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一人が寂しかった頃の話

職場の同僚との雑談の中で、「自分一人でどこまで行けるか」という話になった。

私は、ランチでもカラオケでもテーマパークでも一人で行ける。むしろ単独行動のほうが、自由で好きだ。多少無理なスケジュールでも負荷がかかるのは自分の足と財布くらいで、誰にもそれを強いなくていい。
私の感覚は同僚のそれとは少し違ったらしく、「何か羨ましい」と言われた。

でも、思い返せば私はずっと一人が好きだったわけではない。一人でいることが楽しくなったのは大学生になってからだ。

高校までは、友達がいないと辛い場面が多かった。
誰かと自由にペアを組むときは相手に困ったし、修学旅行の部屋割り決めのときまでも、私は余り物だった。授業中も休み時間も誰かと一緒にいることがみんなの当たり前で、一人で席に座っている自分は浮いた存在だと感じていた。
部活に入っていたおかげで完全な孤立は免れたものの、漠然と寂しい中学/高校時代を過ごした。

社会人になった今思うと、一人で休み時間を消費してるだけで寂しいような気持ちになる必要なんてどこにもない。


大学に入ってから、私の世界は広がった。
一人で1時間超の道のりを通学した。ちょっとした旅行に行くような場所だと思っていた都会の景色が、見慣れたものになった。
大学の履修科目も同期の誰とも合わせず、自分のやりたいものだけを選んだ。バイトのために部活もサークルも入らなかった。
友達を作っておけば授業を休むときに持ちつ持たれつできる、と聞いたことがあったけど、自分が全部出席すれば済む話だと友達を積極的に増やすこともしなかった。

それで何の問題もなかった。授業は大変だし、通学するだけでも体力を削られたけど、高校生の頃までよりもずっと気が楽で、充実感があったと思う。
寂しいなと思う暇なんてなかった。

今も友達とはあまり連絡を取っていない。お互いに忙しいのもあるけれど、無理に会う必要もないほどには、一人の時間が充実しているからだ。

たぶん、高校までは学校の中だけが世界だった。
そこでは絶対に他人と上手くやらなければならない。孤独で寂しい、無為な人生なのだと錯覚してしまうから。
でも実際そんなことは全くない。一歩外へ出てみると、一人でいる人なんていくらでもいるし、一人だからこその楽しみもある。寂しいとか思ってられない。


もしも今の私が、中学生、高校生の頃の私に何かひとつ言えるとしたら、「人と無理に群れる必要はない」と言いたい。
「学校の中では一人でも、世界はそんなことどうでもいいぐらい広い」と。

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