vol.2 工程表は建築設計業務の設計図
今回の連載は工程表についてあれこれ語っていこうと思います。
僕は工程表というのはタイトル通り、設計をどのように、どの手順で実行していくかを、そして各工程にどのくらいの時間がかかるのかを組み立て、関係者と共有するために図面と同じく設計業務において重要なものだと考えています。いわば設計業務の設計図という捉え方をしています。
作ると見える設計業務の道筋。
工程表を作るにあたり、どんな要素を理解して作成していかなければならないのかを考えていきたいと思います。工程表にはいわゆる5W1Hのように、いつ、どこで、だれが、何を、どの期間で行うかを記載していく必要があります。工程表を作成して、これらを明らかにすることにより、
その業務においてどのぐらいの時間が必要かを算定することができる (つまり必要な人工を明らかにできる)
どんなメンバーを揃えるべきかが整理できる
避けては通れない必須事項や手順が整理され、リスクヘッジを適正に行うことができる
という感じで、業務を実行していくにあたり、予測を立てることができます。というか、この予測をなくして円滑な業務運営はあり得ないのです。
「そんな当たり前のことを何を言ってるの?」と感じられる方もいらっしゃると思いますが、その当たり前のことに意識を向けられない方が意外と多いのです。がむしゃらに、行き当たりばったりで業務を進行していくと無駄な作業が発生します。また、その結果として決められた工期に成果物を提出できない事態が発生することもあるでしょう。
時間に対して常に意識的に動くためにも、工程表は非常に重要なものだと僕は本当に思うのです。
工程はマクロからミクロを考える。そしてミクロからマクロを調整する。
僕が工程表を作るにあたり、いきなり細かな作業を落とし込んでいく前にまずは大きなフェーズの設定から始めます。
例えば設計業務期間が5か月あったとして、
フェーズ1は色んな可能性を探る期間。つまり議論を発散させる機関
フェーズ2は設計案を固めていくために色んなことを決定していく、つまり収束させるための期間
フェーズ3は図面をまとめるための期間、つまり作業をガッツリ行うタイミング
まず大きく時間に役割を与えると作業工程の組み立てがイメージしやすくなります。そして各フェーズに必要な作業や、やらなければならない内容を細かく設定していきます。
フェーズ1ではラフなスケッチや模型、パースをたくさん作り、案の可能性を広げる作業が中心になり、フェーズ2では図面をベースに方向性を決めていきます。フェーズ3になるとクライアントとの打合せの頻度も減らし、成果物の作成に集中できる環境を整備するという風に業務進捗をコントロールすることが可能となりますし、各フェーズごとで力を入れるべきアウトプットも想定することができます。
細かなアウトプットまでイメージして工程を振り返ると、つまりミクロな工程ができた段階で、そもそも工期が十分に確保されていないということに気づくこともあります。その場合、私はまずクライアントに自分が考える適正期間をしっかりと提示して協議をします。工期設定協議は後からやるのではなく、最初にやるのが重要です。というか、「すいません!やっぱり終わりません!」と後で説明し、納得していただくのはかなり困難だと思います。しっかり業務の初期に論理的に説明をして納得いただきながら、適正な設計工期を確保していきたいものです。
工程表はあくまでベンチマーク
工程表を作成し円滑に作業を進めていたのに、急にプロジェクトが止まったり、予期せぬ事象で違う作業をしなくてはならなくなったりしますよね。時には協力者の都合により工程を組み替えなくてはならない場面にも出くわします。
しかし、しょうがないものはしょうがないのです。どんなに緻密に進めても工程は生き物のように変化していくものです。でも最初にしっかりとベンチマークとして工程表が存在していると、どのやり方で、どの手順を調整するとリカバリーできそうかを把握するのが容易です。道に迷っても灯台がしっかり見えているから、また正しい道に戻ることができるのです。
次回予告
いかがでしたでしょうか。工程表を作る意義とその役割について説明をさせていただきました。次回のコンテンツは今回の工程表の説明相手にもなるクライアントの属性(BtoCとBtoB)による設計業務の違いについて、僕が感じていることを綴っていきたいと思います。
私が作る工程表を公開(ここから有料部分)
この連載は基本無料で設計実務に携われている方々へ書かせていただいています。私のお伝えしたい事柄は無料部分をお読みいただければ充分理解していただける内容になっています。
ここからは具体的に私がどんな工程表を作成しているのかを具体例と共に解説します。ただし、不用意な拡散を避けるために、また私のノウハウ部分を具体化している資料は有料となっておりますので、ご了承ください。
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