北極圏600キロ踏破の冒険記録①イカルイト
はじめまして。いいじまと申します。2019年4月7日〜5月5日にかけて、冒険家の方と共に男女14人で北極圏600キロを踏破しました。
2020年2月から再度、北極圏へ冒険します。次は単独で400キロ。主な目的は現地調査+冒険技術の向上です。
このnoteは2019年の北極冒険の記録(日記)になっています。よろしくお願いします。
冒険の概要
プロの冒険家の方と共に、カナダの北極圏バフィン島を各々ソリ一台を引き、600キロ踏破を目指す。隊員は12人の若者と冒険家、カメラマンの合計14人。
冒険のルート
パングナタングからスタート。キキクタルジュアクを経由してゴール地点であるクライドリバーを目指す。
北極冒険のリスク
・ホッキョクグマとの遭遇・寒冷地における凍傷・薄氷の踏み抜きによる落水・突発的な自然現象
冒険の記録 (出国・準備)
3月25日 日本出国。18:50フライト、羽田空港→トロント・ピアソン国際空港着。ピアソン→オワタ空港着。(エアカナダ)
3月29日 オタワ→イカルイト着(ファーストエア)
イカルイトとは?英: Iqaluit、イヌクティトゥット語: ᐃᖃᓗᐃᑦ)。人口は6,699人(2011年)の村。住民の約6割はイヌイットである。
3月31日 個人の持ち物準備とテントを張る練習をした。久しぶりにドラゴンフライを使用し、テント内でラーメンを食べた。テント設営短縮の為に、ポールで曲げない箇所をテープで固定し、極地用にした。
記録係で夜に集まっていると、新元号「令和」が発表された。うーん…ださい。
その後、オーロラを観測した。人生で初めてだ。煙みたいで綺麗ではなかったが、みんなで見たので綺麗に感じた。楽しい。カメラだとかなり綺麗に写るので驚いた。
寒冷地訓練開始
4月1日 (夜・-22°)
今日からハドソンズベイスタート(本番を想定した模擬訓練)。朝にホテルを出て本番同様、ソリを引きながら徒歩移動し、テントで寝泊まりしながら、目的地まで向かった。北極をついに歩いた。『北極に行く』と言い仕事を辞めてから、1年かかってしまった。少し泣きそうだ。それは言い過ぎか。また冒険したいと強く心に誓った。
そして、驚いたのが多くの人が疲れていることだった。体力に自信がない自分が…どうしちゃったのだろうか?明日になったら疲れるのか?夜の気温は-22°だった。
4月2日(22時、テント内温度-10°) ハドソンズスタート2日目。
6時起床、9時出発。朝食はオートミール。本番では150gだが、練習中なので100gと水1リットル飲む。
この日は風が強かった。歩くだけで一苦労。初ミトン、初ゴーグルを装備して出発。温度調整が慣れなくて苦しむ(北極での活動は、行動中は汗をかき暑く感じ、休憩中は寒く感じる為)ベンチレーションの調整、ハーネスを適切な長さにしないだけで、快適度が全く違う。他にも不便を感じることがあった。ゴーグルが凍って前が見えない、ネックウォーマーが固まって氷の首輪みたいになって冷たい。装備を使いこなさければ。
凍結したネックウォーマーとゴーグル
16時、テント設営。強風のため苦戦。靴下や手袋を乾かす。22時、就寝。
4月3日 6時起床、9時出発。みんな凍傷だったり、疲れているが、私は元気だ。日本より調子がいい。他の人より脂肪があるからだろうか?実際に疲れてそうな人は痩せ気味の人が多かった。
隊員の1人が歩行中に倒れた。本人曰く、力が入らなくなったらしい。恐らく低血糖症だろう。ハイチュウを与えて対処していた。
この日の夜は、とても綺麗なオーロラを目で確認することができた。カーテンのようにゆらゆら揺れていた。左右のオーロラが繋がり、どんどん大きくなってゆく。
星空とオーロラ。この瞬間、この感情で2度と同じオーロラ、この光景を見ることはできないんだろうな。こういう時を過ごすために、私は旅をしているのだろうと思う。とてもいい。最終日の夜だった。
4月4日 ハドソンズベイスタート最終日。いつも通り、6時起床、9時出発。昼頃にイカルイトの街に着く。みんなでピザを食べる。
今回は前のホテルと違う場所に泊まった。一階に映画館があり、立派だった。夜にみんなで一階のバーで飲み食いをした。明日から冒険だ。怖い。
クライドリバーには行けない
4月5日 朝早く起きて、ソリを車に詰め込み、イカルイト空港へ。到着後、フライトの延期を知らされる。冒険の日程が1日ズレてしまった。
夜のミーティング、冒険家の方からゴール地点であるクライドリバーに行けないかもと伝えられる。例年より、海水の溶けるスピードが早くて危険。パングナタング→キキクタルジュアクまでは行けるが、その先は困難のようだ。
『クライドリバーには行けない』
冒険が始まる前に、ゴール地点には行けないと説明され呆然とした。挑戦も出来ないとか悲しい。その為、新たにゴール地点を再設定する話し合いになった。
キキクタルジュアクに着いた時、クライドリバーに行くか(海氷の状況次第)、行くことが出来なかった場合、新たな目標をどうするか、決めることになった。
(衛生写真。海氷が解けた場所が黒くなっている。薄氷を踏み抜き、落水する危険性がある。)
冒険家が私たちに助言を下さった。
『登山では山頂、極地ではどこかの地点といったものに移動の大義名分を持たせて行動原理としてきたが、移動の効率化や手法の先鋭化に囚われると北極という土地を見逃してしまう
土地を見逃してしまうと、せっかくここにいる意味が薄れてしまうので、このメンバーで、ここにいることを噛み締めながら、30日という時間をどう使うか個々でキキクタルジュアクまでの行程で考えるといいかな』
『なんのためにここに来て、移動の中に何を求めるのか、求めるものによっては移動ではなく、滞在からもたらされる物もあるかも知れない(冒険でなく、イヌイットの村に滞在も、選択肢としてはありという意味)』
『みんなにとって「移動」とは手段なのか「目的なのか」が今後の行動を決める大きなテーマとなるかな』
冒険の意義について、そこまで深く考えたことがなかったので、すぐに言語化することは出来なかった。浅い考えだが、とりあえず日記に記してみる。
移動とは手段か?目的か?
どちらかと言うと、目的でもある。冒険の道中に色々な景色が見たい。そして、冒険を通して芽生える感情が知りたいから。
なんのためにはここに来たのか?
北極に行きたかったから。冒険家になりたいから。
30日間をどう使いたいか?
次に繋がる冒険がしたい。これで人生最後の冒険は嫌だ。
ミーティングの後は、隊の若者メンバーだけで話合いをした。みんなが出した結論は、パングナタング⇆キキクタルジュアクを一往復半するというものだった。私は同じ所を何回も行くのに興味ないので、キキクタルジュアク後は、イヌイットの村で寒冷地の知恵を学びたいと考えている。
理想は本来の目標であるクライドリバー行くこと。しかし、1度溶けた海氷は、また固まることはない。そして、冒険家の方が改まって説明するということは、行くことは本当に困難だな、と思った。
海氷が溶けないことを、祈るしかできないのが悔しい。クライドリバーに行きたい。
(北極圏600キロ踏破の冒険記録・パングナタングに続く。)
おわりに
最後まで読んで下さりありがとうございました。
ヤギの郵便屋活動、北極圏600キロ踏破の冒険など、皆さまの協力、応援に支えられて達成することができました。ありがとうございます。
2020年2月28日から、北極圏単独冒険に挑戦する予定です。資金は期間工で貯めましたが、より多くの資金を確保することができるのなら、冒険の質や活動の幅を広げることが可能です。
そこで皆様にお願いがあります。サポートやこの記事のシェア、拡散をお願いしたいのです。
今はまだ未熟ですが、経験と知識を蓄え、より世界を見て周れる力をつけていきたいです。(北極、南極、砂漠、世界をもっと冒険したい)
今後とも応援お願いします。
PS.要らなくなったGoPro、ドローン等を寄贈して下さる方も募集しております。荷物制限、環境により使用できない可能性もありますが、上手くいけば北極の映像撮影ができます。協力しても良いよ、という方はツイッターにてDMお願いします。