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2021.9.30 「孤狼の血LEVEL2」 人(というか私)はなぜヤクザ映画を見るのか?

いまだ劇場上映中なのに早くも続編制作決定が発表された(笑)「孤狼の血 LEVEL2」!!!!!(ころうのち、と読みます)

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最っっっ高だったぜー!!!!!!!!!!

最高過ぎてもう「最高最高・・・」と小声で言いながら電車に乗っちゃったぜ!!!!

ぜひ配信を待たず、劇場の大スクリーンで見てください!!!!!

以上!!!!

あ、1作目見てない人も全然楽しめます! 

以下の構図だけ入れていってください。

むかーしむかし(昭和末期~平成初め頃)、広島の呉(くれ)というところに、Aの組(オダニ組)とBの組(ジンセイ会 五十子(いらこ)会)がありました。
2つの組は長いこと対立しており、1作目でいろいろあって、最終的にAの組の若頭(江口洋介)が、Bの組長(石橋蓮司)を殺してしまいました。この2人は今回は写真でしか出てきません。それで「手打ち」になりました。
その後、警官である松坂桃李くんは、警察ながら裏でどっちのヤクザとも「うまいこと」やって抗争を起こさないように見張っていました。
実は江口洋介が蓮司を殺す手引きをしたのが桃李くんで、それはAの組しか知りません。
しかしBの組と同じジンセイ会の最終兵器・上林(鈴木亮平)が出所し、「オヤジ=蓮司」の敵討ちじゃ! とAの組に復讐しようとする話です。(ざっくり)


あとはとりあえず、公式サイト見て、そのキャストが「どっちの組か」だけ覚えていってもらえれば大丈夫です!!!!!(ざっくり) 

公式サイト   https://www.korou.jp/#story

1を見たい人はNetflixでどうぞ! (2もエグいけど1も冒頭からエグい描写があるのでお気を付けください)

▼人(というか私)はなぜヤクザ映画にこんなにも感情移入するのか

私はフィクション、エンタメとしてのヤクザ映画のことを言っており、本物の反社には賛同しません。犯罪は犯罪です。

それから私は暴力が大の苦手です。暴力振うやつも大嫌い。
自分自身が痛みにめちゃくちゃ弱く(注射も嫌い)、映画の拷問シーンとか「ひえええええええ」と思いながら見ています。スパイにはなれそうもありません。。。

それはそれなのに、フィクションとしてのヤクザ映画に、なぜこんなにもエモさ、「好き! わかる!(←わかるはずない・・・)」と思ってしまうんだろうか。

アメリカ映画におけるギャング・マフィアもの(ゴッド・ファーザーとか)が好きな人がいる。私も好きだ。
では、一種のピカレスクロマン(悪役物語)として好きなのであろうか。

みんな大好きピカレスクだが、なんでみんな好きなんだろ。

ベタな理由としては「アウトロー」への憧れというものがあるだろう。自分は安定した生活を手放すことが怖くて道を踏み外せないが(それでいいんですよ)、アウトローの破天荒な生き様を安全な映画館で見ることができる。

いろんなアウトローがあって、桃李くんは警察のアウトロー。
鈴木亮平はヤクザの中でのアウトロー。(たけしの「アウトレイジ」もそうだった) ヤクザ自体が社会のアウトローなのに、そこでさらにアウトローになるってどんだけやねん! 
でもそうならざるを得ない何かがあるんだよ。全員そうなるようにしかならないように進んでいくんだもん。なんで生き方が一本道なんだよー不器用すぎるー。
その悲しみ、どうしようもなさが胸を打つ。

しかし私は、労働者生活を長くやってさらに分かったことがあるぞ。

「ヤクザが弱い人」だからです。
だから、見るんです。

この「孤狼の血LEVEL2」でいうと、鈴木亮平も、村上虹郎も、いわゆる在日。韓国の血を引いている。
そして(今でもあるかもしれませんが)その時代、おそらく凄まじい差別を受けざるを得なかった。

ヤクザというのは、その時代その時代で、社会の相対的”底辺”の人が本当にどうしようもなくなって生きるために入るところだと思う。
家柄があって金持ちの人は、わざわざ極道になんかならない。そんな必要ない。

ヤクザを学術的に研究している(ヤクザになった人に実際話を聞くフィールドワークをやっている)廣末登氏の著書『だからヤクザを辞められない』を読んだ時、育った家庭環境がめちゃくちゃだった人が多かった印象を受けました。

家が貧しくて、さらに親から虐待されていたり、そもそも親がいなかったりネグレクトだったり、そんな安心できない家庭環境では勉強に集中できず、自己表現が上達しないから口より手が出る。
そうやって学校でも「落ちこぼれ」ていき、家庭にも先生にも社会にも見捨てられた人たちが、ヤクザに拾われて、入るんじゃないかと思います。

観客はその弱さに、どこか自分を重ねて見てるんじゃないか。

いや、ヤクザ映画好きな人ってそんな人ばかりじゃないと思うけど!!!! 
幸せな家庭を持っている順風満帆なパパや、孫がいるじいじが見ても全然いいんですけど!(笑)

そこまで不幸ではなくとも、私は低年収、非正規労働者、将来の見込みがまったく分からない、独身で子どもなし、中年、女性、という自分の属性を意識しだしてから、ヤクザ映画ががぜん面白くなってきました。

え、私だけ?!??!

ヤクザは分かりやすい世界です。疑似的家族を形成し、世間的には犯罪であっても、「親」にその世界での忠義を尽くせば、生きていける。親に可愛がってもらえる。。。
でも本当はヤクザにも「社会」があって、ねたまれたり裏切られたり。
純粋に「仁義」「義理」とか言うと「古い、これからはヤクザもビジネスじゃ」とか言われる。
くうううーーーーー!!!  
純粋なやつって損するよなー!!!
カタギもヤクザも世知辛いぜー!!!!!!
って思って見てる。

え、私だけ?!??!(2回目)

あとヤクザ映画に出てくる主役は生命力が強くて、そこに、生き物として本能的に惹かれるのかなーと思います(何度も言いますが、現実の反社を肯定するわけではありません)。

映画のヤクザってとりあえず命軽すぎる(すぐ指を詰める、すぐ鉄砲玉になる、頭に血が上ってすぐ報復に行って返り討ちに遭う)のですが、それすらも、「濃密に生きてんなー」・・・と思えてしまう。

あるいは、ヤクザの中でも自分が生き残るためやカネのためなら平気で「親や兄弟」を裏切ったりする人もいるけど、これはこれで「すげーなー」と思いながら見ている。

私のように、底辺にいながら、そこから這い上がろうともせず、「どうしたらいいんだろー?」とか言いつつ、日々ぼうっと酒飲んで過ごしている人間からすると、「わー、この人たち根性あるわー」と思ってしまう。
だいたい、そこまで何かを恨み続ける力がない(笑) すぐ忘れてしまう。忘れてないこともありますが。でも実際復讐するかというと面倒なのでしない。 
でもヤクザはどんだけ執念深いか(許さないことだけはぜったいに許さない)で決まる気がする。

なんなんだろうなー。
ヤクザの世界に「ロマン」などない。徹底的に欲望と暴力しかない。
でもそれはそれで「純粋」のようにも思える。間違ってるけど。
私たちは、成長するにつれ、シャバでうまく周りとやりながら妥協しながら諦めながら生きていく。それが大人になるってことだ。
純粋からほど遠くなっていく。だって純粋であることは「社会にとって危険」だから。

・・・その鬱積がヤクザ映画に向かわせるのだろうか・・・。

あーでもそれはあるのかも?
私たちは漂白された社会で生きている。
欲望と暴力を規制して生きている。
でも私たちは動物だ。本来は何かを屠ってそれを食って生き延びてきたのだ。
どこかでその本能が、欲望と暴力を求めているのだろうか。

いや知らんけど。(←関西の決まり文句。みんなおまじないみたいに、最後にこれを言う)

だからとりあえずヤクザ映画は「ないと困る」よね。

白石監督と桃李くんには当面頑張ってもらいたい。
良質で正当なヤクザ映画を残していってほしい。

時代劇だって撮影していかないと文化が継承されない。殺陣とか所作とか美術とか衣装とか。

ヤクザ映画も同じだと思う。
現代の深作欣二になってほしい。

以下、ネタバレありの雑談です。


観た方、良かったらお付き合いくださいませ^^


↓  ↓  ↓  


▼主要なキャストがほぼ死んだが

LEVEL3どうすんだろ。
生き残ったのって、桃李くんと、音尾琢真くん(チームナックス)と、吉田鋼太郎くらいでは。(江口洋介は生きてる←服役中)
というか音尾くんが出てきた時「こいつ生きっとったんかー!」とちょっとマスクの陰で笑ってしまった。

そして1で死んだのに、今作でも存在感を放ち過ぎだった「石橋蓮司」。
ことあるごとに蓮司の遺影。

とにかく、ヤクザ映画の常連人は、みんな出ちゃった(そして死んだ)のではないか。どうするんだ。どうするんだ。誰が出るんだ。
次世代のヤクザ映画スターを作る気なのか、白石監督!!!!


▼初心者への気遣い

抗争の構図が非常に単純化されていて、大変ありがたかった。。。
AとBの抗争。うん、わかりやすい。
ナントカ組系ナントカ興業と、ナントカ会派閥のナントカ商会とか言われても、覚えられないの…。
ヤクザ映画初心者に優しい「つくり」でありながら、車で組事務所に突っ込むというお決まりのパターンも踏襲(笑) 
これ、あえてですよね?!?!? トラックに乗った時から「お」と思ってたんだけど!!! あと「おっぱいが2回映る」、という私が発見した「あるある」もちゃんと踏襲(←偶然ですよ…)。

「極道の妻」あるある(2020.1.22)
https://note.com/iincho/n/n7078c3b5c569


▼ナレーションシステム
お決まりと言えば、ヤクザ映画ってナレーションで進んでいくシステムなのよね!!!(ナレーションがなくて字幕で説明が出ることもある)。
よく考えると、すごい便利な、革新的システムである。
小説の「地の文」(セリフじゃない説明文のこと)みたい。
写真・静止画を何枚か映しながら、前作から今作までに起こったことを時系列で全部説明してくれる、その間にスタッフロール(昔の映画もドラマもスタッフロールが先に出る…)。観客はこれらをとりあえず頭に入れて臨む。


▼脚本は池上純哉さん
白石監督とは「日本で一番悪い奴ら」「孤狼の血(1作目)」などでタッグを組んできたそうです。「日本で一番悪い奴ら」(名作!)あの綾野剛もやばかった。
今回は原作のキャラも使いつつのオリジナル脚本で、結構そういうのって大変なのかもしれないけど、でも大変良かった。大成功。
上林(鈴木亮平)のキャラクター(幼年時代のエピソード)とか、どんでん返しとかもう何もかもが、ヤクザ映画の伝統を受け継ぎつつも現代風にもなっていて、脚本ってマジで大事~~~~~~~~!


▼人生で初めて
中村梅雀をすごいと思った。
あの人すごいな。2時間ドラマシリーズで変わり種の刑事役ばっかりやってる人(失礼)なイメージしかなかったけど、、、そういえばTVドラマの「イチケイのカラス」でも結構いい味出してたし。
今回ほんとに怖かった。


▼お色気一切なし。
潔く暴力のみ。これが割と女性ファンを掴むカギではなかろうか。
もともと原作も女性なのだが、別にそんなもん関係なく、骨太すぎるハードコアな芸風である(原作未読。読もうかな)。


▼松坂桃李くん
本当になんでこんなつらい(刺され、撃たれ、裏切られ、殴られ、蹴られ)役を引き受けたんや・・・本当にケガをしていないか心配だ・・・(こないだグータンヌーボーに出てたから多分大丈夫だと思う)。


▼すごすぎる鈴木亮平(兵庫県出身)
この人は本当に憑依型というか、、、
え、私生活では良いパパなんですよね??? そして私より年下! このオーラ!!! 本当に出自に苦しんだ狂気の人に見えた。
この人もケガが本当に心配だったが、ちょっと前「TOKYO MER」の番宣でぴったんこカンカンに出てたから、多分大丈夫だと思う。(カンカン終わっちゃいましたねー) 「TOKYO MER」ではさわやかな笑顔だったのに・・・俳優って怖い(涙)←そういう仕事だよ!!


▼リスペクト・トレーニング
(白石監督が、丸山ゴンザレスとNHK「スイッチ」で対談した時にも言ってたが)Netflixで取り入れられているプログラム「リスペクト・トレーニング」を(日本で初めて)取り入れた映画撮影現場だったらしく、こんな暴力的な映画なのに、現場は和やかだったらしい。
演劇でも、これからは稽古場で灰皿とか投げてたら(N川)、ハラスメントとかになるのかもしれない。
ただ私は映画を見た後に聞きたかったな…。殴り合いのシーンでも、ついつい「リスペクト・トレーニングを受けてるから、きっと俳優さんたちのメンタルはダイジョーブだ」とか意味なく思い出したりしてしまった。。。

なお丸山ゴンザレスも梅雀の最後の麻雀シーンに出演してたけど、視線が泳いでてめっちゃ目立ってた(笑) 

〇リスペクト・トレーニングについて
『孤狼の血』白石和彌監督に訊く映画業界がアップデートしていくべきこと
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c216b7352f682f29666078bc4a016ed048c5993
▼ヤクザ映画についてはこちらでも書いてます。
2021.3.3 ひな祭り。映画「すばらしき世界」と「ヤクザと家族」などなど。
https://note.com/iincho/n/naa3fdd0b0451?magazine_key=m2e279b80ed0d


▼広島弁ラブ

広島弁めっちゃキュートじゃないっすか? 「仁義なき戦い 広島死闘編」(この映画を見るために見た)でも、広島弁がきいてた。「~じゃないの(なぁの)」っていう語尾がかわいい(めちゃくちゃ緊迫した状況で使われますが)。「ぶち(とても)」もかわいい。さすがに「~じゃけえ」とかは使ってなかったけど。

ヤクザといえば、関東と関西、そして広島、博多が有名だと思うのだが、「博多のヤクザ映画」はあるんだろうか? あまり聞かないけど、迫力ありそうだ。愛人やクラブのママも全員博多弁だろうし(博多弁女子かわいい)。よさそう。

ちなみに愛知のヤクザは、岩下志麻姐さんの「新極道の妻たち 覚悟しいや」で描かれております。香港ロケとかもあって謎の回。「犬のお父さん」(北大路欣也)って昔こういう感じだったの?! ひええ。



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委員長/日本語教師
これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m