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読書感想・絶望の国の幸福な若者たち(古市憲寿)

2011年に出版された「若者」論。このとき古市さんはまだ博士課程。

まず古市さんが、こんなちゃんとした本を書いてることを知らなかった…。ふんわりエッセイではなく「エビデンス(統計、数字、参考図書)」に基づいて論を進めている。

思ったのは、統計って、きちんとした知識とスキルがないと、正しい解が導けないということ。数字を扱うのは技術がいる。自分の結論のために数字を使い、それで人をだますこともできる。

▼イマドキの若者は、国のことも社会のことも昔より考えている。考えているが、「つながり方」がわからない(身近にない)ため、手を出しあぐねている。
▼身近な幸せはある。だから幸せである。仲間(友達)と、本当にちょっとしたこと(ゲームするとか安いファミレスで外食するとか、SNSするとか)…で幸せを感じられる。日本はまだまだ裕福な国だ。
▼でも自分が国に対して何かできる、未来を変えられると思っている人は少ない。
▼ひとたび、天災が起きると、若者は溢れている「何かしたい」という思いをボランティアでぶつける。ひとたび、スポーツの祭があれば、無邪気に「日本」を応援する。でもそれは「国家」としての日本を応援しているのではない。地縁として、ただ生まれ育った国だからそこを応援しているだけで、別に日本が負けてもそれはそれでいい。責めたりはしない。
▼だから絶望しているけど幸せなのだ。それは両立する。
別に若者が悪いわけではない。誰も悪くない。
▼日本はこれから衰退するけど、急に明日から全員が最低の貧困に陥るわけじゃない。絶望しながらも生きていくしかないし、それで別に何が問題なの?

・・・というかんじの本だったと私は思った。
(80年代に生まれて2024年に中年になっている私が読んだ感想として)至極まっとうな本である。

これを持ち上げたり、条件反射的に批判したオジサン(オバサン)たちもいっぱいいたんだろうなと思う。
正直、後書きは気持ち悪かった…(持ち上げ方が昭和。あとあずまんがゲンロンカフェに立て籠もってるとはこれ如何に…! ちゃんと適度に開いてますよー!)。

古市さんて、マスコミ(テレビ)に出ているときは、オジサンにやたら反論する「冷めた(昔の言葉で言うと”シラケ”)」視線が売りのコメンテーターだと思ってたけど、根は研究者だったんだなと改めて思った。

「ちゃらちゃらして、いつも上世代に批判的なことをポーンと言って、苦笑いされてる人」だった古市さんを、「本読んでみよう」と思えたのは、ゲンロンのおかげである。
ゲンロンが出すなら、もしかしてちゃんとした人なのかも? と思い、そして長く話しているのを聞いて、「本読もう」と思えた。
読んでよかったと思う。

また東さんと楽しく丁々発止のやり取りをしてほしいと思う。
ゲンロンカフェに呼んで、ゲンロンカフェで話すのはビジネスである。でも1%くらいは心の交流があると思うから。

オジサンと呼ばれる世代に入った古市さんが、今後、どのようにオジサンをやっていくのか楽しみである。
今のところ、若者カテゴリーから脱してオジサンカテゴリーにも入らず、独自路線を行っている感じだけど。

私は古市さんより3歳上なのだが(幼少期に3世代大家族で暮らしていたこともあって)ベースの価値観がかなり「昭和的」である。

80年代生まれって、3歳違うだけで(生まれ育った環境もあるのでしょうが)こんな違うんだなあ…。

個人的には「プロ奢ラレヤー」と対談なんかしたら面白そうだと思う。
というかプロ奢は、社会学の訓練なしに、同じ境地に到達してるんじゃないかと思う。

いい読書体験でした。
小説も読んでみたいかも~。


この帯の写真は「著者自撮り」ではなく篠山紀信さんです。

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