「民法上の不法行為は解散命令要件にあたらない」とどうなるの?
「民法上の不法行為は解散命令要件にあたらない」
今日10月18日の岸田総理の答弁が何をもたらすのか、どうすればいいのか。
Q&Aで急ぎ短くnoteにまとめます。
Q:「民法上の不法行為」とはどういうこと?
A:「不法行為」には刑法に反する行為もあれば、民法に反する行為もあります。たとえば旧統一教会の問題の本質は、正体隠しの伝道で人生の自由な選択肢を奪う行為や、因縁トークで不安をあおりそれにつけこんで高額な献金を要求する行為などです。そして、旧統一教会のこうした行為は、民法709条や715条に違反する、まさに民法上の不法行為であるとして組織的な違法が多数裁判例で認められてきました。
Q:じゃあ、「民法上の不法行為」が解散命令要件にあたらないとなると、旧統一教会に対して解散命令できるの?
A:旧統一教会問題の核心は、組織的な「民法上の不法行為」の繰り返しが、多数の信者や家族の不幸をもたらしているということにあります。なので、「民法上の不法行為」が解散命令要件にあたらないとなれば、解散命令の主要な前提事実がなくなると考えるのが自然です。とすれば、何のために岸田政権は質問権を行使するのか、その理由がほとんどなくなるということにもなってきます。
Q:相談案件の中には刑法に反する可能性があるものも、と言ってたけど…。
A:1700件もの相談があれば、当然警察につなげるべきものが出てきても不思議はありません。刑法に反する可能性があるものもないとは言えないでしょう。ただ、実際に警察による捜査が始まり、検察官による起訴がなされ、裁判官による有罪判決が確定するものがあるのかというと、まるで雲をつかむような話です。将来の刑事事件の可能性を匂わせる一方で、今存在する多数の民事事件を前提事実から外せば、結果蓋をあけたら解散命令請求できる事案がなかったということになりそうです。
Q:だとすると、「民法上の不法行為はあたらない」という総理答弁はどう考えれば?
A:せめて過去の政府答弁に引き戻すような形で修正をすればよいと思います。例えば平成7年11月29日の小野元之文化庁次長は、「81条の1項1号でございますが、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたということでございますから、これはおそらくほとんどの場合、犯罪行為といったもの以外には余り事例がないのではないかというふうに考えられます」(第134回国会参議院宗教法人等に関する特別委員会)。つまり、政府答弁はこれまでも消極解釈ではあったものの、法律解釈の話を事例の話に持ちこみながら、なお犯罪以外の法令違反もあてはまる余地は残してきたわけです。ここに引き戻すような形での総理答弁の修正は、今ならギリギリ可能です。
過去の政府答弁にあわせる形での総理の答弁修正。
旧統一教会問題の解決のために、死活的に必要で現実的な選択肢だと思います。
弁護士・一般社団法人国際人道プラットフォーム代表
菅野志桜里
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