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見たことのない空 グリーンフラッシュ

南太平洋で出会った奇跡——グリーンフラッシュ

 それは、本当に一瞬の出来事でした。水平線に沈みかけた太陽が、最後の最後にふっと緑色に輝いたのです。

まるで大気の中に溶け込むように、一瞬だけ光って消えていく。その瞬間、心がぎゅっと掴まれたような気がしました。

 この光、「グリーンフラッシュ」と呼ばれるとても珍しい現象です。

空気の層が光を屈折させることで、太陽の縁が緑色に輝くんですね。条件が揃わないと見られないうえに、一瞬で消えてしまうから、出会えるのは本当に幸運なこと。

古くからポリネシアやハワイでは、「グリーンフラッシュを見た人には幸せが訪れる」と言い伝えられてきたそうです。

 その奇跡を目の前で見られたことが、ただただ嬉しくて。こんなに長く空を見つめてきたけれど、こんな光に出会えたのは初めてでした。

まるで自然がこっそり「よくここまで来たね」と微笑んでくれたような気がして、胸がいっぱいになりました。

デッキでの星空案内(南十字星をさしています)

 この旅は、南半球の星空案内人として乗船した「ぱしふぃっくびーなす号」での55日間の航海でした。

広い海の上で満天の星を眺め、夜空の物語を語りながら過ごした日々。

デッキから見上げた南半球の星空 南十字星と流れ星

毎晩、南十字星を見上げ、宇宙の深さを感じながら、どこまでも広がる大海原の上で夢のような時間を過ごしました。

 そして、その旅の終わりに待っていたグリーンフラッシュ。

まるで、空がそっと「またおいで」と合図してくれたようでした。きっと、これからも私は空を見上げ続けるのでしょう。

星も、太陽も、そしてこの奇跡の光も、まだまだたくさんの物語を聞かせてくれるはずだから。


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