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2021.5.2 ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」

大島新監督(父は大島渚監督)が撮り続けた17年のドキュメンタリー。

衆議院議員・小川淳也。

私はぜんぜん知らなかったのだが、時のアベ政権が不正な統計をしていた時(アベ政権は不正やごまかしや改ざんが多すぎて、もうなんの不正だか思い出せないくらいだが・・・)、ガンガン国会で追及した若手議員として、ネットで「統計王子」という異名がつけられていたらしい。

小川議員の公式HP
http://www.junbo.org/

たしかに、王子だ。

▼選挙とその後

随分前に、想田監督の「選挙」という観察映画を見たことがあるのだが、これは、「選挙/その後」という感じの映画だった。

ちょっと前に見た「i」という望月記者のドキュメンタリー映画(監督:森達也)とはまた全然違う(笑) 

この映画は、何かの問題を鋭く提起する!でもなく、政治を糾弾する!でもなく、諷刺してやろう!でもなく、・・・淡々と、小川の活動と選挙と生活を撮っていく。

▼青春マンガの主人公

小川議員はマンガみたいな人である。熱血主人公キャラ。

童顔、色白、痩せ型。「国のためになる政治家になる!」「おれ、ぜったいに政治を良くする!」という情熱。マジでこれだけ。半沢直樹よりまっすぐだ。

なんならもう、リアリティがなさすぎてマンガにもならなさそうな、現実ではぜったいに政治が無理そうな人だ。秘書たちもハラハラしていた(笑)

まったく余談だが、忠義そうな秘書さんが議員のことを「オヤジ」って呼んでて衝撃だった。たぶん秘書さんの方が議員より年上(か同年代?)だと思う。語弊があるが「ヤクザと同じなんだな」と思った。別にヤクザを真似てオヤジと呼んでいるわけではなく、たぶん議員と秘書は、漫才の相方のような、「ファミリー」的な、独特のコミュニティーなんだろう。

私の政界のイメージは「『汚いこと(不正)をしなければ、弱者を切り捨てなければ、権力に媚びなければ、上にいけないんだよ』とまことしやかに言いながら、上にいって何するのかという志はとうに捨てた人たちの集まり」。

議員は、このイメージの対極にある人だ。もう50歳近いのに、ずっと32歳で出馬した時の、顔立ちは青年のまま。

よくこんな時代に政治家続いているなと思う。病んでもおかしくない。

本人も自覚は十分あるらしく「党内の出世に興味がない、だが、党内でいい役職に就かないと発言力はない」というジレンマに悩んでいる。その悩み方までマンガみたいである。私はバカにして言っているのではない。その悩んでいる姿を見て「この人は何をいつまでも子どもっぽいこと言ってるんだろう」という嫌な感じとか、呆れるとか、そういうことは全然ない。

たぶん、議員は天然なのだ。

三谷幸喜の「新選組!」の「近藤勇(香取慎吾が演じた)」みたいである。天然真っすぐ。

また周りのご家族がすごくいい。

議員は、もともと32歳で、官僚を辞め(辞めないと選挙出られない)突然の出馬宣言。奥様(高校の同級生)も、お父さんもお母さんも、あれよあれよという間に「選挙活動」に巻き込まれる。

(外国はどうかわからないが)ニッポンの選挙活動というのは、とにかく、家族一丸となってやらないと始まらないようだ。

事務所開き。たくさん貼ってある「必勝」の紙(あれ何なの???) 手紙を出す。電話ローラー作戦。選挙カーでお手振り(時に自転車)。演説また演説。握手。ダルマ。今どきダルマに目を入れるの選挙の時くらいだよ!

17年後。やっぱり奥さんもご両親も選挙を手伝っている。最初の選挙ではお母さんと離れるのがイヤで泣いていた小さな娘さんたちが、成人し(二人ともものすごく可愛くて立派なお嬢さんになっていて感動)父親のために、チラシを配って頭を下げる。

・・・っていうかニッポンの選挙のやり方が17年間まったく変わってない(笑) なんか、古くからある村のお祭りみたい。たぶん中の人もそんな感じなんだろう。

私はただただ「すごいなあ」と思った。言い方悪いけど「この人、政治バカなんだなあ」と思った。

▼政治ってなんなんだろ。

政治って、政治活動って、具体的には何をすることなんだろう。

小川議員は衆議院議員である。小選挙区は1区1人しか当選できないが、なかなか選挙区で当選できず(同じ選挙区のライバルが、アベの子飼いだった平井卓也でこれが強いの)、比例で復活する。

そして比例議員は、党内でも発言力が弱いらしい。

野党で比例選出。

たぶん、全然、思い描いているような大きなことは、まだできていないのかもしれない。

ちなみに、平井卓也(現・デジタル改革担当大臣、なんかその他いろいろ兼務)は祖父の代から3世議員。弟は四国新聞(香川ではよく読まれている新聞らしい)の社長。”ローカルメディア王”が親族ということで、当然、選挙ではそれを存分に使ってくる戦略をかましてくる。メディアの社長が親族にいる人が政治家になれるんかい、と初めて問題意識を持った。

でも小川議員は、全然諦めてない。

良くなると信じていなければ、ぜったい世の中良くならない


・・・やっぱりマンガみたいな人である。

議員はよく泣く。感動して泣き、悔しくて泣く。

なかなか感情表現が豊かな人である。政治家には珍しい。

そして、笑顔。

小川議員の笑顔は、ちょっと申し訳なさそうで、そしてまっすぐなのである。

アベとアベの取り巻きの笑顔は権力中毒になったオッサンの笑顔である。おぞましくて卑しい。品性のなさ、知性のなさがにじみ出ている。

そういう表情は一切なかった。

これが、「家賃4万7000円」のアパートで頑張ってきた、市民から出馬して家族総出で選挙活動を戦ってきた、小川議員の顔なんだなと思った。

これは応援したくなる。強みだと思う。

あと、政治家って結局、所属している議会(うまくいえない)がカイシャみたいなもんだなとも思った。国会議員は大企業、県会議員が中小企業、市会議員が零細企業のそれぞれ社員みたいなもんだ。

それぞれの難しさがあるが、サラリーマンと同じ悲哀がある。上の決断に下が振り回される。党議拘束みたいな上意下達もある。一生けん命、上の人のそばで仕事をして出世しないと発言権はない。そして政党はある日突然解党したりする。これは会社が倒産するようなものである。路頭に迷う。。。

この小川議員もいろいろあって(それも映画見るとわかる)(民進党マジでいろいろあったから~~~~~小池ゆりこ~~~~~~~~~)現在は、立憲民主党にいるそうだ。

もしかしたら小川議員は国政じゃなく、地域政治が向いているのかもしれない。志とは違うかもしれないけど。

でもでも、こういう人が日本の国政にもいるんだと知って、ちょっとだけ悲観的な考えを改めたのであった。

なぜ君は総理大臣になれないのか 公式サイト
http://www.nazekimi.com/

私はNetflixで見ました。政治に興味なくてもわかりやすいシーンがたくさんあって(いやもうサラリーマンと同じだからホントに)、選挙活動のとことか、単純に面白いです。田んぼのど真ん中を選挙カーでひた走るシーンとか。ニッポンの選挙、不思議です。



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委員長/日本語教師
これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m

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