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2021.3.18 映画「フィールズ・グッド・マン」

アメリカ映画ながら、日本人の心性(アニミズム、キャラクター好き、ロボット好き、思想がない)についていろいろ考えさせられる1本でした。・・・こんな見方してる人いないかもしれないけど(笑)

▼新宿シネマカリテ

にて、「Feels good man」(気持ちいいね!)という、アメリカのドキュメンタリー映画を見てきた。シネマカリテに限らないが、映画館は本当に感染対策には気を遣ってくれています。ありがたや。

この映画は、映画評論家の町山智浩氏が、昼のラジオ(たまむすび)で勧めてたので、ずっと見たいと思っていたのだ(町山さんが勧める映画は、大の苦手なホラーとかでない限り見たいと思っている、が、ホラーも多い…笑)。

▼あらすじ~全然気持ちよくない!~

ドキュメンタリー(事実を基にしている)なので、ネタバレとか気にせず書きますー。

数年前。アメリカ・カリフォルニア。一人の青年画家が、自分をモチーフに描いたカエルのキャラクター「ペペ」。

自分で描いたペペのマンガを見てもらおうと、軽い気持ちでネットにあげたら、あれよあれよと言う間にネット住人たちの間で広まり、「ネットミーム」となっていく。

ミームというのは、うまく説明できないのだが、文化の遺伝子、というか、ネットの中で遺伝して(コピーされて)人々に伝わっていくもの、というニュアンスでいいかなと思います。

明るかったペペが、なぜか4chan(フォーチャン。日本の旧2ちゃんねるみたいな匿名掲示板らしい)の引きこもり系・モテない童貞系住民の手によって、悲しい顔のカエル(sad frog)に作り変えられ、4ちゃんねらーたちのシンボルに。もともとのんびりしたハッピーなキャラクターだったのに「リア充バクハツしろ!」的なセリフを言わされるペペ。

ここでなぜか「悲しいミームの代表例」として「サッド・キアヌ(リーブス)」の画像が挿入され、ざわつく観客(笑) キアヌには本当に幸せになってほしい。

数えきれない人たちの手を渡り、なぜか、2016年、トランプが出馬した時にトランプ支持者たちがペペを使い始める。

それを大人たち(トランプの選対)が確信的に戦略的に利用、トランプもリツイート。「公認された~」と喜ぶ支持者(トランプは意図的なのか天然なのか分からないけど”ファン心理”がよく分かってる・・・そしてそれを”悪用”することに長けている)。

さらにオルト右翼や白人至上主義者たちが自分たちのシンボルとして、勝手に改変したペペを使いまくる。

原作者の青年が「ペペはそんなキャラクターじゃない! ただハッピーなゆるい日常を描きたかったんだ!」と止めようと思っても、もう止まらない。ネット上に「悪いペペ」の画像が溢れていく。

使っている方は、原作がどう、オリジナルが何か、なんて気にもしないのだ・・・。

さらには、これも作者の全然知らないところで、「ペペ」のキャラクターカードデータ?なるものが、仮想通貨(暗号通貨)になって、トレーディング?されており(※遊戯王カードがネット上でものすごく高騰しているみたいな?? でもなぜそれが仮想通貨になるのかは全くわからん…)とにかく、その仮想通貨で大儲けした人、レアペペカードを高額(仮想通貨で30万$相当くらい)で競り落とした人なども出てくる。繰り返すが原作の青年はそんなこと全く知らないし、彼には1ドルも入っていない。

・・・・・・・・・・という、

ネット怖い! 人間の集合怖い!!! 

あとアメリカは(銃が持てるからやっぱり)やばい!!!! という話だった・・・。

私自身、「お絵描き」する人間(マンガやイラストを描くオタク)なので、結構暗~い気持ちになった。

しかし、希望的なエピソードも最後にはありました! (なぜか)ペペが、香港では、若者の民主化運動のシンボル(民主化運動でデモをしている若者たちの心の支え)となっているというのである。

香港のペペも原作とは違い、ケガをして悲しい顔をしている。それは警察にやられたケガなのだろう。警察の暴行で酷い目にあった市民たちの似姿なのだろう。

要するに、

たった一人の人間が何気なく生み出したキャラクターが、ネットの中でとんでもない方向に成長していってしまう(それは止められない)

そういう話だった・・・。


▼日本でこうならない理由

で、ひるがえって日本のことを考えると、キャラクターが氾濫してる割に、ここまで悪用されてたくさんの人を傷つけている例は、私は知らない。思いつかない。

と、博識な友人に言うと、友人は一言「アニミズムだね」と言った。

アニミズム?!

えー、ここでいうアニミズムは「モノにも魂があると考えること」くらいで読んでいただきたいです。


▼ルンバde考えよう

私が面白い現象だなと思うのが、ルンバ(自動床掃除ロボット)だ。

最初にルンバを使った時、みんなすぐルンバに話しかける。

ルンバが走っていると「がんばれ」、床でオロオロしていると「どうしたの? そっちじゃないよ」、ルンバが息絶えると「よいしょ」とだっこしてホーム(充電場)に戻してあげる。

根拠ないけど、ルンバに対して、小さな子供やペットみたいに接する人が多い気がする。私もだし、私の母親もだ。それは別に女性だからとかじゃなくて、男性でもそうしている人を見たことがある。もちろんそんなかわいがるのは最初の2~3回だけど(笑)

日本人って本当に(生活の中で比較的簡単な作業をする)ロボット好きだよなあと思う。どうなんだろ。外国でもルンバに話しかける人は多いのだろうか。

「鉄腕アトム」と「ドラえもん」のおかげなのだろうか。でも、ロボットらしいロボットのペッパー君とかAIBO犬とかは、そこまで爆発的には普及はしてない(しなかった)。不思議だなあ。まだお高いから? でもなんか違うんだよな。

テレビで、とある飲食店チェーンが、人件費削減のために(怖)、調理場から料理を運ぶためだけの「配膳(運搬)ロボット」を導入したと伝えていた。私は、テレビ画面でそのロボを見て、(別にカワイイ顔がついてるわけでもないし図体でかいし動きはスローだし、やや邪魔じゃない?)と思ったのだが、「結構お客さんに可愛がってもらってるんですよ~」と社長が満面の笑みで話していた(byカンブリア宮殿)。

「ロボットは時給も安いですしね」とも満面の笑みで言っていたが、それは今は考えない・・・。こわいよー。

というように、我々は「モノに魂がある」、もっと簡単にいうと、「モノを自然に擬人化すること」を誰もが日常でやっている。ルンバほど知能が高くなくても、マイPCや複合機とかなど、自分がよく使う機械を「この子」と呼ぶ人は多いはずだ。(車は別格)

それは別にオタクだからとかじゃなくて、あまりに自然すぎてなぜそうするのか考えたこともないけど、アニミズム的な考えがあるからなのかもしれない。

山にも木にも石にも神様がいる。生きていると考える。

生活用具(モノ)なら付喪神(つくもがみ)だ。妖怪だ。愛して大事に使わないと化けて出るぞー。

そういう文化なのだ。

そういう前提で、日本のキャラクター文化はある。

キャラクターは基本的には平面的である。(立体的な着ぐるみとかにもなるけど、そういうことじゃなくて)概念の視覚化だと思う。刀がイケメンになって戦艦が美少女になる。城がネコになる。

私たちは、そのキャラクターにも魂があると考えているフシがある。

だから日本ではペペ的なものが生まれても、そこまでひどい使い方はされない気がする。

(古い話ですまんが)好き放題使われたのって、アスキーアート(というのか?)「1さん」とか「八頭身モナー」とかくらいでは? 私は2ちゃんに詳しくないので、2ちゃんでは日々、キャラクターが二次利用されているのかもしれないが、それが一般社会(笑)にまで浮上してこない気がする(知らないだけだったらすいません)。

件の友人は「あまりにそのキャラクターにふさわしくない扱いをすると、ファンからクレームが来るんじゃないかな」と言っていた。

これからも、初音ミクが、日本で極右のシンボルになったりはしないのだろう。

「いらすとや」さんの絵が、政党ビラに使われることもないのだろう。(今確認したら、公序良俗に反するような利用や、差別的な利用などは禁止でした)


▼思想がない?

さらに、これは私が思ったことだが、日本では

キャラクターと思想が結びつかない

というか、

そもそも結びつけるほどの「思想」を持つ人が少ないんじゃない?

ということだった。

日本でペペが流行っても、せいぜい自撮り画像とペペのコラボ、とか、コラージュするくらいだと思う。もしそういう暴力的に改変された投稿があっても、それほど支持が広がらない気がする。

あくまで例えだが、ドラえもんを暴力的に表現した画像や、サザエさんをブラックに改変した画像が、ちょっと出回ることがあったとしても、公的な場所にまでは出てこない気がする。

でも、アメリカで、カエルのペペは、全国紙やニュース(たぶん全米ネットワーク)に載るくらい問題が大きくなった。作者はついに、自分の分身でもあるペペをマンガの中で死なせてお葬式をするのだが、それでもネットミームになったペペは止まらなかった。

それにしてもアメリカって、なんであんなに、〇〇主義とか、〇〇思想とか、勢力図がカオスなのだろう。トランプ支持者も反トランプもそれぞれ一枚岩ではなく、考えの根っこが違う人たちがいっぱいいて、「よくそんなに自分の主義主張がハッキリしてるなあ」と思ってしまう。誰もが何についても一家言ありそう(イメージですが)。

・・・いやいや、日本人がなさすぎるのかもしれない。そんなことあまり考えなくても生きていけてしまう。態度表明しなくてもやっていける。

もちろん日本でも思想や政治観がハッキリしている人もいるが、一部の過激思想の人たちが目立ってしまうため、思想を持っている人は(その思想の内容に関係なく)いっしょくたに「触らぬ神にたたりなし」みたいな扱いをされている感じもする・・・。なんなら「政治的発言」をすると(何かについてハッキリものを言うと)、怖がられたり、攻撃されたりすることもある。

かなり乱暴だが「一神教とアニミズムの違い」ということもちょこっと影響しているのだろうか。。。

すべてを あいまいに うやむやに なあなあに なしくずし・・・。

・・・というわけで、我々の多くには思想がない。なんでもありで、なにもない国。

我々は壺なのかもしれない・・・(え?)

ありとあらゆる文化や意見を特に批判なく「そーゆーのもアリなのもかもねー」といって、すべて受け入れる「空(くう)」なのである(おーい)。

▼ていうか著作権マジ大事!

原点に帰ろう。

二次創作を許して下さる原作者様は神様です!(←オタク側の、原作者に対するリスペクトも強い気がする) 我々は原作者様が描いてくださったからこそ、その世界でキャラで、遊べるのでございます。

キャラをお借りする場合は、原作者様が嫌なことはしないようにしつつ、楽しくお絵描きしていきたいなと思ったのでした m(__)m 

「フィールズ・グッド・マン」公式サイト
https://feelsgoodmanfilm.jp/

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委員長/日本語教師
これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m