IUと漱石
韓国における著名なアーティストの一人として、IUがいる。彼女の代表曲の中に「good day」があるのだが、その日本語と韓国語それぞれの歌詞を比較するとあることが見えてくる…
韓国語Ver.では「나는요 오빠가 좋은걸 어떡해」(私は、オッパ〈年上の男性の意〉が好きよ。どうしよう)という歌詞が,日本語Ver.では「聞いて、オッパがずっと…あのね…」という歌詞に変わっている。
韓国語Ver.では自分の気持ちを素直に伝えているのに対し、日本語Ver.では相手への感情に対して最後まで直接言い切るようなことはせず、最後の「あのね」の後に言葉が続くような印象を持たせている。
調べてみると最初に韓国人の作曲家・作詞家によって韓国語の「goo day」が作られ、それがのちに日本人の作詞家?によって、日本語Ver.が作られたようだ。
この違いに気がついたとき、夏目漱石に関するある「伝説的」な逸話が浮かんだ。¨I love you¨をなんと日本語で訳せばよいか。
漱石の答えは、「月がきれいですね」であった。無論、直訳すれば「私はあなたのことが、好きです。」という表現になるのであろうが、そのような直接的な表現を日本人はしないというのが、彼の意見のようである。この逸話から見えてくるのは、「沈黙は美徳である日本人」という漱石の意識である。
没後100年以上たつ漱石と、現代のK-popの作詞家の共通点は「日本人」であるということである。性別も時代背景も異なる両者だが、もともと外国のものを日本へと導入する際に、共に直接的な表現は避けたのだ。
その点で我々自身が考える「日本人」としての自意識は、100年以上変化がないのであろう。当たり前だがこの100年で、日本にとって世界はより身近な存在となった。次の100年で日本人自身が描く「日本人」はどのように変化するのか。
「沈黙は日本人にとって美徳であり続ける」のであろうか?
最後に「good day」日本語Ver.最後の歌詞を紹介して締めとする。
「でも言えないの…」
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