愛称は「ねこっちょ」!伝統とアートがあふれる門前町を「ネコの手」を借りて活性化
金沢駅から徒歩10分、金沢東別院(浄土真宗金沢別院)の門前町として古くから栄えてきた「金澤表参道」。アーケードがトレードマークだった「横安江町商店街」の方がなじみ深い方も多いかもしれません。
昭和の街並みとクラフトマーケットが人気
金澤表参道は、金沢駅から近江町市場や兼六園、ひがし茶屋街など、金沢を代表する観光地への道すがらにある好立地にありますが、全国の多くの商店街と同様、「集客力」「高齢化による後継問題」「大型店との競合」などが課題となっています。
もちろん金沢東別院を核として、藩政期から栄えてきた伝統と歴史、昭和の街並みが色濃く残る光景は大いなる魅力です。年に数回開催されるクラフトマーケット「よこっちょ・ポッケまーと」は、手づくり雑貨やおしゃれな工芸品、骨董品、新鮮な野菜&おいしいものなどがたくさん集まるイベントとして人気を博していますし、新鮮な野菜が買える「よこっちょ・ファーマーズマーケット」は毎週水曜に定期開催されています。集客に積極的に取り組んできました。
にぎわいづくりにもう一つの柱を
魅力的なコンテンツには事欠かないものの、イベントによる集客は一時的。インバウンドが旺盛だった際は外国人観光客も多く訪れましたが、やはり最も増やしたいのは地元の新規客と常連客、そして多くが素通りされている観光客も取り込みたい。
そう考えたときに、世はネコ派全盛期、世界的にブームとなっている“ネコ”を使ったプロモーション活動を思いつきました。
活性化に繋がるなら「ネコの手も借りたい」。それならいっそ借りちゃおう!
商店街の愛称「よこっちょ」をもじり、「ねこっちょ」と名付け統一感を持たせました。
思わず集めたくなる!デザイン性の高いノベルティ
まず行ったのが、インバウンド需要が旺盛だった2019年、海外向けに配信したYouTubeへの動画投稿。街の看板ネコが案内役となって商店街の魅力を発信、「歴史編」「グルメ編」「くらし編」のテーマ別に紹介しました。海外客が多くなればきっと地元客も注目するという意図をもって、先に英語版を公開しました。追って日本語版の配信もスタートしました。
ノベルティも充実させました。熱心な蒐集家もいるポストカードに着目。商店街を紹介するマップなどでは、いずれ捨てられてしまう可能性が高いですが、保存性が高く、実際にハガキとして送付できる実用性も考慮しました。
全部で24種類、頭にネクタイを巻きほろ酔い気分のネコ、靴の中で一休みしているネコなど、各店のイメージに合わせたかわいいイラストが描かれ、思わず集めたくなるデザインに仕上がっています。
普段づかいのグッズでさりげなく魅力発信
ネコのイラストと商店街の店舗紹介を兼ねたイラストマップを作成、これを繰り返し使える「手ぬぐい」に仕立てました。「よこっちょ・ポッケまーと」などで来街された方や常連客に配布し、認知度向上に役立てています。
また、ネコのイラストをマスキングテープにも展開。各商店が荷物を梱包・発送する際にガムテープがわりに使ってもらうことで、各加盟店や商店街の魅力発信に一役買ってもらえることを狙いました。
これらの発信拠点ベースとして、「ねこっちょ」専用のwebページを作成しました。ポストカード、動画の宣伝とともに店舗紹介を兼ねたイラストマップも掲載、縦スクロールをすると商店街の街路をネコが走っていく仕組みで愛らしい仕上がりとなっています。
切り口を変えてコンテンツを発信し続けること
よく言われるように、商店街の活性化に特効薬はありません。できることは、新規客・既存客を問わず消費者に対して魅力的なコンテンツを、地道に発信し続けること。そこに新しい「切り口」やちょっとした「仕掛け」を忍ばせることが大事です。
金澤表参道は、好奇心の高い客層をメインターゲットとし、これまでも音楽や芸術・アートを軸としたイベントを開催してきました。イメージが根付いているこの路線は継承しつつ、従来のアプローチとは全く新しい「切り口」としてネコを「起用」することで、さらなる滞在時間の増加や来街頻度の向上に繋がる仕掛けづくり行っています。
「ネコの手」を借りたチャレンジは、今後もしなやかに継続していくに違いありません。