【徹底解説】DAOってなんだお?〜課題と未来
こんにちは!
Ninja DAOのイケハヤです。
ここ最近、DAO(自律分散型組織)についての議論が盛り上がってきています。
リアルな当事者目線で、DAOについて解説していきます。
DAOは、400年ぶりの大発明!(かも)
まず。
DAOとは「自律分散型組織」を意味する用語です。
一応、英語だと「Decentralized Autonomous Organization」ですね。長いので覚える必要はないですw
なぜこの「DAO」が注目されているかというと、その根底には「株式会社って古くね???」と考える人たちが出てきているから、だとぼくは理解しています。
株式会社の歴史をたどると、1602年の「東インド会社」から始まっていると言われています。
……そう、株式会社って、今から400年以上前に生み出された仕組みなんですね!
雑に考えても、何かもっといい仕組みができそうな気がしてきますよね。
で、「株式会社よりイケてる(かもしれない)仕組み」である、DAOが出てきたわけです。
実に、400年ぶりの発明なのです!こんな時代に生きてるなんて、なかなかすごいことですよね〜。
DAOの2つの特徴。
さて、DAOはどんな特徴があるんだお?
まずは、自律的であるということです。
自律的というのは耳慣れない日本語ですが、「自動的にバランスが調整され、しかも自動的に成長していく」といったニュアンスで捉えればいいと思います。
そして同時に、分散的であることも重要な特徴です。
組織が分散的であるということは、「社長がいない」ということです。
誰かの命令で動くのではなく、各々が自発的に活動し、その結果として組織が成長していくイメージです。
ざっくり2点でまとめると、
①社長(絶対的な権力者)がいない
②自動的に調整され、しかも成長していく
そんな魔法のような組織形態が、DAOなんです。
そんな組織、無理じゃね????
……はい、思いますよね。そんな組織が作れたら苦労しないよ……と。
でも、世の中にはたしかにDAOは存在しています。
もっとも成功しているDAOは、なんといってもビットコインです。
ビットコインには、社長はいません。
そしてビットコインは、自律的に成長しています。
ビットコインの自律性を知るエピソードとしては、中国がビットコイン禁止した事件を振り返るのがいいでしょう。
もともと、ビットコインのネットワークは、その大部分が中国のマイニング企業によって維持されていました。
ちょっと古いですが、2018年の状況が以下です。8割が中国のマイニング企業だったのです。
この状況はなかなか怖くて、たとえば中国政府が「マイニング企業をすべて国営化する!」とか言い出したらどうでしょう。
一時的とはいえ、ビットコインのネットワークが実質的にほぼ中国政府のものになってしまうリスクがあったのです。
ですが、2021年に中国はビットコインのみならず、仮想通貨を全面的に禁止しました。もちろんマイニングもです。
で、何が起きたか。
一時、ビットコインのネットワークの計算力を示す「ハッシュレート」は激減しました。中国のマイニング企業が操業を停止したためだと思われます。
そのあと……計算力は回復し、ATH(新記録)を更新しています。
何が起きたかと言うと、中国が離脱することで、アメリカ企業のマイニングシェアが一気に広がったのです。この図がわかりやすいですね(一番下にある青がアメリカです)。
いまや、アメリカは世界最大のビットコインマイニング国家です。
ビットコインネットワークの長い懸念だった、「中国リスク」はすでに十分すぎるほど排除されているのです。
さすがに、アメリカがマイニングを禁止することはないと思うので、だいぶ安心感が出ましたね!
この喜ばしい結果は、誰かがコントロールしてもたらされたわけではありません。
これが「自律的」、すなわち「自動的に調整され、しかも発展していく」ということです。
DAOを作る挑戦。
ビットコインネットワークは、偉大すぎるDAOです。
今や「組織」という枠組みを超えた存在になっているので、これをDAOと呼ぶのは不適切なのかもしれません。
が、少なくとも、ビットコインができたばかりのときは、まだ「組織」感は強かったはずなんですよね。
13年前は、数名の開発者と、数名のマイナーたちがワイワイと楽しんでいたのでしょう。
それが今や、世界を覆い尽くす存在になっているので、これぞサイファーパンク!って感じです。
世界を見ると、目下、さまざまなDAOが登場しています。これも少し古いですが、こんな画像もありますね。
ぼくが関わっている「Ninja DAO」も、こうした挑戦のひとつです。
DAOの具体例として、Ninja DAOの活動を解説しましょう。
キャラクタービジネスをみんなで作るDAO。
Ninja DAOが扱う事業領域は「キャラクタービジネス」です。「IPビジネス」とも言われますね。
「キャラクタービジネスをDAOでできたら面白い!」と思って立ち上げました。
「CryptoNinja」がメイン事業で、現在NFTコレクションとして展開しています。
CryptoNinjaはいわゆる「UGC(ユーザー投稿コンテンツ)」を大歓迎しており、しかも、商用利用も全面的に許可しています。
2022年1月時点で、500人を超えるクリエイターがCryptoNinjaを題材にしたファンアート作品を投稿しています。
数があまりにも多すぎて紹介しきれませんが、一例として、「直近数時間」で投稿された作品をシェアします。
投稿が多い日では、1日で10点を超えるファンアートが公開されることもあります。
ここで重要なのは、CryptoNinjaのファンアートは、商用利用を公式で許可している点です。
一般的にキャラクタービジネスにおいては、ユーザーやファンによる「商用利用」は禁止されています。
勝手にピカチュウのグッズを作って売ったら逮捕だし、コミケで同人誌を売るのも、厳密にいえば著作権違反だったりもします(黙認されてる状況)。
CryptoNinjaは、この点を改善したキャラクターブランドなのです。
ファンは自由に商用利用してOKです。バシバシ稼いでください。
ガイドラインを守ってもらえれば、もちろん無許可で大丈夫です。勝手にやっちゃってください。
制作したコンテンツやグッズが売れた場合、売上はすべてクリエイターがもっていってかまいません。
もちろんイケハヤが手数料を取ることはありません(面倒ですし)。
DAOは、UGCと相性がとてもいいと考えています。
参加者がコンテンツを作り、それぞれがマネタイズをする。
その結果、「CryptoNinja」キャラクターたちが広く知られることになり、さらにコンテンツが見られ、売れやすくなる。
イラスト以外にも、アニメ、ゲーム、小説、マンガ、YouTubeチャンネルなども生まれています。
世界中の誰もが自由に利用できる。しかも世界中にファンが無数にいて、いい作品を作ったらお金も稼げる。
そんなIPがあったら、ワクワクしませんか?
その業種、DAOでやったら面白いかも?
Ninja DAOは、キャラクタービジネス(IPビジネス)をDAO化する挑戦です。
同様に、「この業種をDAO化したらどうなるだろう?」と考えるのは、DAOについて理解を深める一歩となります。
DAOは、社長が存在せず、しかも自律的に成長していく組織です。
その前提で……
キャラクタービジネスをDAO化したら?(CryptoNinja)
ブログメディアをDAO化したら?(Bankless DAO)
ゲームギルドをDAO化したら?(YGG)
飲食店をDAO化したら?
ガジェットメーカーをDAO化したら?
配送業をDAO化したら?
……なんて感じです。
たとえば、飲食店を自律分散的に展開できたら、どうでしょう。
具体的なイメージは、吉野家のような大手チェーン(フランチャイズ)が近そうです。
けれど、今回はDAOなので、社長はいません。
DAOには、ビジョンとコミュニティが必要です。
「世界に通用する牛丼を作る」なんてビジョンを掲げて、そこに人を集めて、コミュニティを作ります。
共通のレシピと食材調達ルートを作り、それぞれが自由に好きな場所で、好きなときに販売していく、なんて感じでしょうか。
このブランドはDAOなので、大手チェーンのように、参加者が売上を「上納」する必要もありません。売上はそれぞれが自由に利用できます。
余剰利益をDAOのコミュニティウォレットに寄贈して、新しい店舗を立ち上げる人の原資に回す人も出てきそうです。
新規参加者が成功すれば、全体のブランドが強化され、自分の店舗にも好影響があるからです。
DAOなので、株式はありません。
この場合は「ガバナンストークン」が発行され、それがDAOの方向性を決めるときに使われるのでしょう。牛丼の素材をどこから調達するかを、ガバナンストークンで決めたら楽しいですね。
……こうして考えていくと、飲食店ブランドをDAOで展開していくのは、あながち無理ではない気もしてきます。
20年後には、スターバックスがDAOになっているかもしれませんね。
さらに想像を膨らませていくと、業種や扱うプロダクトによって、DAO化の向き不向き、あるいは「望ましいDAO化の程度」があることもわかってきます。
DAO化しやすい業種、プロダクトの条件は?
今見えている範囲でDAOと相性がいいといえる条件は、
参加者が、
・パーミッションレス(許可を得る必要なく)に
・コミュニティのリソース(ブランド、人材、素材、ファンド、顧客基盤など)を使って
・経済的な利益あるいは精神的な満足を得る機会がある
という感じなのかな〜と思ってます。
ポイントは「パーミッションレス」であることです。
参加者がDAOを通して、何らかの利益・満足を得るために、第三者の許可が必要な場合は、それたぶんDAOじゃないほうがいい気がしています。
補足的には、参加者が利益を得れば得るほど、コミュニティのリソースが豊かになっていく、という構造も重要ですね。
DAOにまつわる、5つの課題。
とはいえ、現実的には、DAOを作るのは非常に困難です。結局、これは夢に終わる話なのかもしれません。
まず、ほとんどのDAOは、まだ十分に分散的でも、自律的でもありません。
DAOも組織の一種です。組織である以上、少なくとも当初は、一定のリーダーシップが求められます。ビットコインですら、サトシ・ナカモトというリーダーがいたわけですから。
DAOは、徐々にDAOになっていくものだと考えています。Ninja DAOも、DAOを名乗っていますが、今はまだ「名ばかりDAO」です。これは仕方ないことで、少しずつ分散化を進めていきます。
リアルな話では、DAO関係は税務・法務の扱いが謎すぎる……という問題もあります。
たとえば、DAOで「コミュニティウォレット」を用意するとき、これが法的・税務的にどう扱われるのか……ぼくはよくわかってません。
それもあって、Ninja DAOにはコミュニティウォレットはまだありません。
日本では「トークンの販売」に対する非常に厳しい規制があり、また、法人保有の仮想通貨に含み益課税が発生する問題もあります。
DAOという組織形態は、新しすぎるがゆえに、既存のルールが想定していないケースが頻繁に発生します。日本でこうした状況が整理されていくのは、いったいいつのことになるんでしょうね……。
また、インセンティブ設計の問題もあります。
DAOにおいては一般的に、報酬としてガバナンストークンが配付されますが、適切な計画と仕組みをもって配付しないと、金の亡者が世界中から集まって地獄になりますw
ガバナンストークンの価格が下がって、DAO内が炎上する……という事例も起こっているようです。
ガバナンストークンはあくまでおまけであって、基本的にはそれぞれが独自に経済的な利益を追求できる構造が望ましいのかな、と思っています。
DAOを運営するにあたって、十分にツールが開発されていないことも問題です。
Ninja DAOでは「Snapshot」「POAP」「Project Galaxy」「Guild」「Collab.land」などなどのDAO関係のツールを使っていますが、いずれも「使いやすい」とは言えないフェーズです。
時間の問題ではあるんですが、DAOという最新の活動をしている割に、スプレッドシート使って手動で管理してるのは矛盾がありますねw
最後に、ユーザーのクリプトリテラシー問題もあります。
DAOに参加するのなら、最低限、Metamaskは使えないと話になりません。NFTも投票トークンも受け取れませんから……。
けれど、Metamaskを使うためには、相当なリテラシーが求められるのが現実です。
また、クリプトの世界は詐欺師だらけなので、十分な理解がないままDAOに参加すると、ハッキングされて終了……ということもありえます。
それもあって、Ninja DAOでは「クリプトリテラシー検定」という事業も立ち上げています。
検定を受ける課程でクリプトについて学んでもらい、ある程度レベルアップしてからDAOに関わってほしい、という狙いです。地道です……。
というわけで、課題は多いです。
①ほとんどのDAOは、まだ十分に分散的でも、自律的でもない
②税務・法務が謎
③インセンティブ設計が難しい
④ツールが未整備
⑤参加するために一定のクリプトリテラシーが必要
一朝一夕でDAOになるものでもないので、当面は、コミュニティの文化をじっくり育てていく感じです。
DAOの未来は明るいよ。
まだまだ実現困難であるDAOですが、もしもDAOが一般化したら、これはかなり革命的なことなんです。
まず、DAOが普及することで、国籍・年齢・性別・宗教などの枠組みを超えて、人々がともに働くことができるようになります。
DAOは会社と違って、関わるメンバーの個人情報を取得しません。
これはすでに「Ninja DAO」でも見られている状況で、たとえば「クリプトリテラシー検定」を作ってくれたメンバーの個人情報を、ぼくはもちろん知りません。
みんなアイコンです。性別・年齢すら謎……。でも、みなさん超優秀です!
DAOは完全な実力主義です。
「女性だから」「若者だから」「◯◯人だから」なんて前時代的な不利条件は、完全に取っ払われます。
また、DAOは株式会社に比べて、成功したとき、利用者・貢献者に広く富が分配される可能性が高いです。
たとえば、Googleは大成功してますが、ぼくらユーザーは、別段そこから金銭的な利益は得ていません。
DAOは、株式会社よりも、投資・参加機会が広く用意されています。
未上場の株式会社に投資するのは一般に困難ですが、できたばかりのDAOのガバナンストークンをゲットするのはかんたんです。
貢献すればもらえることもありますし、流動性があればDEXで買うこともできます。
まとめると、DAOが普及することで、
①年齢・性別・国籍などを超越した、グローバルな実力主義空間が出現する
②株式会社よりも、広く投資機会、参加機会が与えられる
なんて影響が期待できると考えています!
さらに学びたい方向けに。
ひとまず本稿はこちらで終了!
ですが、まだまだDAOについては語り尽くせないし、日々アップデートもされています。
学習を深めるために、いくつかのリンクを掲載しておきます。
①イケハヤによるDAO入門講義
②Ninja DAO参加リンク(ぜひご参加を!)
③DAOについて理解が深まるVoicyコンテンツ
④DAOについての話題も追えるツイッターリスト(by イケハヤ)