vol.1 建築設計実務は未来との戦い
連載vol.1はこんなテーマで進めたいです。タイトルだけ見ると、めちゃくちゃクリエイティブな話をしそうな感じですが、少し論点は違います。未来との戦いとは、詰まるところリスクヘッジに尽きるのではないかと僕は感じています。そして設計業務はそのリスクヘッジとの戦いでもあるなと思っています。
設計業務の定義
設計業務ってなにをすることなのか。
皆さん当然、日々当たり前のように実行されていると思いますが、改めてその定義を確認したいと思います。建築士法に定める用語の定義には下記のように記されています。
つまり、どシンプルにいうと図面を作ること、そしてその図面通り工事が行われているか、確認することが設計業務を請け負うということです。建築士法に定義されている設計は、基本設計実施設計分けられ、その後に工事監理が付いてくる。法律に位置付けられていない基本構想(計画)という業務範疇もあり、その一体の流れが建築家が担うべき設計業務です。
建築設計実務のパラドックス
設計業務は基本構想(計画)→基本設計→実施設計→工事監理という順番で竣工に向かっていきます。そして、マクロな視点から計画を詰めていき、ミクロを決定してきます。しかしながらこのマクロな視点を決定していくためにはミクロがしっかりと見通せる必要があり、未来を見通す、つまりリスクを察知できる能力がとても、とてつもなく重要になってくるのです。
現場でどのように建築が出来上がっていくのかを知らないと様々な基準の裏付けが必要な仕様決定やディティールを考えることが難しくなります。実施設計がまとめられないと、基本設計での提案や検討に根拠が希薄になり、基本設計の成果物として脆弱な内容となってしまいます。つまり実現不可能な図面になってしまうということです。基本設計で集団規定や建築意匠をうまくまとめられないと基本構想やボリュームチェックなどの与件チェックにおける重要ポイントの把握が出来きずに検討がまとめられないでしょう。
業務が進むフローに対して常に先回りをして未来にあるネガティブの目を摘み取っていくことが大切だと思いますし、それが出来てはじめて業務をマネジメント出来ていると言えるのだと思います。
この逆説的な思考の重要性にこそ設計者として、建築家として一人前になるには時間がかかると言われる所以なんだよなぁと思っています。僕も設計実務をはじめて14、5年経ちますが今だに知らないことだらけで「どんだけ範囲が広い技術か必要なんだよ!」と思ったりします。
ポジティブな未来とネガティブな未来の両方を描くことが必要
建築設計における、クリエイティブな部分は常に挑戦であり、未来を発展させるために何が出来るかを考えることです。めちゃくちゃ楽しいとこですよね。一方で設計実務においてはそのクリエイティブなこと以外の部分で如何に未来を先回りしながら、少しネガティブな未来を想像しながらリスクの目を摘んでいく能力も同時に求められます。リスク回避が出来ていればよりクリエイティブな部分に集中して、よりポジティブな未来を提示出来るようになりますよね。
次回予告
今回は大まかな設計業務の流れを改めて確認しつつ、設計業務がはらんでいる矛盾というか二面性について紐解いてみました。
次回は今日書かせていただい未来を見通すための第一歩になると僕は思っているツール、工程表について考えていきたいと思っています。そして次回からは有料部分を設けるかもしれません。まだ考えているので必ずということではないですが、実際に使ってる資料(もちろん秘匿性や表現は調整した上で)も載せると理解していただきやすいけど、変な議論にならないようリスクヘッジとして設定しようかなと。
それではまだ次回よろしくお願いします。
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