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小川佳純、新たな船出

関西1部TIAMO枚方の指揮官に就任した小川佳純監督(35=通称ズミ)が10日、〝監督デビュー〟を果たしました。J2京都と行った初陣の練習試合は0-6の完敗。でも「現時点でどれだけやれるか見られたので、良い初試合になった」と笑みを浮かべました。




■本当は現役続行を希望していた



昨季限りでJ2新潟を退団。ズミくん自身、当初は現役続行の意向は持っていました。そんななか、届いた話は社会人クラブのみ。枚方も「最初は選手としてのオファー」だったと言います。「それが、いつの間にか監督はどうだ?という話に変わっていた」。ズミ自身は現在、B級指導者ライセンス取得中。JFL以上はA級ライセンスが必要ですが、社会人リーグはライセンス有無を問いません。「選手としての話よりも、監督としての話に惹かれている自分がいた」。こうして引退即監督就任というサッカー界では異例の転身が成立しました。
「もう選手の思考にはなっていません。きょうもピッチに立ちたいとは思わなかった。それよりも、どうすれば勝てるかを考えていました」
頭は切り替わっています。



■無意識下の準備

運命の糸に導かれたのかもしれません。普段は本を読まないというズミですが、去年あたりから「ペップ(グアルディオラ)の本や戦術の本を読むようになった」と言います。別に指導者になるためではありません。何となく読み始めて、指導者ノウハウの一端に触れ始めていたのです。
さらにマンチェスターCや横浜Mの試合も自己流で分析。これでも指導者になった時に活かすためではなく「自分たちで試合をコントロールするチームが好きだから」です。ただ昨年1年間で蓄積された知識は、今に繋がっているとのことです。
「守備をしてカウンターではなく、相手コートで試合を展開したい」と理想を掲げていました。



■監督として大事にしたいもの



名古屋時代はセフ・フェルフォーセン氏、ドラガン・ストイコビッチ氏、西野朗。鳥栖時代はマッシモ・フィッカデンティ氏。新潟では呂比須ワグナー氏、片渕浩一郎、鈴木政一、吉永一明氏に師事しました。多くの指導者と接する中で感じているのが「一番大事なのは準備」とキッパリ。
試合になれば監督が全てを指示することはできない。だからチーム全体が同じ方向を向けるような働きかけ、戦術の落とし込みをいかに試合までにできるか、ということです。
そのためには日々、綿密に考えられた練習メニューが大事。そして練習前には実際にマーカーを置いて、そのマーカーを置く距離や位置が正しいのかをシミュレーションもするそうです。またミーティングで使う映像を自分でパソコンを使って編集作業も。「取得しないといけないスキルが増えた」と笑いますが、かつて日本代表を率いたトルシエ監督の名言「監督の仕事は試合前に7割終えている」を想起させます。さらに「自分が選手をやっている時を思い出すと監督の声かけで選手の反応は違う。こう言った方が良いのにと思うシーンもあった。こうやって声を掛けてくれたからモチベーションが上がったというのも覚えている」と選手へのアプローチも工夫する必要を口にしていました。



■1年限りの監督業も!?



ティアモ枚方は昨年、JFL昇格を逃しました。昇格すればライセンス問題が出てくるため、ズミくんは来季指揮を執ることはできません。でも「昇格が目標」と今年1年に賭ける思いです。関西リーグの開幕は4月。「きょうは〝監督の雰囲気〟は出そうと思っていました」と冗談を飛ばしたズミくんが、より監督の顔になっていく様を見ていきたいと思っています。

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