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2020の最初の短編小説

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いしますm(__)m

さて、新年1発目です。新年の1発目ということで、未熟ながらも一応小説を書いているので、今日は小説を投稿しようと思います。

で、この小説なんですが、実は『一駅ぶんのストーリー』で作った作品なんです。ただ、ちょっと分量が多いかもとか、あと、これは選ばれない気がしたので、ボツにしたヤツです。

ただ、せっかく作ったので、どうせなら公開しちゃおうか、と勢いで公開することにしました。

では、タイトル『告白後のカンケイ』です。どうぞ!


告白後のカンケイ


 朝日が降り注ぐ夏。俺は靴を履いて立ち上がり、学生鞄を持って玄関を出た。

 いつもの通学路。肌を掠《かす》める空気は澄みきっている。
 今日はだいぶ涼しいらしい。いままでの猛暑が嘘のようだ。

 俺は鮮明に残る記憶を確かめるように空を仰いだ。
 これも同じく、太陽は変わりなく強い光で照らしている。

 俺の頭はいつになく物思いにキャパを割いている。
 どんな顔で会えばいいんだ……。

「おっはよっ!」

「おわっ!?」

 いきなり背中を強く叩かれ、前によろけた。
 体勢を持ち直し、隣を向けば、向日葵のような弾けた笑顔が覗いていた。

「びっくりした?」

 俺達の通う学校の夏服を身に纏う女子高生は、何もなかったというようにニカリと両端の口角を上げている。

 さすがに困惑した。あんな告白をしておいて、なんでいつもの俺の幼なじみの、間桐椎奈《まぎりしいな》の顔ができる?

 あれは夢だったのか? とさえ思えてくる。
 でも……あんなリアルな夢があるだろうか。

「おーい、寝ぼけてんの?」

 椎奈は俺の顔の前で手をヒラヒラさせる。

「いや……おはよう」

 俺がやっと声を息つくと、椎奈は「うん、おはよう」とふわりと笑顔を咲かせた。

 肩を並べ、不変の笑顔と硬い表情が前を向いて、なじみの通学路を歩く。

 椎奈は以前と変わらず俺に接してきた。俺の心配は取り越し苦労だったらしい。じゃあなんで、俺に“妖怪”だなんて話をしたんだ。


 椎奈からメッセージがあったのはおとといの夜。
 なんの変哲もないありきたりな誘い。だけど違和感を悟った。具体的に何が変だったかと問われても漠然としてしまっている。文面だけ見れば、本当に普通すぎた。逆に言えば、その普通が、俺の感じ取った椎奈の異変だったのかもしれない。

 約束通り、俺は高架下の河川敷にやってきた。
 待っていた椎奈は、妙にみやびやかな雰囲気を振りまいていた。

 薄手のパーカーにショートパンツというラフな格好。時間も遅いし、待ち合わせ場所が場所だけに、どこかへ遊びに行こうという用事でないことは察していた。

 会って早々、俺は用件を尋ねた。
 すると、椎奈はいきなり俺との思い出を振り返り出した。
「そんな柄かよ」、と冗談っぽく言ってみたのだが、しんみりとした口調で「そうだね。らしくないよね」と空元気な様子で言う椎奈に、思わず言葉を失ってしまった。
 椎奈は目線を向こうにある橋にやり、明るく楽しそうに思い出話を連ね、事終えたかのように、「本当に、楽しかった」と締めたのだ。

 そして————俺は見たんだ。

 九の尾を持ち、紅い目をした幼なじみの姿を。

 体中から金色の体毛を生やし、顎もスッキリし、2つ上に耳を伸ばして。紅玉《こうぎょく》の双眸は見下ろした。

「これが、本当の私」

 狐の顔をした椎奈は、いつも聞いていた声のまま、俺にそう告げたんだ。


 なぜ椎奈が俺に告白をしたかなんてわかりようがない。あまりに非現実的すぎて、どう応じればいいのか。俺にどうしてほしいのか……。

 隣で歩く椎奈は、その話を持ち出す様子もない。

 怖い……。そう思ったのは事実だ。だけど、椎奈は自分が妖怪であることをずっと抱え続けていたのかもしれない。よくよく思い起こしてみれば、椎奈には変なところがあったような気もする。友達のみんなと遊んでいたらまだ明るいのに突然帰ると言い出したり、勇ましい顔つきになったかと思えば、授業を抜け出したり。時々生傷を作って、ひどい怪我を負っていた。

 もしかしたら俺は、知らないうちに他の妖怪と出くわしていのだろうか。

 俺が椎奈の秘密を知って、言えることがあるとするなら、俺が椎奈から離れることはないということだ。

 どうやら俺の高校生活は、不安入り交じりながら二学期を迎えそうだ。

(了)

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國灯闇一
未熟な身ではありますが、一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。