものがある本を片手に、秋葉原でその本にある部品表に従って揃えた部品類を組み立てるうちに、しばらくすると何となく回路の流れが見えてきて、少しばかり小慣れた感覚を持ち、音が鳴るたびにささやかな自信を身につけて行く。

さて、ではその応用と意気込んで、今まで学んできたシングル回路をもとに、真空管を変えてみたり、配置や、部品の種類を変えてみたり、人が作った別の回路同士をくっつけてみたり、何となくおっかなびっくりでやってみるが、アナログというのはおおらかな性格の様で、たいてい思った通りにうまく行く様になる。

そこで、自分には自作オーディオという趣味が向いていると、安直に勘違いさせてくれるのである。

その辺まで来て、でも、そこから先が、実は奥が深いという事に気が付かされる。
元々、理系の素養があるわけでもなく、電気や物理などの知識もあやふやで、ましてや、文章に計算式などが出てくると、そこは、素通りして結果だけを拝借しようという横着な性格が仇になり、一向に電気の原理、原則というものが身につかない。

E=IRやW=EAと頭では理解して、見慣れた回路の中では、使う事ができても、応用が必要な変則的な回路にぶち当たると、解説を何回も読んでも、理解に至らない。

SRPP、カソードフォロワ、直結、負帰還、P.P.、内部抵抗、インピーダンス、ダンピングファクター、位相等々、説明を読めば何となくわかるような、でも、全体感が掴めずに腹に落ちてこないのである。
イメージを頭の中で描けていないのだろう。

つまり、「電気の気持ち」がまだまだわかっていないのだなぁとつくづく思うのである。

以前、ネットで真空管アンプ関連の検索をすると、ペルケさんの記事が必ずと言っていいほど上位に上がってくると書いた。
そこで、その記事を何回も繰り返し読むのだが、なかなか腹に落ちない。一旦理解した気になっても、二、三日するとすっかり忘れている。その様な記事は、丁寧にわかりやすい様に書かれているはずなのに、やはり、ジジイの脳みそではハードルが高い様である。

と、まあ弱気な事を散々書いてみたものの、だからと言って、お先が真っ暗なんてことは、全くない。

かえって、益々やる気が出てきて、これからもっともっと学んでやるぞーという気持ちにさせてくれる。

別に理解ができないからと言って誰かに叱られるわけでもない。

そして焦る事もない。いつまでにやらなくてはいけないなんていう締め切りはないのだから。

という事で、これからも、「電気の気持ち」を理解すべく、無理をしないで、でも諦めないで、ボチボチと学んでいこうと思うのである。

電気というのは、人間が発見した物だけど、自然現象の原点の様なものでもある様に思う。自然の摂理を理解する、そして感覚で覚えることは大事なことの様に思う。オーディオというのは、その自然の摂理を、音楽という気持ちの良い電気の波を使って僕たちに教えてくれようとしている。オーディオを通じてそんな電気の気持ちが少しでもわかる様になれば、きっと、より豊かな人生を送るヒントに出会える様な気がするのである。