見たことのない空
「見たことのない空」というテーマのもと、私はこれまで数えきれない空の表情を写真に収めてきました。
その中には、日常の片隅で出会うささやかな美しさもあれば、一瞬の奇跡とも言える稀少な光景も含まれています。
この写真がその一例です。この環水平アークは、まるで空を泳ぐ“七色の魚”のように見えました。
その幻想的な姿に驚きと感動を覚えた瞬間を、今でも鮮明に記憶しています。
幼少の頃、私は空が見せるさまざまな表情に心を奪われました。夕暮れの空が染め上げる鮮烈な色彩、星々が織りなす宇宙の壮大さ、そして朝日が地平線を越え天空を照らし始める荘厳さ。
それらは私の心に深く刻まれ、空の美を記録する原動力となりました。
人生の流れの中で、時に空を見上げることが心の支えとなる瞬間があります。
今から10年ほど前、私自身が多くの困難に直面したとき、自然と空に目を向ける時間が増えました。そしてある日の昼下がり、ふとした瞬間に目に飛び込んできたのが、この見事な七色の光——「環水平アーク」でした。
環水平アークは、大気中の氷晶が太陽光を屈折させることで現れる稀少な現象です。その美しさを目にするためには、ただ空に目を向ける余裕が必要です。どれほど忙しくても、あるいは心が沈んでいても、空そのものは変わることなく私たちの頭上に広がっています。
そして、その広がりの中に私たちが何を見るかは、心のありよう次第で大きく異なるのです。
「空」は「そら」とも「くう」とも読みます。「そら」は広大な天空を、「くう」は仏教哲学で語られる空(くう)という概念を示します。「くう」は単なる虚無ではなく、すべてのエネルギーや可能性を内包した存在を指します。
科学的な視点から見ても、空間は何もない空虚ではなく、力やエネルギーの潜在性を秘めた場なのです。この視点を得て以来、私はただ空を眺めることに、無限の奥行きと深い意味を感じるようになりました。
この写真に写る環水平アークは、そんな空の奥深さを垣間見る瞬間でした。
夏の日差しが強く照りつける昼間、静寂に包まれた平日のひととき、ふと見上げた空にそれは現れました。
虹のような輝きが雲間を彩り、その美しさに息を呑むほどの感動を覚えたのを、今でも鮮やかに思い出します。
その姿が、まるで広大な空を泳ぐ“七色の魚”のように見えたのです。
不思議なことに、このような特別な光景に出会うとき、周囲はいつも静けさに包まれているのです。
その静寂が、美の一瞬をより際立たせているかのようです。
空は、私たちが日常に埋もれて忘れがちな感動を再び思い出させてくれる存在です。
このブログを通じて、皆さまにもそんな空の姿をお届けできれば幸いです。今日の一枚、「環水平アーク」を通じて、どうか少しでも空に目を向けるきっかけとなればと思います。
このような現象は、太陽が高く昇る夏の時期、4月下旬から8月下旬にかけてのみ観測されます。
その貴重さゆえ、見た者の記憶に強く刻まれることでしょう。
これからも、日々の中で出会う「見たことのない空」をご紹介してまいります。空が教えてくれる美しさや気づきを、ぜひ皆さまと共有できればと願っています。