手入れ①
10数年前までは、庭に木を植えている庭をそれほど見かけることはなかったが、ここ最近は庭木ブームなのか沢山の木を植えたお庭を見かけるようなった。分譲地なんかに入ると、植栽が繋がりとてもいい雰囲気の街並みになっている事もあり嬉しくなったりする。
昔は、分譲地などで工事すると、ウチが作った庭にしか木が植えられてないとか、分譲地全体に植えられた植栽の本数をウチがした庭だけで超えるなんて事もよくあった。
木を植えたいと思う人が増えたという事は、植物好きの私としてはとても嬉しい事なのだが、多くなるとそれなりに問題点も多くなる。
一番の問題点はメンテナンスだと思う。昔はシンボルツリーなどといって玄関前に1本植えるぐらいだったので、どうにかなっていたのだが(それでも、古い団地に行くと巨大化して放置されたシマトネリコを沢山見かけるが)今の雑木の庭ブームはそう言う訳にもいかない!
上記の写真は数年前に私が造った庭である。細くスラっとした枝ぶりの木に小さな葉が少しついた、まさに雑木と言われる木を植えた庭造りである。
SNSではこういう写真をよく見かけると思うし、私自身もこの写真をInstagramにあげている。そこで気をつけてほしいのが、こういった写真は完成してすぐの写真、もしくは1年以内の写真がほとんどであるという事。3年後5年後10年後どうなっているかという事を知る人はあまりいないし、それを発信している人も少ないと思う。
SNSはファッションやインテリアなど、最近の流行や良い商品を探すのにはとてもありがたいツールで、私人身もよく参考にさせてもらっている。ただ、庭に関してはファッションやインテリアの感覚で見ていると大きな失敗をする危険性もある。それは、木が生き物であるという事。ポストや表札、カーポートなどの既製品はSNSで探したり、実際の体験談などを参考にするのは良い事だと思うのだが、木に限ってはそう言う訳にもいかない。生き物である事を理解し、大きくなった時の事や枯れた時の事などを考えないといけない。ただ、大きくなるや枯れると言う事は、普通の人なら考えると思うのだが、それ以外にも沢山の問題を想定しなければいけない。例えば、写真の様な奇麗な樹形はいつまで続くのか?
木は植えて数年経つと根が張り葉の数が増える。上の写真の様な爽やかなイメージの木は、わざとそうしている可能性が高い。
植物は植えられる時、根を切って現場に持ってこられる。根とういうのは水や栄養を吸収する一番大事な部分で、運ぶ時はその機能を最小限に保った状態で運ばれてくる。水も栄養も最低限しかもらえないという事は、水や栄養を一番使う葉の数を自ら減らしたり、時には人が減らしたりという作業をしてからでないと、たちまち木は枯れたりする。庭に植えられたばかりの木と言うのは、枯れないギリギリのラインを維持している木と言えるのかもしれない。
種類にもよりますが、木もそんなに弱い生き物でもないので、その状態でも適切に植えられ、管理さえすればほとんどが生き残るのだが、生き残ったらそこからはしっかり根を張り、根が出ると枝を伸ばし葉を増やして大きくなろうとする。
特に雑木の庭に使われている木は、「山採り」の木と言って実際に山で成長した木を掘り取って持って来ている事が多く、庭などとは全く違う環境で育ってきたものが多い。自然という厳しい環境で沢山のライバルがいるなか、何十年も生き抜いた結果なった形が、たまたま人間から見たら奇麗と思われ、人気になり使われるようになったのだと思うが、庭に来るとまた庭の環境に合わせて樹形や姿を変えていく。樹形を変える理由は沢山あると思うのだが、分かりやすい例を一つ。
森の中と、庭で決定的に違うことがある。それは光の量である。森の中をイメージしてもらいたいが、上部に鬱蒼と茂った木で森の中は暗いというイメージはないだろうか?
山採りの木には下の方に葉が無い。光の届かない下の方に葉をつけても仕方ないので、葉を付けないという風になっているのだと思う。一方、庭に来ると根元にまで陽が届く。特に私の住む香川のような田舎では高い建物もなく、広い庭が多いので日当たりは抜群に良い。森と違ってライバルも少ない。
陽が当たれば、植物は光合成をしようと葉を出す。下枝の少ない奇麗な樹形の山採りの木も庭に植えれば、下枝も出し葉も増え幹も太る。
2~3年ぐらいは奇麗なまま見れるかもしれないが、5年後10年後は植えた時とは違った木になると思われる。
私自身も、20年近くこの仕事をしてきているのだが、木を沢山植えだしてからはまだ10年ぐらいしか経っていないので、それ以上の経験談をお話しできないのだが、10年近く前に作ったお庭は管理されている庭と、そうで無い庭は明らかに違っている。
②に続く・・・・
KATO