粘膜
こちらを見るでもなく、彼女は勿体も付けず自らそれを脱ぎ去る。
たったの今まで薄っぺらい布切れ一枚によって隠匿されていたその紅く赤く滑る粘膜が無防備に解き放たれ、粘液に塗れた一対の肉襞が照り返す蛍光灯の不自然なただ白い光に僕の目は釘付けになってしまった。
彼女はこんなにもグロテスクな器官を剥き出しにして恥ずかしくないのか?嫌悪と興奮が僕の脳をタプタプ浸らせる程のドーパミンを迸らせ、全身が粟立たち、脊髄を引っ掻くような甘い電流が走り抜け僕の腰を蕩けさせる。
触れたい。
その粘液を指に絡ませ粘膜壁を乱暴に掻き毟りたい。体温よりも少し高いだろう温もりを感じたい。その生暖かい腔の中で蕩けて混ざりたい。
僕の喉を固い生唾がごくりと通り過ぎていった。その音はやけに大きく僕の鼓膜を震わせ、その瞬間自分が呼吸をすらも忘れていた事に気付かせた。
「どうかされましたか?」
突然押し黙った僕に、彼女は不審な様子を感じ取ったのであろう。無意識ではあろうがわずかに身を遠ざけるようにして聞いてきた。
「ああいや、特段気にするわけではないんですが」そう前置きをしながら出来るだけ平静を装って僕は言った。
「できればマスクはしたままで」
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