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フルサイズと縦横比

表紙の写真は「Chinon ES-1000」1998年頃、同級生かから借りて使っていました。
画素数は2モード切替で「標準 493x373画素」「スナップ 320 x 240画素」で縦横比1.33。当時発売されたCASIO QV-10も320x240画素。縦横比1.33
なぜその比率なのかというと、当時のPC用モニタが、
VGA 640x480
SVGA 800x600
XGA 1027x768
で、それと相性が良かったからではないかと思います。

で、昔話はもういいよ。

今、常々思っているのですが、デジタルカメラにおいて、銀塩フィルムの「35mm版」相当のセンサーを「フルサイズ」と呼ぶのは、なぜだろう?

35mmフィルムは幅35mmの映画用ロールフィルムとして開発された経緯があります。両端にフィルム給送用の穴が空いている。映画では、その穴を避けて「長辺24mm x 短辺18mm」の画像を記録。縦横比1.33
ということは長辺24mm×短辺18mmが「フルサイズ」ではないのか、とか言い出すのは無粋というものなのでしょう。

映画用ロールをスティルに転用したのはライカ。フィルムを横方向に給送し、かつ画像を「横位置」にしたかったからでしょう、映画2コマ分を縦に2つ並べた「36mm x 24mm」 の画像を記録。この規格がフィルムカメラの「35mm版(ライカ版)」。縦横比1.5

これと(ほぼ)同じセンサーサイズが「フルサイズ」と呼ばれているということになりますが、映画1コマに対する「ダブル」ではなのか?とういのは余計なお世話でしょう。

「35mmフィルムより昔」はどうなん?

世界初の「ネガ」はタルボット(英国)による「カロタイプ」。
これで撮影された写真を貼り付けた世界最初の写真集「自然の鉛筆」(1844〜46)。カロタイプは「引き伸ばし」が出来なかったため、ネガと印画紙の大きさは同じ。「最初のネガ」を基準にするならは、5.5インチx7.5インチ、縦横比1.36

だが、タルボット以前に、フランスのダゲールが、ネガを作らず感光体に直接画像を記録する「ダゲレオタイプ」を発表していた。複数のサイズがあり、「ホール・プレート」というのが「標準」で、それより大きい、それより小さい、もあったという。
「ホール・プレート」は6.5インチ x 8.5インチ。16.5cm x 21.6cm。これを「元祖フルサイズ」と呼ぶことについてダゲールさんは賛成してくれるのではないか。縦横比1.31

ウージェーヌ・アジェが「芸術家のための資料」として販売するために20世紀初頭のパリを撮影したガラス乾板は18cm x 24cm(8インチ x 10インチ、20.3cm x 25.4cmに近い)。当時のフランスのガラス乾板として普及していたサイズだったのかもしれません。アジェも引き伸ばしを行なっていません。ゆえに18cm×24cmのガラス乾板が必要だったのでしょう。重かっただろうな。
20世紀初頭、8x10を使用していた写真家は多い。エドワード・ウェストンもアンセル・アダムスも。Group f/64の名の由来は「8×10用レンズの最小絞り」。彼らにしてみれば「8 x 10がフルサイズ」?縦横比1.25

ところで現在、いや昭和で既にそうでしたが、印画紙の縦横比はだいたい1.25前後。
営業写真でよく使われる「六つ切」は、8×10と同じなので縦横比1.25
「四つ切」は10インチ×12インチなので、縦横比1.2
「大四つ切」は11インチ×14インチ。縦横比1.27
でも営業写真で四つ切・大四つ切って、多いのかな?写真館店頭に飾ってある写真は多分半切、14インチ x 17インチ(縦横比1.21)以上だと思いますが、半切をcmに換算すると34.5cm×41.5cm。家庭には置き場がない。

写真館、大昔は4x5(通称「しのご」、4 x 5インチ)が使われていたようですが、平成初期には中判フィルムが多かったみたいです。6x7(通称「ろくなな」6×7cm)縦横比1.17

平成中頃から写真館にデジタルカメラが導入されるようになりましたが、当時私が見たのは、EOS 5Dでした。2000万画素くらいの「フルサイズ」。写真館で実際に撮って貰ったことがあります(お客さんとして)。六つ切アルバム仕上げを注文。上がりを見て「もう中判フィルム要らない」と思いましたが、同時に「画像の縦横比1.5って、無駄多くない?」印画紙は六つ切縦横比1.25

プリンタ用紙、A4=21cm×29.7cm、縦横比1.41。縦横比はA版全て√2なので1.41、ルート長方形(白金長方形の1つでもある)。35mm版に近づいてきました。
1990年代頃、「A3ノビ」のプリンタ用紙が登場。32.9cm×48.3cm。縦横比1.47。期せずして「フルサイズに近い」プリント用紙が登場したのですが、A3ノビの本来の意図は、A4見開き=A3、29.7cm×42cmの周囲に、3.2cmと5.3cmの余白。その余白に印刷原稿の「トンボ」を印刷すること。
そもそもA3ノビが登場したとき、フルサイズのセンサーは無く、「縁なし印刷」の出来るプリンタもなかった。
その経緯を振り返ると「A3ノビ、フチなし印刷」って何?ですが、結果的に、かつてないほど「35mm版の縦横比に近い印画紙(印刷用紙)」という結果に。今、コンテスト応募では、A3ノビが多いのかも(応募も審査もていないので真実は分からない)。だとすれば、ライカ判=フルサイズ1.5はA3ノビと相性がよい、ということになりそう。
こんな未来を誰が予想しただろう。

もっとも営業写真で「A4」「A3ノビ」を使うと言う話は聞いたことがないです。デジタル撮影でも「六つ切」「八つ切」「四つ切」で納品。多くは六つ切縦横比1.25でしょうか。
富士の「中判デジタル」、センサーサイズ「43.8mm × 32.9mm」縦横比1.33は、これも狙ったのでしょうか?

マイクロフォーサーズの前身フォーサーズ「17.3mm × 13.0mm」縦横比1.33。でもマイクロフォーサーズ使ってる写真館、聞いたことない。

4500万画素級のフルサイズ縦横比1.5、例えばNikonZ9、Z8、Z7、D850、D780、全部縦5504 x 横8256ピクセルなのですが、横幅いっぱいに活かして六つ切にプリントするなら5504の1.25倍で、縦6880ピクセルで足りそうです。なんか長辺方向に1376列あまりそうなんですけど、気がつかなかったことにしておきます。
※実際には写真館では余白を付けてプリントするので、必ずしもその比率にはなりません。

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飯島 正樹
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