蔵出し其の2【C大阪FW豊川雄太】
こんにちは。
引き続き「蔵出し企画」です。
きょうはガンバ大阪のライバルクラブにいる選手の話です。
■第2回『C大阪MF豊川雄太』
これは16年6月中旬に取材したものをベースに書いています。
矢島選手と同じ日で、豊川選手も当時J2岡山でプレーしていました。
リオ五輪アジア最終予選準々決勝U-23イラン戦では決勝ヘッドをたたき込み、ベスト8を超えられなかった手倉森ジャパンの〝壁〟を壊した立役者になりました。
でも五輪本大会メンバーには選出されず…。
この日のインタビューは笑いが絶えなかっただけに、世に出してあげたかったです。
以下が草稿です。
■幻の原稿
一言で言えば凝り性だ。趣味は釣り、そして家庭菜園という。鹿島時代に穴子釣りにハマり、的確に穴子の巣を見つける能力を身につけた。いつしか「鹿島の豊川」ではなく「穴子の豊川」と噂が立つほど、彼の“穴子センサー”は鋭くなった。J2岡山では家庭菜園。「家のベランダでトマトやキュウリを育てています。赤ピーマンやオクラもある。あるとき、家に帰ってきたら自分の身長よりもツルが育っていて、メチャクチャでかいキュウリができていた」。こだわりはオーガニック肥料の使用。健康で美味しい野菜作りを追究した。
その性格はサッカーにも表れている。高校2年時からサッカーノートを付けている。鹿島入団後は練習用と試合用の2冊に分け始めた。岩政からの助言もあったが「テーマを持って練習をしないと上達しない」。ノートに記すのは精神的なことではなく、主に技術面。例えば試合でシュートを外したならば、そのシチュエーションを書き、トレーニングに落とし込んだ。サッカーノートは16年1月のリオ五輪アジア最終予選中も書き続けた。時々こっそり読み返したりもした。自分の足取りを確認し、今は何をすべきかー。途中出場ながら決勝ゴールを決めた同予選準々決勝U-23イラン代表戦は、まさに〝今、何をすべきか〟を証明した一撃だった。
「サッカーができる喜びを感じている」。4月に熊本大地震が発生した。直後に物資を届けに行ったが、変わり果てた故郷を見てサッカーへと意識は変わった。「頑張る姿を見せることができれば、少しでも元気になると思う。少しでも勇気づけたい」。どんなに疲れていても、故郷への思いが足を一歩先へと突き動かせる。
■あの頃~現在
サッカー取材に携わって10年以上経ちましたが…何人もの選手を取材する中で心底、魂が震える瞬間は何回かありました。そのうちの1回は彼です。
リオ五輪のメンバーは16年7月1日に発表。トヨは選出されませんでした。そんな中で迎えた7月3日のJ2リーグ清水戦。彼は1得点1アシストをマークしました。
試合後「スゴかったな」と伝えると「ほんと?じゃあ今後おごってよ」と笑いながら軽く返されました。
「意地」「プライド」を超越した「生きざま」。
気持ちが切れてもおかしくない状況下で見せたトヨの振る舞いは格好良く、今も鮮明に覚えています。
そんな彼はベルギーリーグから戻り、今季からC大阪でプレー。
上記のイラン戦、大量得点で勝利しなければ降格していたオイペンを救った劇的ハットトリック…インパクトが強いゴールを決めてきた彼はこう言ってます。
「ガンバ戦でゴール決めたいんだよね」